歩行障害がある患者の頭部MRIのT1強調冠状断像(別冊No. 6)を別に示す。腰椎穿刺を行い髄液を排出させたところ、歩行障害が改善した。最も考えられるのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第53回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
正常圧水頭症は、歩行障害、認知機能障害、尿失禁の3主徴を呈し、画像所見で脳室拡大が見られます。特徴的な診断方法の一つとして、腰椎穿刺により髄液を排出することで一時的に症状が改善する「タップテスト」があり、これが陽性であれば正常圧水頭症の可能性が高いと判断されます。提示された状況は、まさにこの診断的特徴に合致しています。
選択肢ごとの解説
- 1. パーキンソン病の歩行障害は髄液排出による改善は見られません。特徴的な運動症状(振戦、固縮、無動、姿勢反射障害)を呈します。正しくは:この疾患の治療は薬物療法が中心で、髄液排出による症状改善は期待できません。選びやすい理由:パーキンソン病も歩行障害を伴うため、混同しやすいです。混同注意:正常圧水頭症による歩行障害と、パーキンソン病の歩行障害(すくみ足、小刻み歩行)を混同する可能性があります。
- 2. 正解。正常圧水頭症は、特徴的な画像所見(脳室拡大、シルビウス裂や脳表溝の狭小化)に加え、歩行障害、認知機能障害、尿失禁の3主徴を呈します。腰椎穿刺による髄液排除(タップテスト)で一時的に症状が改善することは、この疾患の診断的特徴の一つです。
- 3. 脳梗塞による歩行障害は、脳組織の損傷部位によって生じ、髄液排出で改善することはありません。急性期には麻痺や感覚障害などが主症状です。正しくは:脳梗塞の治療は再灌流療法や抗血栓薬、リハビリテーションが中心であり、髄液排出は治療にはなりません。選びやすい理由:脳梗塞も歩行障害の原因となるため、選択肢として考慮してしまうかもしれません。混同注意:脳梗塞は局所的な脳組織の虚血による障害であり、髄液循環の異常とは異なる病態です。
- 4. 脳出血による歩行障害は、出血による脳組織の圧迫や損傷が原因であり、髄液排出によって改善することはありません。急性期には意識障害や局所神経症状が顕著です。正しくは:脳出血の治療は止血や血腫除去が中心であり、髄液排出は症状改善に寄与しません。選びやすい理由:脳出血も急性の神経症状や歩行障害を引き起こすため、考えやすいかもしれません。混同注意:脳出血は脳実質内の出血によるものであり、髄液の貯留や循環異常とは関連が薄いです。
- 5. 慢性硬膜下血腫は、頭蓋内の血腫が脳を圧迫することで症状を呈しますが、髄液排出で症状が改善することはありません。血腫の除去手術が必要です。正しくは:慢性硬膜下血腫の治療は血腫除去術が一般的であり、髄液排出とは異なります。選びやすい理由:慢性硬膜下血腫も認知機能障害や歩行障害、頭痛などを呈することがあり、高齢者に多いため、鑑別診断として考える可能性があります。混同注意:慢性硬膜下血腫は血腫による脳圧迫、正常圧水頭症は髄液貯留による脳室拡大が主因です。病態が異なります。
国試ポイント
脳神経疾患における歩行障害の原因疾患とその鑑別、特に正常圧水頭症の臨床的特徴と診断基準(タップテストの意義)が問われています。画像所見と臨床症状、検査結果を結びつけて診断する能力が求められます。
混同注意
高齢者の歩行障害を呈する疾患は多岐にわたるため、パーキンソン病、脳血管障害(脳梗塞、脳出血)、慢性硬膜下血腫などとの鑑別が重要です。特にパーキンソン病と正常圧水頭症の歩行障害は似ている点があるため、タップテストの有無が重要な鑑別点となります。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が出た場合は、髄液排除による症状の変化(特に歩行障害、認知機能、尿失禁)があるかどうか、MRIで脳室拡大が認められるか、そしてDESH (Disproportionately Enlarged Subarachnoid Spaces Hydrocephalus) 所見があるかを確認する。画像所見、臨床症状、髄液検査所見の組み合わせで判断する。
関連知識
正常圧水頭症の3主徴(歩行障害、認知機能障害、尿失禁)、画像所見(脳室拡大、DESH所見など)、診断基準(タップテスト、髄液シャント術の適応)。パーキンソン病の4主徴(振戦、固縮、無動、姿勢反射障害)。脳血管障害の病態と症状。慢性硬膜下血腫の病態と症状。