Alzheimer型認知症患者の自尊心の回復を目指した作業療法の目標で優先すべきなのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第52回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
アルツハイマー型認知症では、進行性の認知機能低下により、日常生活での失敗が増え、自信喪失や抑うつ状態に陥りやすいです。このような状況下で自尊心を回復させるためには、患者さんが無理なく取り組める活動を提供し、小さなことでも「できた」という達成感を繰り返し経験させることが最も重要です。成功体験は自己肯定感を高め、前向きな気持ちを引き出す基盤となります。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。自尊心の回復には、自分の能力を肯定的に捉え、達成感を味わう経験が不可欠です。アルツハイマー型認知症の患者さんでも、残存機能や興味のある活動を通じて、成功体験を積み重ねることが自尊心向上に直結します。
- 2. 見当識の改善は重要ですが、自尊心への直接的な寄与よりも、環境への適応や安全性の確保に関連が深いです。正しくは:見当識の改善は、混乱や不安の軽減、生活環境への適応を助ける目標となり得ますが、自尊心回復の最優先目標とは言えません。選びやすい理由:認知機能の改善は全体的な生活の質に影響するため、選んでしまいやすいかもしれません。混同注意:認知機能全般の改善と、特定の心理的側面(自尊心)の回復目標を混同しやすいです。
- 3. 遂行機能の改善は日常生活動作(ADL)の自立度を高めるために重要ですが、アルツハイマー型認知症においては進行性の機能低下が見られるため、回復を目指すよりも残存機能を活用し、成功体験につなげる方が自尊心の回復には優先されます。正しくは:遂行機能の回復は、計画性や問題解決能力の向上を目指す目標であり、直接的に自尊心の回復に繋がるものではありません。むしろ、遂行機能の低下が自尊心を損なう原因となるため、活動の調整や環境設定を通じて成功体験を促す方が現実的です。選びやすい理由:ADLの自立は自尊心にも関わるため、一見すると適切に思えるかもしれません。混同注意:具体的な認知機能の改善と、自己肯定感という心理的な側面の改善を混同しやすいです。
- 4. 空間認知能力は移動や物の配置、環境理解に影響しますが、その改善が直接的に自尊心に繋がるわけではありません。正しくは:空間認知能力の改善は、転倒予防や安全な移動、環境認識を助ける目標であり、自尊心回復の優先目標ではありません。選びやすい理由:方向感覚や環境認識の改善は、生活の質を高めると思われがちです。混同注意:特定の認知機能の改善と、感情や自己概念の回復を混同しやすいです。
- 5. 短期記憶の向上はアルツハイマー型認知症において非常に困難であり、無理にその改善を目標とすると、かえって失敗体験が増え、自尊心を損なうリスクがあります。正しくは:短期記憶の向上はアルツハイマー型認知症の中心的な課題であり、その回復を目標とするのは非現実的です。むしろ、記憶に頼らない支援や環境調整、残存記憶の活用が重要です。選びやすい理由:記憶力は生活の基本なので、改善が最も重要だと考えてしまいやすいです。混同注意:認知症における記憶障害の特性と、それに対する効果的な介入方法を混同しやすいです。
国試ポイント
この問題は、アルツハイマー型認知症患者の心理的側面(特に自尊心)に対する作業療法の介入目的を理解しているかを問うものです。認知機能の改善自体も重要ですが、患者さんの感情や自己概念に焦点を当てた目標設定の優先順位を見極める能力が求められます。
混同注意
認知機能の改善目標(見当識、遂行機能、空間認知、記憶)と、心理的側面(自尊心、意欲)へのアプローチ目標を混同しやすい。アルツハイマー型認知症の特性上、認知機能の回復は限定的であり、残存機能を活用したQOL向上や心理的安定がより重要な目標となることが多い。
次に同じ論点が出たら
今後、同様の論点が出題された場合、患者の疾患特性(例:進行性、回復困難な機能)と、治療目標が身体機能、認知機能、心理社会的な側面のうち、どの側面に最も焦点を当てているかを見極めることが重要です。特に、『自尊心』『意欲』『QOL』といった心理的な側面が問われた場合、成功体験の提供や残存機能の活用を促す選択肢が正答となる可能性が高いです。
関連知識
・アルツハイマー型認知症の認知機能障害の特徴(記憶障害、見当識障害、失語、失行、失認、遂行機能障害など) ・認知症におけるBPSD(行動・心理症状)の理解と対応 ・作業療法の基本理念(Doing, Being, Belonging, Becoming) ・エンパワメントの概念と、それを促す介入方法 ・スウェーデン作業療法士協会(FSA)の倫理規定にある「参加と自己決定」の尊重