17歳の男子。子供の頃から内向的な性格だが、乳幼児健診等で異常を指摘されたことはない。高校1年時から周囲の物音に敏感となり、「学校で同級生に嫌がらせをされる」と不登校になった。自宅では「向かいの家の住人が自分の行動に合わせて悪口を言う」、家族と外出した街中では「自分の考えたことが知れわたっている」と言うようになり、精神科を受診し、通院治療で状態がある程度改善した後に外来作業療法が導入された。この患者でみられやすい症状はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第56回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
本事例の患者は、幻聴のような物音への過敏さ、被害妄想(『同級生に嫌がらせをされる』『向かいの家の住人が自分の行動に合わせて悪口を言う』)、考想伝播(『自分の考えたことが知れわたっている』)といった症状を呈しており、統合失調症が強く疑われます。統合失調症の中核症状の一つに思考障害があり、特に連合弛緩は特徴的な症状として知られています。連合弛緩は、思考の論理的なつながりが障害され、話の脈絡が乱れる状態を指します。
選択肢ごとの解説
- 1. 本事例の記述からは、意識の清明度が障害されている状況は読み取れません。幻覚や妄想は意識が清明な状態でも起こり得ます。正しくは:意識混濁、せん妄状態、昏睡状態などの意識レベルの変化がある場合に用いられます。選びやすい理由:幻覚や妄想といった症状が意識の変容と関連があるように感じられるかもしれませんが、両者は異なる概念です。混同注意:意識障害(混濁、せん妄など)と幻覚・妄想などの精神病性症状
- 2. 観念奔逸は、思考が次々と関連のない方向に飛び、とめどなく言葉が出る躁病などに特徴的な症状です。本事例の記述からは、そのような思考の障害は示唆されていません。正しくは:思考が次々と飛躍し、関連性の薄い概念が次々と浮かび、話が脱線していく状態を指します。選びやすい理由:思考の障害全般と誤解される可能性がありますが、思考の速度や連想の障害には様々な種類があります。混同注意:思考途絶、思考制止、思考散乱など、他の思考障害
- 3. 強迫観念は、本人の意思に反して不快な考えやイメージが繰り返し頭に浮かび、それを打ち消そうとする思考です。事例の『いじめられている』『悪口を言われている』『考えが知れ渡っている』は、現実にはないことを確信している妄想であり、強迫観念とは異なります。正しくは:本人の意思に反して繰り返し浮かび、不快感や不安を引き起こす思考やイメージで、それを払いのけようと抵抗する特徴があります。選びやすい理由:思考の内容が現実離れしている点で一見似ているように感じられるかもしれませんが、その性質と本人の主観的な体験が異なります。混同注意:妄想と強迫観念
- 4. 思考制止は、思考の流れが滞り、言葉が出にくくなったり、考えがまとまらなかったりする状態です。本事例では、具体的な妄想の内容を話しており、思考の停止や減退の記述はありません。正しくは:思考の速度が著しく遅くなり、考えがなかなか進まない、まとまらない、言葉が出てこないといった状態を指します。選びやすい理由:精神病状態では思考の障害が多いため、思考障害の一種として選んでしまうかもしれません。混同注意:思考途絶(突然思考が中断する)、思考散乱(思考のまとまりがない)
- 5. 正解。連合弛緩は、思考の論理的なつながりが失われ、話の脈絡が乱れる思考障害です。統合失調症に特徴的な中核症状の一つであり、本事例の患者が示す『学校で同級生に嫌がらせをされる』『向かいの家の住人が自分の行動に合わせて悪口を言う』『自分の考えたことが知れわたっている』といった妄想や被害的な訴えは、統合失調症の可能性を示唆しており、それに伴って連合弛緩が生じやすいと考えられます。正しくは:思考の連想がゆるみ、話の筋道が通らなくなったり、脈絡のない言葉が飛び出したりする状態です。選びやすい理由:幻覚や妄想に直接言及されていない選択肢であるため、他の選択肢に目が行きがちかもしれません。混同注意:思考散乱、思考途絶、観念奔逸など、他の思考障害
国試ポイント
統合失調症の代表的な症状(特に思考障害)を正確に理解しているかどうかが問われています。具体的な症例から、それに合致する精神症状を識別する能力が必要です。
混同注意
妄想と強迫観念、様々な思考障害(観念奔逸、思考制止、連合弛緩など)の概念を混同しやすいです。それぞれの定義と臨床像を正確に把握しておく必要があります。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、具体的な症状記述から、どの精神疾患が疑われるか(今回は統合失調症)、そしてその疾患に特徴的な精神症状は何か(今回は思考障害の一種である連合弛緩)を判断する流れでアプローチします。特に幻覚、妄想、思考障害、感情障害などの各症状の定義と鑑別点を確実に押さえることが重要です。
関連知識
統合失調症の陽性症状(幻覚、妄想、思考障害)と陰性症状(意欲低下、感情鈍麻など)、カテトニア症状、錐体外路症状、向精神薬の副作用、作業療法の適用と目標設定。