図はDuchenne型筋ジストロフィー患者に用いる上肢機能障害度分類(9段階法)のレベル8の状態である。自立していると考えられる活動はどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第53回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
Duchenne型筋ジストロフィー患者の上肢機能障害度分類(9段階法)レベル8は、「物を持ち上げることはできないが、前腕の回内外運動と手指の巧緻運動は可能」な状態を示します。パソコンのマウス操作は主に前腕の回内外と手指の細かな動きで行われるため、レベル8の能力で自立して行える活動と考えられます。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。画像所見と問題文から、レベル8では肘関節を机上などに置くことで固定し、前腕の回内外と手指の細かな動きは可能であると読み取れる。パソコンのマウス操作は主にこの能力で行われるため、自立して行える。選びやすい理由:一見すると上肢全体を使う動作に見えるが、マウス操作は実際には前腕と手指の機能に大きく依存するため、レベル8の能力で可能な動作であると判断できる。混同注意:上肢全体の挙上や重力に抗する運動が必要な動作。
- 2. スプーンを使って食べる動作は、一般的に肘関節の屈曲・伸展、肩関節の屈曲・外転など、重力に抗して上肢を挙上する能力が必要となる。レベル8では物を持ち上げることができないため、自立して行うのは困難である。正しくは:自立して行うには、上肢を重力に抗して挙上できる能力(レベル7以上)が必要となる。選びやすい理由:ADLの基本的な動作であるため、可能な範囲があるのではないかと考えてしまいがち。混同注意:テーブルに肘をついてスプーン操作を行うなど、限定的な条件下での動作可能性。
- 3. 普通型車椅子で自走するには、車輪を駆動させるために肩関節と肘関節の十分な筋力と可動域が必要となる。特に、重力に抗して腕を振り、車輪を回す動作はレベル8では困難である。正しくは:自立して行うには、上肢全体を重力に抗して動かせる能力が必要であり、レベル8では電動車椅子を使用することが多い。選びやすい理由:車椅子は自立の象徴的な道具であり、部分的にでも操作可能と誤解しやすいため。混同注意:電動車椅子のジョイスティック操作(これはレベル8で可能)。
- 4. 急須でお茶を注ぐ動作は、急須を持ち上げ、傾けるために肩関節と肘関節の筋力および上肢の重力に抗する運動が必要となる。レベル8では物を持ち上げることができないため、自立して行うのは困難である。正しくは:自立して行うには、上肢を重力に抗して挙上できる能力(レベル7以上)が必要となる。選びやすい理由:日常生活における比較的軽作業に見えるため、可能であると考えてしまう。混同注意:コップをテーブルに置いたまま、少量の飲料を注ぐ動作(介助があれば可能)。
- 5. Tシャツを脱ぐ動作は、肩関節の広範囲な可動域と、両腕を頭上に持ち上げる、背中側に回すなどの重力に抗する運動が必要となる。レベル8では物を持ち上げることができないため、自立して行うのは極めて困難である。正しくは:自立して行うには、上肢を重力に抗して挙上できる能力が必要であり、レベル8では介助を要する。選びやすい理由:着脱衣は基本的なADL動作であり、部分的にでも可能と誤解しやすい。混同注意:重力の影響を受けにくい、下半身の着替えなど。
国試ポイント
Duchenne型筋ジストロフィーにおける上肢機能障害度分類(9段階法)の各レベルの特徴と、それが日常生活動作(ADL)にどのように影響するかを理解しているか。
混同注意
上肢機能障害度分類(9段階法)は、その数値が大きくなるほど障害の程度が重くなることを意味する。同様の機能評価スケールで、数値が大きくなるほど機能が良いものと混同しないこと。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、まずDuchenne型筋ジストロフィーの進行性という特徴と、上肢機能障害度分類(9段階法)の各レベルで「どのような関節運動や動作が可能か」を明確に理解しているかを確認する。特に、重力に抗する挙上運動の可否、および前腕回内外や手指巧緻運動の可否がポイントとなる。
関連知識
Duchenne型筋ジストロフィーはX連鎖劣性遺伝性疾患で、ジストロフィン遺伝子変異により筋壊死が進行する。進行性で、通常は幼児期に発症し、学童期には歩行困難、10歳代には車椅子生活、20歳前後で心筋症や呼吸不全により死亡することが多い。機能障害度は病期の進行とともに変化し、ADL支援の内容も段階的に変化する。