摂食嚥下障害への対応で正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第52回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
先行期障害とは、食物を認識し、口に取り込み、咀嚼・唾液と混ぜ合わせて食塊を形成するまでの準備段階の障害を指します。食事のペースが速すぎると十分な咀嚼や食塊形成が行われずに嚥下してしまったり、遅すぎると嚥下疲労が生じたりします。そのため、適切な食事のペースを指導することは、先行期障害に対する重要な介入となります。他の選択肢は、それぞれの障害に対する不適切な対応や、関連性のない訓練法を示しています。
選択肢ごとの解説
- 1. 一般的に、冷水や氷は嚥下反射を誘発しやすく、また覚醒度を高める効果があるため、摂食嚥下障害の方には冷たい飲み物が推奨されることが多いです。ぬるま湯は嚥下反射を誘発しにくく、誤嚥のリスクを高める可能性があります。正しくは:水分摂取の際には、冷たい水や氷水を用いる。選びやすい理由:熱すぎるものや冷たすぎるものは身体に負担がかかるという一般的な認識から、ぬるま湯が無難だと感じやすいかもしれません。混同注意:健常者における飲水の温度と、嚥下障害者における嚥下反射誘発の観点での飲水温度を混同している可能性があります。
- 2. 咽頭期障害(特に嚥下反射の遅延や咽頭収縮力の低下)がある場合、頭頸部伸展位(頭を後ろに反らす姿勢)では気道が開き、食物が気管に入りやすくなり、誤嚥のリスクが著しく高まります。一般的には、頸部を前屈する姿勢(あご引き嚥下)が推奨されます。正しくは:咽頭期障害では、頭頸部前屈姿勢(あご引き嚥下)で嚥下する。選びやすい理由:気道を確保するという発想から、頭を後ろに反らすことが良いと誤解する可能性があります。また、痰を出す際などに頭部を伸展させることがあるため、混同するかもしれません。混同注意:気道確保と誤嚥防止のための姿勢調整を混同している可能性があります。特に、嚥下時の姿勢の原則(気道閉鎖の促進)を理解していないと誤りやすいです。
- 3. 口腔期障害、特に食物の送り込みや咀嚼に問題がある場合、高粘度の食品は口腔内でまとめにくく、残留しやすいため、かえって嚥下しにくくなることがあります。一般的には、適度な粘度でまとまりやすい食品や、滑らかで均一な食品が推奨されます。正しくは:口腔期障害に対しては、まとまりやすく、口腔内で操作しやすい適切な粘度の食物を用いる。選びやすい理由:誤嚥防止のために粘度を上げることが一般的であるため、粘度を上げれば良いと安易に考えてしまうかもしれません。しかし、口腔期障害では高粘度が必ずしも有効とは限りません。混同注意:誤嚥防止のための食品の粘度調整と、口腔期における食物の操作性を混同している可能性があります。口腔期と咽頭期の障害特性に応じた食品形態の理解が不十分だと誤りやすいです。
- 4. 正解。先行期障害(食物の認識から口腔への取り込み、口腔内での準備までの期間)には、食欲不振、食物への関心の低さ、不適切な一口量、食事に時間がかかる、食事のペースが速すぎる・遅すぎるなどが含まれます。食事のペースが適切でない場合、誤嚥のリスクが高まるため、食事の速度を指導することは先行期障害への有効な介入となります。正しくは:正しいため修正不要選びやすい理由:特になし。これは直接的な対応として理解しやすいでしょう。混同注意:先行期障害が、口腔期以降の具体的な嚥下運動とは異なる、準備段階の障害であることを理解していないと、他の選択肢と迷う可能性があります。
- 5. Shaker法(頭部挙上訓練)は、主に輪状咽頭筋の開大不全や舌骨上筋群の筋力強化を目的とした訓練法であり、咽頭期の障害、特に食道の入り口の開大不全に効果が期待されます。鼻咽腔閉鎖不全は、軟口蓋挙上機能の低下が主な原因であり、Shaker法は直接的な改善には繋がりません。鼻咽腔閉鎖不全には、軟口蓋の挙上訓練や、必要に応じて補綴物(鼻咽腔閉鎖装置)の使用などが検討されます。正しくは:鼻咽腔閉鎖不全に対しては、軟口蓋の挙上訓練などを行うか、補綴物を検討する。選びやすい理由:嚥下関連筋の訓練法であるShaker法が、何らかの嚥下障害全般に効果があるという漠然とした知識があると、選択してしまう可能性があります。混同注意:Shaker法が有効な病態(輪状咽頭筋開大不全、舌骨上筋群強化)と、鼻咽腔閉鎖不全の病態生理を混同している可能性があります。
国試ポイント
摂食嚥下障害における各期の障害内容とその対応について、基本的な知識が問われています。特に、誤嚥を防ぐための姿勢、食品の形態、および各訓練法の適応疾患・症状を正確に理解しているかが重要です。
混同注意
摂食嚥下の各期(先行期、口腔準備期、口腔期、咽頭期、食道期)の具体的な障害内容と、それに対応する適切な介入方法を混同しやすいです。また、多くの嚥下訓練法があるため、それぞれの適応を正確に覚えていないと誤答につながります。
次に同じ論点が出たら
今後この論点が出題される場合は、各摂食嚥下障害の期における具体的な症状と、それに対する詳細な介入方法(例:特定のリハビリテーション手技、食品形態の具体的な調整)が問われる可能性が高いです。また、複合的な障害に対する総合的なアプローチについても問われるかもしれません。
関連知識
各期における具体的な障害の例(例:先行期:失認、一口量調整困難、食行動異常/口腔期:咀嚼困難、食塊形成困難、舌による送り込み障害/咽頭期:嚥下反射遅延、咽頭収縮力低下、輪状咽頭筋開大不全、喉頭挙上不全/食道期:食道蠕動運動低下)。嚥下調整食の分類とそれぞれの適応。嚥下訓練法(間接訓練・直接訓練)の種類と目的。