21歳の男性。2か月前から「自分しか知らないはずのことを皆が知っている」と訴えるようになった。1か月前から自室にこもるようになり、一人きりで誰かに応答しているような様子がみられた。1週前から「変な味がする」と言い、母が作る食事を食べなくなった。家族が精神科の受診を勧めたが、本人は「自分はどこも悪くない」と言って頑なに拒んだ。この患者にみられない症状はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第57回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
本事例の患者は、「自分しか知らないはずのことを皆が知っている」という訴えから思考伝播が示唆され、「一人きりで誰かに応答しているような様子」から対話性幻聴が示唆されます。「変な味がする」と言って食事を拒否する行動は被毒妄想に該当し、「自分はどこも悪くない」と受診を拒むことから病識欠如が認められます。一方、観念奔逸は思考の速度が速まり、話が次々に飛躍しまとまりを欠く状態を指しますが、本事例の記述からはこの症状は読み取れません。したがって、観念奔逸がこの患者にみられない症状として適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。観念奔逸は思考の加速と関連性の欠如により、話が次々に飛躍する状態を指します。本事例では、思考の加速や話の飛躍に関する記述がなく、幻覚や妄想、病識欠如といった症状が主に見られます。正しくは:本事例の症状記述に観念奔逸を示唆する内容は含まれていません。患者の話の内容が次々に移り変わり、まとまりがない、などの記述があれば観念奔逸の可能性が示唆されます。選びやすい理由:精神疾患の症状は多岐にわたるため、他の症状と混同しやすいですが、観念奔逸は思考の形式の障害であり、内容の障害や知覚の障害とは区別されます。混同注意:思考内容の障害(妄想)や知覚の障害(幻聴)と混同しやすいですが、観念奔逸は思考の速さや連続性に関する障害です。
- 2. 「自分しか知らないはずのことを皆が知っている」という訴えは、自分の思考が他者に伝わっている、または知られていると感じる思考伝播の症状に該当します。これは思考のさせられ体験の一種です。正しくは:これは記述から読み取れる症状であるため、修正の必要はありません。選びやすい理由:思考伝播は統合失調症によく見られる一次症状(シュナイダーの一級症状)の一つであり、患者の訴えに明確に合致します。混同注意:思考奪取(思考が抜き取られる感覚)や思考察知(他者に思考が読み取られる感覚)など、思考のさせられ体験と関連が深く、これらとまとめて理解する必要があります。
- 3. 「一人きりで誰かに応答しているような様子がみられた」という記述は、患者が現実には存在しない声と会話していることを示唆しており、対話性幻聴に合致します。これは統合失調症によく見られる症状です。正しくは:これは記述から読み取れる症状であるため、修正の必要はありません。選びやすい理由:幻聴の中でも、対話性幻聴や命令幻聴は統合失調症の診断において重要視されるシュナイダーの一級症状に含まれます。混同注意:思考化声(自分の考えが声になって聞こえる)や、批判幻聴(行動を批判する声)など、幻聴の種類と混同しやすいです。
- 4. 「変な味がする」と言い、母親が作る食事を食べなくなったという行動は、自分の食べ物に毒が盛られている、あるいは不潔であるといった妄想にとらわれている状態、すなわち被毒妄想を示しています。これは被害妄想の一種です。正しくは:これは記述から読み取れる症状であるため、修正の必要はありません。選びやすい理由:日常的な行動の変化(食事拒否)が、妄想という心理的な症状に起因していることを理解することが重要です。混同注意:関係妄想(自分とは関係ない出来事が自分に向けられていると感じる)や注察妄想(常に誰かに見られていると感じる)など、他の被害妄想と混同しないように理解が必要です。
- 5. 「自分はどこも悪くない」と言って家族による受診の勧めを頑なに拒否する態度は、自身の精神状態に問題があることを認識していない状態、すなわち病識の欠如を明確に示しています。正しくは:これは記述から読み取れる症状であるため、修正の必要はありません。選びやすい理由:精神疾患を持つ患者にとって、病識の有無は治療への協力度や予後に大きく影響するため、臨床的に重要な側面です。混同注意:否認(無意識的な防衛機制)や意図的な拒否と混同されることがありますが、病識欠如は疾患そのものの症状として自分の状態を認識できないことを指します。
国試ポイント
統合失調症の主要症状である陽性症状(妄想、幻覚、思考障害)、陰性症状、および病識の有無について、具体的な症例記述から各症状を正確に識別できるかどうかが問われています。特に、思考の形式の障害(観念奔逸)と思考内容の障害(妄想)や知覚の障害(幻覚)を区別する能力が重要です。
混同注意
思考伝播とその他の思考のさせられ体験(思考奪取、思考挿入)、対話性幻聴と他の幻聴の種類(命令幻聴、批判幻聴)、被毒妄想とその他の被害妄想(注察妄想、関係妄想)は混同しやすいため、それぞれの特徴を明確に理解しておく必要があります。また、観念奔逸は思考加速と関連しますが、躁病で多く見られ、統合失調症の思考障害とは異なる側面を持つことが多いです。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、まず提示された症状が陽性症状か陰性症状か、また思考の形式の障害か内容の障害か、知覚の障害かといった大まかな分類を判断します。次に、それぞれの選択肢が示す症状の定義と、事例中の記述が合致するかを一つずつ確認し、明確な根拠がないものを「みられない症状」として選びます。
関連知識
統合失調症のシュナイダーの一級症状(思考察知、思考伝播、思考奪取、思考化声、対話性幻聴、命令幻聴、身体的させられ体験など)とその臨床的特徴。妄想の種類(被害妄想、関係妄想、注察妄想、被毒妄想、微小妄想、誇大妄想など)。幻覚の種類(幻聴、幻視、幻嗅、幻味、体感幻覚など)。思考障害の形式(観念奔逸、思考途絶、滅裂思考、保続など)。病識の重要性と欠如が治療に与える影響。