30歳の女性。上腕切断標準断端。上腕義手は差し込み式ソケット、8字ハーネス、複式コントロールケーブルシステム、随意開き式能動フックで構成されている。適合判定の際、肘90°屈曲位で手先具が完全には開かなかった。原因として考えられるのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第55回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
上腕義手における随意開き式能動フックの操作は、主に残存する肩甲帯の運動によってコントロールケーブルを引っ張ることで行われます。肘90度屈曲位で手先具が完全に開かないということは、ケーブルを引っ張る駆動力そのものが不足していることを示唆しており、その根源的な原因として残存する肩甲帯の筋力低下が最も考えられます。
選択肢ごとの解説
- 1. フックの張力ゴムが弱い場合、フックを閉じる力は弱くなりますが、開く際にはケーブルシステムによって引っ張られるため、フックが完全に開かない原因とはなりません。むしろ、開く動作が楽になる可能性があります。正しくは:フックの閉鎖力が不十分な場合。選びやすい理由:フックの機能不全を疑う観点から選びやすいかもしれませんが、開く動作と閉じる動作では関与する要素が異なります。混同注意:フックの閉鎖力と開放力のメカニズム。
- 2. ケーブルハウジングが短すぎると、ケーブルが自由に動けなくなり、抵抗が増大して手先具が開かない原因となる可能性があります。しかし、複式コントロールケーブルシステムで肘90度屈曲時に手先具が完全に開かないという状況では、ケーブル自体が短すぎるより、ケーブルシステムの設計や調整、または駆動力の問題が直接的であると考えられます。正しくは:ケーブルハウジングが適切な長さに調整されていないこと。選びやすい理由:ケーブルシステムに関する問題であるため、原因として考えやすいです。混同注意:ケーブルの長さ調整とケーブルシステムの他の構成要素の機能。
- 3. 正解。この義手の操作は、主に肩甲帯の動き(肩関節の屈曲や外転など)によってコントロールケーブルを引っ張り、手先具を開いたり肘を曲げたりします。肘90度屈曲位で手先具が完全に開かないということは、手先具を開くためのケーブルを引っ張る力が不足していることを示唆しており、その駆動力となる残存肢の肩甲帯の筋力低下が直接的な原因として考えられます。特に複式コントロールシステムでは、手先具の操作と肘の操作に肩甲帯の動きが複合的に関与します。選びやすい理由:最も直接的に駆動力の不足を示す選択肢です。混同注意:他の義手構成要素の不具合との区別。
- 4. 前腕支持部のトリミングが不良であると、義手の装着感が悪くなったり、皮膚トラブルの原因になったりする可能性はありますが、手先具が開かないという機能的な問題には直接的に繋がりません。正しくは:ソケットやカフの不適合による圧迫や皮膚トラブル。選びやすい理由:義手の適合性に関する問題として考えやすいですが、直接的な機能不全とは異なります。混同注意:ソケットの適合性と機能操作のメカニズム。
- 5. 切断肢の肩関節の回旋可動域制限は、義手のコントロール動作に影響を与える可能性はありますが、肘90度屈曲位で手先具を完全に開く際の直接的な主要原因とは考えにくいです。手先具を開くための駆動力は、主に残存肢の肩甲帯の動きによるものです。正しくは:肩関節の運動制限が、義手装着時の快適性や姿勢、または一部の操作に影響を与えること。選びやすい理由:義手の操作には肩関節の動きが重要であるため、原因として選びやすいです。混同注意:残存肢の機能的な問題と、切断肢側の解剖学的・可動域の問題。
国試ポイント
上腕義手の能動フックの操作原理と、その駆動力となる身体機能(特に肩甲帯の筋力)に関する理解が問われています。複式コントロールシステムにおける手先具と肘の操作メカニズムを正確に把握しているかを確認する問題です。
混同注意
ケーブルシステムの調整不良(ハウジングの長さなど)と、使用者自身の身体機能(筋力)の不足との区別が難しいかもしれません。また、フック自体の不具合と操作系の不具合の区別も重要です。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、上肢義手の各構成要素の機能と、それを操作するための身体運動の関連性を詳しく問われる可能性があります。特に、能動義手の種類(能動フック、能動手、筋電義手など)ごとの操作原理と、それに対応する身体側の機能について深く理解しているかを確認しましょう。
関連知識
義手の能動操作に必要な身体の動き、ケーブルシステムの種類(単式、複式)、各構成要素の機能と役割、義手適合評価の項目。