76歳の男性。誰もいないのに「自分の布団に知らない子どもが寝ている」と訴え、妻に連れられて受診した。妻の話では、数年前から些細な物忘れが増え、日中ぼう然としていることも多いという。歩行中に転倒することも増えてきているという。作業療法室でみられるこの患者の特徴はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第54回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
設問の男性は、幻視(布団に子供が寝ている)、認知機能の変動(物忘れ、日中ぼう然)、パーキンソニズムを示唆する症状(転倒)を呈しており、これらはレビー小体型認知症の主要な特徴です。レビー小体型認知症の診断基準では、中核症状として「認知機能の変動(注意や覚醒レベルの動揺)」「幻視(具体的で生々しい反復性の幻視)」「パーキンソニズム」が挙げられます。特に「日によって意識レベルの低下度合いが異なる」という表現は、この認知機能の変動を直接的に指し示しており、最も適切な特徴です。
選択肢ごとの解説
- 1. 本症例の症状(幻視、物忘れ、ぼう然、転倒)はレビー小体型認知症を示唆しており、レビー小体型認知症で情動失禁(些細なことで泣き出す)が主症状となることは稀です。脳血管性認知症やアルツハイマー型認知症で見られることがあります。正しくは:本患者の幻視、意識レベルの変動、パーキンソン症状(転倒しやすい)の組み合わせは、レビー小体型認知症を示唆しており、情動失禁はレビー小体型認知症の主要な特徴ではありません。選びやすい理由:認知症全般の症状として情動不安定を想像するかもしれませんが、レビー小体型認知症の典型的な中核症状ではありません。混同注意:脳血管性認知症やアルツハイマー型認知症における情動失禁と混同しやすいです。
- 2. 他人の物を勝手に持っていく行動は、前頭側頭型認知症(ピック病)において見られる常同行動や脱抑制に関連することが多いですが、本症例の幻視や意識レベルの変動といった症状とは合致しません。正しくは:他者の物品への関心や窃盗行動は前頭側頭型認知症の特徴の一つであり、本患者の症状(幻視、変動する意識レベル)とは直接関連が薄いです。選びやすい理由:認知症に伴う行動障害全般を想定して、このような行動を選択肢として選ぶ可能性があります。混同注意:前頭側頭型認知症(ピック病)の脱抑制や常同行動と混同しやすいです。
- 3. この行動は、規則性や習慣性を強く求める傾向であり、前頭側頭型認知症の常同行動に見られることが多いです。幻視や意識レベルの変動を伴う本症例には当てはまりにくいです。正しくは:このようなルーティンへの固執は前頭側頭型認知症の常同行動の典型例であり、レビー小体型認知症の症状とは異なります。選びやすい理由:認知症の患者が不安から決まった行動を好むと考えるかもしれませんが、本症例が示す症状とは合致しません。混同注意:前頭側頭型認知症の常同行動と混同しやすいです。
- 4. 質問がわからない際に、もっともらしい返答でごまかす「取り繕い(作話)」は、コルサコフ症候群やアルツハイマー型認知症の中期症状などで見られることが多いですが、レビー小体型認知症の主要な特徴ではありません。正しくは:取り繕い行動は特定の記憶障害や病態で見られるものであり、レビー小体型認知症の核心的な症状とは異なります。選びやすい理由:認知機能低下に伴う自己防衛反応として、どのタイプの認知症でも見られ得ると考えるかもしれません。混同注意:アルツハイマー型認知症やコルサコフ症候群における作話と混同しやすいです。
- 5. 正解。設問の男性は「誰もいないのに布団に子供が寝ている」という具体的な幻視、「数年前から物忘れが増え、日中ぼう然としていることも多い」という認知機能の変動、「歩行中に転倒することも増えている」というパーキンソニズムを示唆する症状が組み合わさっており、これらはレビー小体型認知症の典型的な中核症状です。特に、意識レベルや認知機能の変動(日中ぼう然としていることが多い)は、レビー小体型認知症を強く示唆する特徴です。
国試ポイント
レビー小体型認知症の診断基準と中核症状(特に認知機能の変動、幻視、パーキンソニズム)を理解しているかを問う問題です。他の認知症との鑑別点も重要になります。
混同注意
他の認知症(アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、前頭側頭型認知症)の症状と混同しやすい。特に幻視はアルツハイマーでも見られるが、レビー小体型ではより具体的で生々しいのが特徴。意識レベルの変動もレビー小体型に特徴的。
次に同じ論点が出たら
今後レビー小体型認知症に関する問題が出題された場合、中核症状の他に、REM睡眠行動障害や抗精神病薬への過敏性などの示唆的特徴も問われる可能性がある。また、他の認知症との鑑別をより詳細に問われることも考えられる。
関連知識
レビー小体型認知症の診断基準(DLB臨床診断基準)、中核症状(認知機能の変動、幻視、パーキンソニズム)、示唆的特徴(REM睡眠行動障害、薬剤過敏性)、支持的特徴(失神、繰り返す転倒、妄想、うつ病)。