67歳の女性。Alzheimer型認知症。HDS-Rは18点で特に見当識と遅延再生とに低下を認めた。自宅から一人で外出する際に迷って保護されることが多くなり、送迎によって通所リハビリテーションに通っている。作業療法では認知機能のリハビリテーションを実施している。記憶障害を踏まえた対応で最も適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第53回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
アルツハイマー型認知症では、記銘力障害や見当識障害が中核症状として認められます。本症例は特に見当識と遅延再生の機能低下が認められており、時間見当識の障害が示唆されます。そのため、「もう〇月〇日ですね」と情報提供し、日付を一緒に確認することは、利用者の見当識を補い、不安を軽減し、現実検討力を高める上で最も適切な対応です。
選択肢ごとの解説
- 1. 利用者は自宅から一人で外出すると道に迷うことが増えており、場所の見当識障害が示唆されます。このような状況で「訓練室へ移動しましょう」と伝え、利用者に先立って誘導してもらうことは、利用者が道に迷う可能性があり、不安や混乱を招くため不適切です。適切な誘導は支援者が主導して行うべきです。正しくは:「訓練室へ移動しましょう」と伝え、支援者が利用者のペースに合わせてゆっくりと訓練室へ誘導する。選びやすい理由:利用者のできることを促すという意図で選んでしまいがちですが、見当識障害の程度を考慮せずに任せるのは不適切です。混同注意:ADLの自立支援と認知機能障害に対する配慮との区別。認知症の症状を無視したADL自立支援の促し。
- 2. 本症例では見当識と遅延再生の機能低下が認められていますが、家族構成や人物誤認に関する具体的な記述はありません。家族写真を見ながら「こちらの方はどなたですか」と質問することは、人物見当識障害の有無を確認する目的であれば有効ですが、問い詰めるような形になると利用者に負担をかけ、自尊心を傷つける可能性があります。特に、人物誤認が明らかでない段階でこのような質問をすることは適切ではありません。正しくは:家族写真を一緒に見ながら「皆さんお元気ですか」「この写真はいつ頃撮られたものですか」など、利用者が答えやすい質問で会話のきっかけを作る。選びやすい理由:家族との思い出を共有し、コミュニケーションを図るという意図で選んでしまいがちですが、質問の仕方が不適切です。混同注意:回想法の実施方法と、認知症患者への負担の少ないコミュニケーション方法との区別。
- 3. アルツハイマー型認知症では記銘力障害が顕著であり、新しい情報を記憶することが困難です。そのため、支援者の顔を覚えていない可能性が高いです。「私のことを覚えていらっしゃいますか」と尋ねることは、利用者に「忘れてしまった」という事実を突きつけ、自尊心を傷つけ、不安や混乱を招く可能性があります。支援者は、利用者が忘れていることを前提に接することが重要です。正しくは:作業療法を開始する際に「〇〇さん、こんにちは。私が担当の作業療法士の〇〇です。今日はよろしくお願いします」と自己紹介し、笑顔で接する。選びやすい理由:利用者の記憶力を試す、あるいは確認しようという意図で選んでしまいがちですが、利用者の感情に配慮が欠けています。混同注意:記憶障害の評価と、認知症患者の尊厳に配慮したコミュニケーションとの区別。
- 4. 正解。本症例はHDS-Rで特に見当識の機能低下が認められており、時間見当識障害が示唆されます。「もう〇月〇日ですね」と情報を提供し、日付を一緒に確認することは、利用者の時間見当識を補い、現実感を持たせる上で最も適切な対応です。繰り返し情報を提供することで、利用者の不安を軽減し、安定した精神状態を保つことに繋がります。選びやすい理由:日付の確認は基本的なことですが、見当識障害のある利用者にとっては非常に重要な情報提供であり、適切な支援となります。混同注意:認知症に対する直接的な治療と、生活環境の調整や代償的アプローチによる支援の区別。
- 5. アルツハイマー型認知症では記銘力障害が中核症状であり、前回の出来事を覚えていない可能性が高いです。「前回、作業療法で何を行ったか覚えていますか」と質問することは、利用者が答えられない可能性が高く、「忘れている」という事実を突きつけ、自尊心を傷つけ、混乱や不安を招くため不適切です。質問によって利用者の失敗を強調するような対応は避けるべきです。正しくは:「前回は〇〇(具体的な内容)を行いましたね。今日は〇〇をしましょう」と具体的に伝え、活動を始める。選びやすい理由:利用者の記憶力を確認する、あるいは継続性を意識させるという意図で選んでしまいがちですが、利用者の感情面への配慮が欠けています。混同注意:記憶障害の評価と、認知症患者の尊厳に配慮したコミュニケーションとの区別。
国試ポイント
アルツハイマー型認知症における中核症状(特に見当識障害と記憶障害)への具体的な対応方法を理解しているか。
混同注意
認知症高齢者への声かけや介入は、その認知機能レベルや残存機能、個人の特性に応じて調整する必要がある。一律の対応ではなく、個々のアセスメントに基づく個別性が重要である。
次に同じ論点が出たら
認知症の症例問題では、HDS-Rの点数や特に低下している機能(見当識、記憶など)に着目し、その機能障害に対する具体的な援助方法や声かけ内容が適切かを判断する。
関連知識
見当識障害に対する対応としては、時間見当識、場所見当識、人物見当識のそれぞれに対して、具体的な情報提供や手がかりの提示が有効である。記銘力障害に対しては、新しい情報を提示する際に反復したり、視覚的な手がかりを用い、できるだけ負担の少ない方法でアプローチすることが重要である。