71歳の女性。独居。臥床傾向となり、訪問作業療法が依頼された。畳の上に布団を敷いて就寝しており、床からの立ち上がりは台につかまり実施していた。セルフケアは時間がかかるが実施可能である。家事は簡単な炊事を行い、洗濯を時々行う程度であった。生活機能の拡大に向けて、作業療法士が行う指導で最も優先されるべきものはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第56回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
この女性は独居で臥床傾向があり、畳からの立ち上がりに困難を抱えています。セルフケアは可能ですが、日常生活活動(ADL)の基盤となる『立ち上がり』の困難が、活動範囲の縮小や臥床傾向の原因となっている可能性が高いです。ベッドを導入することで、立ち上がりや移乗動作が格段に楽になり、安全性が向上します。これにより、活動参加へのハードルが下がり、身体活動量が増え、臥床時間の短縮に繋がるため、生活機能拡大に向けた最も直接的かつ優先度の高い介入となります。環境調整は、身体機能に合わせた生活のしやすさを向上させる上で非常に効果的なアプローチです。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。臥床傾向があり、床からの立ち上がりに困難を抱えているため、ベッドを導入することで立ち上がり動作が容易になり、活動参加の機会が増え、臥床時間を減らすことができます。これは最も直接的で基本的な生活動作の改善に繋がり、他の活動への参加の基盤となります。
- 2. 運動習慣は重要ですが、床からの立ち上がりに苦労している現状では、まず環境を整えて基本的な動作の障壁を取り除くことが優先されます。運動習慣の確立は次のステップとなるでしょう。正しくは:まず環境整備を行い、その上で運動習慣の指導を行う。選びやすい理由:一般的な高齢者の健康増進に重要であるため。混同注意:健康維持のための一般的なアドバイスと、個別課題解決のための優先順位。
- 3. 食料品の買い出しは屋外活動であり、現在の身体機能や生活状況では負担が大きい可能性があります。まず屋内の基本的な動作の改善と安全確保が優先されます。正しくは:屋内の安全と基本動作が確保された後、屋外活動への移行を検討する。選びやすい理由:生活機能の拡大や社会参加の一環と捉えられがちであるため。混同注意:生活機能の拡大の目標と、現在の患者の能力レベルのミスマッチ。
- 4. 簡単な家事は行っていますが、臥床傾向や立ち上がりの困難がある中で、積極的に家事動作を増やすことは負担となる可能性があります。まずは基本的な身体機能や環境を整えることが優先です。正しくは:基本動作が改善され、安全が確保された上で、徐々に家事動作の範囲を広げる。選びやすい理由:生活機能の拡大=家事の拡大と誤解されがちであるため。混同注意:活動拡大の目標と、そのための前提条件の理解。
- 5. 地域活動への参加は社会参加を促す上で非常に重要ですが、臥床傾向や屋内の基本的な動作に課題がある現状では、外出を伴う地域活動への参加は時期尚早です。まずは自宅内での自立度を高めることが優先されます。正しくは:自宅内の活動や移動が安定した後、段階的に地域活動への参加を検討する。選びやすい理由:高齢者のQOL向上や社会参加の促進として望ましい目標であるため。混同注意:最終的な目標と、その目標達成に向けた初期段階の介入の優先順位。
国試ポイント
高齢者の生活機能拡大に向けた作業療法介入の優先順位を問う問題です。特に、身体機能の低下が見られる独居高齢者に対する、ADLの基盤となる動作(立ち上がり・移乗)を改善するための環境調整の重要性がポイントとなります。具体的な生活課題に対し、最も根本的かつ即効性のある解決策を選択できるかが試されます。
混同注意
高齢者の生活機能向上策として、運動習慣、社会参加、家事拡大なども候補になりますが、本事例では『臥床傾向』と『床からの立ち上がりの困難』という具体的な身体機能と環境のミスマッチが示されており、まずはその根本原因を解消する環境調整が最優先であるという判断が重要です。一般的な健康増進策と、個別事例の緊急性・優先順位を混同しないように注意が必要です。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、高齢者の生活機能拡大において、まず『現在の生活環境と身体機能とのミスマッチによるADLの根本的な障害』がないかを確認し、その障害を解消するための『環境調整』が他の介入よりも優先されるか否かを判断する視点が重要です。特に、臥床傾向、立ち上がり・移乗動作の困難、転倒リスクなどが示唆されている場合は、環境調整による基盤の整備が最優先となりやすいです。
関連知識
ADL(Activities of Daily Living)、IADL(Instrumental Activities of Daily Living)、環境調整、住宅改修、身体機能と環境の相互作用、高齢者の転倒予防、臥床による廃用症候群の予防、訪問作業療法の介入原則。