39歳の女性。多発性硬化症。発症から4年が経過。寛解と再燃を繰り返している。MMTは両側の上肢・下肢共に4。軽度の両側視神経炎を伴い、疲労の訴えが多い。この患者に対する作業療法で適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第56回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
多発性硬化症の患者は疲労感、視力障害、運動機能障害を呈することが多く、作業療法ではこれらの症状に配慮する必要があります。卓上編み機は、比較的大きな動きで操作可能であり、細かい視覚的集中を必要としないため、軽度の視神経炎があっても取り組みやすいです。また、手作業に比べて身体的労力が少なく、疲労が強い患者にも適した活動と言えます。
選択肢ごとの解説
- 1. 菊練りは、強い握力や持続的な体幹・上肢の筋力が必要で、疲労を訴える多発性硬化症患者には身体的な負荷が大きすぎます。また、軽度とはいえ両側視神経炎があるため、土の状態を細かく確認する作業は困難が予想されます。正しくは:低負荷で短い時間の作業や、身体的負担の少ないレクリエーション活動を提案する。選びやすい理由:手先を使う作業であるため、リハビリテーションの一環として適切に見えるかもしれない。混同注意:筋力低下があるため、あえて筋力トレーニングの意味合いで選んでしまう可能性があるが、多発性硬化症の疲労感は考慮すべき重要な要素。
- 2. 椅子の製作は、長時間の集中力、細かい計測、工具の使用による精密な手の動き、そして材料の運搬など、多岐にわたる身体的・精神的負荷を伴います。多発性硬化症の疲労感や軽度の視神経炎を考慮すると、非常に不適切です。正しくは:疲労管理を最優先し、短時間で達成感を得られるような易しい作業や、必要に応じて補助具を活用できる作業を検討する。選びやすい理由:作業活動の選択肢として一般的であるため、深く考えずに選んでしまう可能性がある。混同注意:患者のMMTが4であるため、ある程度の筋力があると判断し、過度な負荷を与えてしまう可能性がある。しかし、疲労感が強い点がポイント。
- 3. ピアスのビーズ細工は、非常に細かいビーズや金具を扱うため、軽度の両側視神経炎がある患者には視覚的な負担が大きく、作業が困難です。また、長時間の集中が必要となり、疲労を増悪させる可能性があります。正しくは:視力低下に対応できるような、より大きな素材を扱う作業や、視覚的負担の少ない活動を選ぶ。選びやすい理由:手先の巧緻性を高める作業として適切に思えるかもしれないが、視神経炎という具体的な症状を見落としやすい。混同注意:単に手先を使う作業と捉え、視覚的な負担を軽視してしまう可能性がある。多発性硬化症では視覚障害が頻繁に見られる。
- 4. 正解。卓上編み機は、手先だけでなく腕全体を使った比較的大きな動きで操作できるため、軽度の視神経炎があっても視覚的な負担が少なく、取り組みやすいです。また、手作業に比べて少ない労力で作業を進められるため、疲労を訴える患者にも適しています。短時間で休憩を挟みながら行うことも可能です。
- 5. 細かいタイルモザイクの製作は、小さなタイルを正確に配置する必要があるため、軽度の両側視神経炎がある患者には視覚的負担が非常に大きいです。また、集中力を要し、長時間続けると疲労が増強される可能性があります。正しくは:視力低下を考慮し、大きめの素材や、視覚に頼りすぎない触覚や聴覚を活用するような作業を提案する。選びやすい理由:創造的な作業であり、達成感が得られるため、活動として良いと判断しがちだが、具体的な症状への配慮が不足している。混同注意:ビーズ細工と同様に、手先の巧緻性を養う目的で選択肢に入っているが、視覚障害の考慮が抜け落ちやすい。
国試ポイント
多発性硬化症患者の特性(特に疲労感と視力障害)を理解し、その症状に最も配慮した作業活動を選択できるかが問われています。活動の目的だけでなく、患者の身体状況に合わせた適切な難易度と負担レベルを判断する能力が必要です。
混同注意
単に「手を使う作業」や「集中力を要する作業」として活動内容を捉えてしまうと、患者の具体的な症状(疲労、視神経炎)への配慮が欠けてしまう。特に視力障害は多発性硬化症でよく見られる症状であり、作業選択の重要な判断基準となる。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出題された場合、まず患者の主訴(疲労、痛みなど)と主な症状(視力障害、運動麻痺の程度など)を把握し、それらの症状を悪化させない、または軽減させる活動がどれかを優先して判断する。特に「疲労」がキーワードの場合は、活動の強度と持続時間を厳しく評価する必要がある。
関連知識
多発性硬化症における疲労管理の重要性、視力障害(視神経炎、複視など)への対応、運動失調や痙縮に対する作業療法の原則、認知機能障害へのアプローチ。これらの総合的な知識に基づいた、個別的な作業選択が求められる。