11歳の男児。知的障害。ゲームソフトを買ってもらえなかったことをきっかけに、母親への暴力が激しくなり精神科に入院した。入院1週後、興奮は徐々に落ち着いてきたため、作業療法が導入された。この患児に対して行う作業療法で適切でないのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第59回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
知的障害を持つ児に対する作業療法では、暦年齢(実年齢)ではなく、個々の発達段階や能力に合わせた作業内容を選択することが基本です。暦年齢相応の作業では、能力と合致せず、失敗体験やストレスを引き起こし、治療への抵抗感につながる可能性があるため、適切ではありません。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。知的障害のある児の場合、暦年齢(実年齢)ではなく、個々の発達年齢や機能レベルに合わせた作業を選択することが重要です。暦年齢に合わせた活動では、児の能力と実際のレベルがかけ離れてしまい、過度なストレスや失敗体験につながる可能性があるため、適切ではありません。個別の発達段階や能力、興味に合わせて活動を調整する必要があります。
- 2. 家族が患児の障害特性を正確に理解することは、家庭内での適切な関わり方や、今後の支援計画を立てる上で非常に重要です。特に、暴力などの問題行動の背景には、知的障害からくるコミュニケーションの困難さや欲求不満が関連していることが多く、その理解は家族の負担軽減にもつながるため、適切な支援です。正しくは:これは適切な支援である。選びやすい理由:家族が障害の告知や受容に時間を要する場合があるため、説明がすぐに受け入れられるか疑問に思うかもしれませんが、専門職としての役割としては欠かせないステップです。混同注意:家族への説明を「治療」そのものと別のフェーズと考えがちですが、家族支援は作業療法の一部として重要な役割を担います。
- 3. 患児の興味や関心を引き出す活動から導入することは、治療への参加意欲を高め、安心感や成功体験をもたらしやすくなります。特に、興奮状態が落ち着いてきた段階では、本人の主体性を尊重することが重要であり、肯定的な治療関係を築く上で極めて有効な方法です。正しくは:これは適切な支援である。選びやすい理由:暴力行為があったため、興味に任せるだけでは再度の問題行動を引き起こす危険があると感じるかもしれませんが、適切な監督下であれば、興味は治療参加の重要な動機付けとなります。混同注意:問題行動があったため、規律や行動制限を重視すべきだと考えがちですが、本人の興味を尊重することは治療効果を高めるための重要な要素です。
- 4. ポジティブな強化(称賛)は、特に知的障害を持つ子どもにとって、望ましい行動を促進し、自己肯定感を高める上で非常に有効な手段です。治療への動機付けを維持し、成功体験を積ませるために不可欠な関わり方となります。正しくは:これは適切な支援である。選びやすい理由:形式的な褒め方では逆効果になることもあるため、褒め方には注意が必要だと感じるかもしれませんが、適切な状況での称賛は基本的な介入の一つです。混同注意:褒めることが甘やかすことにつながると混同しがちですが、適切な行動を強化するための有効なフィードバックとして重要です。
- 5. 親子関係の改善は、患児の精神的安定と退院後の生活の質に直結する重要な目標です。暴力行為の背景には、親子のコミュニケーション不全や情緒的な葛藤がある可能性があり、情緒的な交流を支援することは、問題行動の再発防止にもつながるため、非常に適切なアプローチです。正しくは:これは適切な支援である。選びやすい理由:暴力行為があった直後であるため、すぐに情緒的な交流を図るのは難しい、時期尚早だと感じるかもしれませんが、支援の方向性としては非常に適切です。混同注意:暴力行為があったため、親子の分離や行動制限を優先すべきだと考えがちですが、最終的には関係修復と情緒的な結びつきが重要となります。
国試ポイント
知的障害児に対する作業療法介入の基本原則、特に活動選択における暦年齢と発達年齢の区別について問う問題です。患者の特性に応じた個別性の重要性を理解しているかが試されます。
混同注意
暦年齢相応の活動を提供することが「社会性の獲得」や「発達の促進」につながるという一般的な考え方と混同しやすいですが、知的障害児の場合は、現実的な能力に見合わない活動は逆効果になり得ることを理解することが重要です。
次に同じ論点が出たら
同様の事例において、活動選択の際に「暦年齢」と「発達年齢」のどちらに焦点を当てるべきか、またその理由を判断できるか。さらに、問題行動の背景にある欲求不満やコミュニケーション困難に対する作業療法士の役割を多角的に考えられるかが問われます。
関連知識
発達年齢と暦年齢の違いとそのアセスメント(Kohn's Developmental Scaleなど)。知的障害児の作業療法における活動選択の原則(成功体験、達成感、動機付け、適応能力の向上)。行動障害への介入(環境調整、ポジティブ強化、代替行動の学習)。家族支援の重要性(障害受容、ペアレントトレーニング)。