60歳の女性。専業主婦。Alzheimer型認知症。1年前から最近の出来事を徐々に思い出せなくなり、家に引きこもりがちになった。趣味をする気力がなくなり近所づきあいも減った。「物が盗まれた」などの被害的な言動が増加したため、心配した夫に伴われて精神科を受診した。服薬治療を開始し、重度認知症患者デイケアを利用することとなった。この患者の特徴で適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第59回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
アルツハイマー型認知症の患者は、進行性の記憶障害に加え、見当識障害(特に場所の見当識)や視空間認知能力の低下を伴うため、外出中に迷子になったり、自宅へ帰る道順が分からなくなることが非常に多く見られます。これは、この疾患の患者が抱える重大な問題行動の一つであり、臨床的に頻繁に観察される症状です。設問の患者は「1年前から最近の出来事を徐々に思い出せなくなり」、「家に引きこもりがちになった」とあり、初期の症状から中等度への移行期と考えられます。この段階で場所の見当識障害が悪化し、外出時に帰宅困難となるのはアルツハイマー型認知症の典型的な特徴です。
選択肢ごとの解説
- 1. 日内変動や日ごとの認知機能の大きな変動は、レビー小体型認知症の主要な特徴であり、アルツハイマー型認知症では通常みられません。正しくは:アルツハイマー型認知症では、認知機能の低下は一般的に緩やかに進行し、顕著な変動は伴いません。選びやすい理由:認知症全体で認知機能が変化するという漠然とした知識から、変動すること自体はあり得ると考えてしまうため。混同注意:レビー小体型認知症と混同しやすいです。
- 2. 特定の場所に固執する行動や常同行動は認知症患者に広く見られる行動ですが、アルツハイマー型認知症に特有の主要な診断基準や特徴とは言えません。環境への適応困難や安心感を求める行動の一部ではありますが、他の認知症タイプでも観察されます。正しくは:この行動は、より広範な認知症患者に見られる行動パターンの一つです。アルツハイマー型認知症の特異的な特徴ではありません。選びやすい理由:認知症患者が実際に示す行動パターンの一つであるため、正しい選択肢だと誤解しやすいです。混同注意:認知症全般に見られる行動障害や常同行動と、特定の認知症タイプの診断的特徴との区別。
- 3. 具体的で鮮明な幻視は、レビー小体型認知症の中核症状の一つです。アルツハイマー型認知症では幻覚は比較的稀で、見られたとしても進行期に多く、レビー小体型認知症のような鮮明な幻視は一般的ではありません。正しくは:アルツハイマー型認知症では幻覚は頻繁に見られず、見られたとしてもレビー小体型認知症のような具体的で詳細な幻視は通常みられません。選びやすい理由:認知症の周辺症状として幻覚・妄想があるため、一見正しいように思えます。また、設問文にある「被害的な言動」を幻視と混同する可能性があります。混同注意:レビー小体型認知症と混同しやすいです。また、幻覚と妄想の違いについて理解が曖昧だと誤解しやすいです。
- 4. これはレム睡眠行動障害(RBD)を指しており、レビー小体型認知症やパーキンソン病の早期から高頻度に見られる特徴です。アルツハイマー型認知症の主要な症状ではありません。正しくは:アルツハイマー型認知症患者は睡眠障害を抱えることがありますが、レム睡眠行動障害はレビー小体型認知症やパーキンソン病でより特徴的です。選びやすい理由:認知症患者に睡眠障害が多いという一般的な知識から、これも関連症状だと考えてしまう可能性があります。混同注意:レビー小体型認知症やパーキンソン病と混同しやすいです。
- 5. 正解。アルツハイマー型認知症では、初期から中期にかけて記憶障害に加え、視空間認知能力の低下や場所の見当識障害が進行します。このため、外出先で道に迷い、自分の家に戻れなくなる「徘徊」の症状は、本疾患の典型的な特徴の一つです。正しくは:正答のため、修正の必要はありません。選びやすい理由:正答のため、特になし。混同注意:正答のため、特になし。
国試ポイント
この問題は、アルツハイマー型認知症の代表的な臨床症状を正確に理解しているかを問うています。特に、他の認知症タイプ(レビー小体型認知症など)と鑑別するための特徴的な症状について、基本的な知識が求められます。単なる「もの忘れ」だけでなく、見当識障害、行動・心理症状(BPSD)といった幅広い視点から特徴を把握することが重要です。
混同注意
レビー小体型認知症の症状(認知機能の変動、具体的幻視、レム睡眠行動障害)との鑑別が重要です。また、血管性認知症や前頭側頭型認知症の行動特徴との違いも意識しておくと良いでしょう。
次に同じ論点が出たら
次回、同様の論点が出題された場合、他の認知症タイプ(レビー小体型、血管性、前頭側頭型など)のそれぞれの特徴的な症状と鑑別できるかどうかが問われる可能性が高いです。また、病期(軽度、中等度、重度)に応じた症状の変化や、それに対するアプローチ(リハビリテーション、環境調整)についても問われるかもしれません。
関連知識
アルツハイマー型認知症の主要症状:記銘力障害(エピソード記憶障害)、失語、失行、失認、遂行機能障害、見当識障害、視空間認知障害。周辺症状(BPSD):徘徊、妄想(特に被害妄想)、抑うつ、無気力、介護抵抗など。病期の進行に伴い、これらの症状が複合的に現れます。