28歳の女性。5年前の外傷性脳損傷による右片麻痺。Brunnstrom法ステージ上肢Ⅲ、手指Ⅲ。最近、右手指の屈曲拘縮が悪化し、手指衛生が困難となった。最も適切な装具はどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
ブルンストローム法ステージⅢに見られるような強い痙性による手指の屈曲拘縮が悪化し、手指衛生が困難になっている状況では、手指を積極的に伸展させ、手のひらを開放できる装具が必要です。パンケーキ型装具は、手指全体を伸展位に保持し、手のひらのアクセスを確保するために効果的であり、手指衛生の問題を解決するのに最も適しています。
選択肢ごとの解説
- 1. BFOは、主に重度の近位筋力低下がある場合に、上肢の重さを支え、肩や肘の動きを補助する装具です。手指の屈曲拘縮の改善や手指衛生の促進には直接的な効果がありません。正しくは:手指の屈曲拘縮に対応するためには、手指を伸展位に保持する機能が必要です。選びやすい理由:脳損傷後の患者に使用される装具の一つであるため、漠然と関連があると感じるかもしれませんが、目的が異なります。混同注意:上肢全体の機能補助と、手指の個別の問題への対処を混同しやすいです。
- 2. RICスプリント(安静時手関節装具)は、手関節をやや背屈位、手指をやや屈曲位に保持することで、安静時における関節の良好な位置を保ち、拘縮の予防や浮腫の軽減を目的とします。しかし、すでに悪化した手指の屈曲拘縮を強力に伸展させ、手指衛生を可能にする作用は限定的です。むしろ手指を軽度屈曲位に保持するため、伸展させたい状況には不向きです。正しくは:悪化した屈曲拘縮に対しては、手指をより積極的に伸展位に保持できる装具が必要です。選びやすい理由:拘縮予防や安静位保持のための装具として一般的なため、選択肢として考えやすいですが、本ケースの「悪化した屈曲拘縮」と「衛生困難」という問題に対しては不十分です。混同注意:一般的な拘縮予防と、既存の重度拘縮に対する積極的な伸展保持の目的を混同しやすいです。
- 3. ナックルベンダーは、主に中手指節関節(MP関節)の屈曲を促すために使用されるダイナミック装具です。手指の屈曲拘縮を伸展させる目的とは逆の作用を持つため、不適切です。正しくは:手指の屈曲拘縮に対しては、手指の伸展を促す装具が適切です。選びやすい理由:手指の関節に作用する装具であるという点で、漠然と関連性を感じるかもしれませんが、その作用が問題解決と逆方向であるため誤りです。混同注意:手指の関節に作用する装具全般と、その具体的な作用(屈曲か伸展か)を混同しやすいです。
- 4. 正解。パンケーキ型装具は、手指全体(特にMP関節とIP関節)を伸展位に、手関節をニュートラルまたは軽度背屈位に保持し、手のひらを大きく開くように設計されています。これは、重度の手指屈曲拘縮や痙縮によって手指が強く握り込まれ、手指衛生が困難になっている状況において、手指を強制的に伸展させることで手のひらのアクセスを確保し、清潔を保つために最も適した装具です。その平らな形状が特徴的です。
- 5. コックアップ・スプリントは、主に手関節を一定の角度(通常20~30度)で背屈位に保持することを目的とした装具です。手指は自由に動かせるか、装具によっては固定されません。そのため、手指の屈曲拘縮を積極的に伸展させ、手指衛生を容易にする効果は期待できません。正しくは:手指の屈曲拘縮に対応するためには、手指の関節に直接作用し、伸展位を保持する機能が必要です。選びやすい理由:手関節の安定化や保護に用いられる一般的な装具であるため、選択肢として魅力的に映るかもしれませんが、手指の屈曲拘縮には不向きです。混同注意:手関節の固定と手指の固定・伸展保持の目的を混同しやすいです。
国試ポイント
脳卒中や外傷性脳損傷後の痙性麻痺患者に見られる手指の屈曲拘縮に対し、その具体的な問題(手指衛生困難)を解決するための装具療法の選択能力が問われています。各装具の名称と、その主要な機能・適用目的を正確に理解していることが重要です。
混同注意
各装具の名称と、それが作用する部位(手関節、MP関節、手指全体など)や作用方向(屈曲、伸展、支持など)が似ているため、混乱しやすいです。特に、拘縮予防のための装具(RICスプリントなど)と、既存の重度拘縮に対する積極的な介入のための装具を区別することが求められます。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出題された場合、患者の具体的な症状(例:手関節の痛み、指の伸展不全、装具装着時の皮膚トラブルなど)と、それに対する各装具の作用メカニズムを結びつけて判断できるかを確認します。また、ダイナミック装具とスタティック装具の使い分けについても問われる可能性があります。
関連知識
ブルンストローム法ステージ(特にステージⅢの特性)、脳損傷後の痙縮による二次的合併症(拘縮)、各装具の適応と禁忌、ポジショニングの重要性、手指衛生のケア方法。