42歳の男性。右利き。自営業。3年前に脳出血発症後、回復期リハビリテーション病院を経て自宅退院し復職したが、仕事中に再発した。初発時の頭部CT(別冊No. 2A)と再発時の頭部CT(別冊No. 2B)を別に示す。再発時の新たな症状として最も考えられるのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
下図BのCT画像では、右大脳基底核(被殻)に出血巣が認められます。右利き男性の右被殻出血は、顔面や舌の運動を司る錐体路の障害を引き起こしやすく、結果として構音障害(特に不随意運動による運動失調性構音障害や、筋緊張亢進による痙性構音障害)を新たに発症する可能性が最も高いです。他の選択肢は、今回の出血部位から考えて可能性が低いか、異なる部位の損傷で生じる症状です。
選択肢ごとの解説
- 1. 画像Bに見られる出血は右脳の淡蒼球から被殻にかけてで、意識障害を直接引き起こすような広範囲なものではありません。再発時の意識レベルは通常、初期出血と比べても比較的安定していることが多いです。正しくは:意識障害が重度の場合(例えば脳幹への影響や広範な脳浮腫を伴う場合)に昏睡が考えられますが、本ケースの画像所見では最も考えられる症状ではありません。選びやすい理由:脳出血の重症例では意識障害がよく見られるため、一般論として選択肢に入れやすいかもしれません。混同注意:脳出血の重篤なケース全般における意識障害と、今回の局所的な出血による症状を混同する可能性があります。
- 2. 正解。下図BのCT画像では、右被殻に出血巣が認められます。被殻出血、特に右利きの人における右被殻出血は、錐体路の障害を伴いやすく、顔面や舌の運動麻痺が生じることで構音障害(とくに運動失調性構音障害や痙性構音障害)を引き起こす可能性が非常に高いです。これは局所症状として最も考えられます。選びやすい理由:脳出血の典型的な症状の一つであり、画像所見とも整合するため。混同注意:失語症と混同する可能性がありますが、失語症は主に優位半球(多くは左半球)の言語野損傷で生じ、構音障害は発語器官の運動障害によるものです。
- 3. 同名半盲は視放線や後頭葉視覚野の損傷によって生じますが、右同名半盲であれば左脳の視覚経路の障害が原因となります。今回の出血巣は右被殻であり、直接的な視放線や視覚野への影響は考えにくいです。正しくは:右同名半盲の場合は、左後頭葉や左側頭葉、または左内包後脚を通る視放線に病変がある場合に生じます。選びやすい理由:脳卒中における視覚障害は比較的よく知られている症状のため、選択肢として魅力的かもしれません。混同注意:視覚障害全般と、病変部位による特定の視覚障害(同名半盲)を混同する可能性があります。
- 4. 回転性めまいは、一般的に内耳や脳幹、小脳といった平衡感覚に関わる部位の障害で生じます。今回の右被殻出血では、これらの部位への直接的な影響は考えられず、主要な症状としてめまいが出現する可能性は低いです。正しくは:回転性めまいは、メニエール病のような内耳疾患や、脳幹・小脳の梗塞や出血などで生じることが多いです。選びやすい理由:脳卒中の症状としてめまいを伴うこともあるため、漠然とした脳の異常として選んでしまうかもしれません。混同注意:脳卒中の様々な非特異的症状と、特定の部位損傷による典型的な症状を混同する可能性があります。
- 5. Gerstmann症候群(ゲルストマン症候群)は、手指失認、左右失認、失書、失算の4つの症状を特徴とし、主に左角回領域の損傷(優位半球の頭頂葉)によって引き起こされます。今回の出血は右被殻であり、これらの症状とは関連性が低いと考えられます。正しくは:Gerstmann症候群は、優位半球の頭頂葉、特に角回付近の損傷で発症します。選びやすい理由:神経心理学的な症状として知られているため、専門用語として選んでしまう可能性はあります。混同注意:高次脳機能障害全般と、特定の病変部位に起因するGerstmann症候群を混同する可能性があります。また、優位半球と非優位半球での症状の違いを理解していない場合に選びやすいです。
国試ポイント
本問題は、脳画像(CT)を読影し、出血部位から最も考えられる神経症状を特定する能力を問うものです。特に、基底核出血における典型的な症状とその機序を理解しているかが重要となります。優位半球と非優位半球の機能差も考慮に入れる必要があります。
混同注意
脳出血全般における意識障害やめまいといった非特異的な症状と、病変部位に特異的な局所症状を混同しやすいです。また、失語症と構音障害の違いや、高次脳機能障害の局在についても正確な知識が求められます。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た際には、まず出血部位(または梗塞部位)を正確に特定し、その部位がどのような神経路や中枢機能に関わっているかを想起することが重要です。特に、錐体路、感覚路、脳神経核、高次脳機能領域のそれぞれについて、損傷した場合に生じる典型的な症状を関連付けて考える必要があります。利き手による優位半球の機能差も考慮に入れるポイントです。
関連知識
脳出血の好発部位(被殻、視床、橋、小脳、皮質下)、それぞれの部位で出現しやすい症状(片麻痺、感覚障害、意識障害、高次脳機能障害、眼球運動障害、めまいなど)、錐体路の走行と機能、脳神経核の局在、大脳皮質の機能局在(特に言語野、視覚野、頭頂葉機能)について知識が必要です。また、CT画像における出血の白く写る特徴も基本知識となります。