記憶障害を認める患者への対応として正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第56回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
記憶障害を持つ患者さんへの対応として、意味理解を促したり、複数の感覚チャネル(視覚、聴覚など)を使って情報を処理させることは、記憶の符号化と貯蔵を強化し、記憶の定着に非常に有効です。具体的には、情報を「意味的に深く処理すること(精緻化)」や、「声に出して繰り返すこと(反復、音韻符号化)」は、脳が情報を長期記憶に移行させるのを助けるための基本的な戦略となります。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。意味理解や音読は、多感覚を使い情報を深く符号化するため、記憶の定着に有効な方法です。特に短期記憶から長期記憶への移行を助けます。
- 2. 適度な運動は脳の血流を促進し、神経細胞の新生や認知機能の改善に寄与すると考えられています。疲労を考慮しつつも、運動自体を避けるべきではありません。正しくは:適度なバランストレーニングなどの運動は、脳機能の活性化に繋がりうるため、患者の体調や能力に合わせて活用を検討します。選びやすい理由:記憶障害の患者さんは認知的な負担が大きいため、身体的な疲労をさらに加えることは避けるべきだという配慮から、一見すると正しい選択肢に見えます。混同注意:脳機能と身体活動の関係性、特に運動の認知機能へのプラスの効果に関する知識が不足していると間違えやすいです。疲労回復のための休息と、機能維持・向上を目的とした活動の区別ができていない可能性があります。
- 3. 視覚的イメージは、情報を具体的な形に変換し、複数の感覚チャネルで処理を促すため、記憶の補助として非常に効果的です。記憶術でも広く利用されています。正しくは:記憶する内容は、絵や図などの視覚的イメージを用いることで、記憶の定着を助けます。選びやすい理由:単純に文字情報だけで覚えるべきだと考えてしまうと、誤って選択する可能性があります。特に、視覚優位でない患者の場合には必要ないと考えてしまうかもしれません。混同注意:視覚優位学習者と聴覚優位学習者など、学習スタイルに関する一般論と、記憶障害における記憶補助手段としての視覚情報の効果を混同しているかもしれません。
- 4. 備忘録やスケジュール帳、メモなどの外部記憶ツールは、記憶障害の患者さんが日常生活を円滑に送る上で非常に重要な補償手段です。情報を整理し、混乱を防ぐ目的で積極的に活用すべきです。正しくは:備忘録は、記憶障害の患者さんが情報を管理し、日常生活を支援するための有効なツールとして積極的に活用します。選びやすい理由:情報過多になるとかえって混乱するという考えから、一見正しいように感じられます。特に、使い方を指導しないまま渡すと混乱を招くことがあるため、その点を懸念して選んでしまう可能性があります。混同注意:外部記憶ツールはあくまで補償手段であり、記憶能力自体を改善するものではないという認識が、その利用を避ける理由になると誤解しているかもしれません。また、情報過多が混乱を招くという側面と、適切な使い方による有効性を混同している可能性があります。
- 5. 記憶障害の患者さんに対し、失敗を繰り返させることは、無力感や意欲の低下、不適切な行動の学習に繋がりやすく、心理的に悪影響を及ぼします。成功体験を積ませることが重要です。正しくは:成功体験を積み重ねられるような環境設定や課題調整を行い、記憶の定着や自信の回復を促します。選びやすい理由:人は失敗から学ぶという一般論に囚われると、正しいように感じられます。試行錯誤による学習を期待する気持ちから選んでしまう可能性があります。混同注意:健常者の学習メカニズムと、記憶障害がある患者さんの特性や心理状態への配慮を混同している可能性があります。また、リハビリテーションにおける「挑戦」と、過度な「失敗」を混同しているかもしれません。
国試ポイント
記憶障害を持つ患者への基本的な対応原則、特に認知機能リハビリテーションにおける記憶戦略や補償手段の活用が問われる問題です。誤った介入が患者の心理面に与える悪影響についても理解しているか確認されます。
混同注意
認知機能全般への誤解、健常者の学習理論との混同、心理的側面への配慮不足。
次に同じ論点が出たら
この論点が出た場合、記憶の仕組み、記憶障害の種類に応じた具体的な介入方法、心理的側面への配慮、環境調整や補償手段の活用法について深掘りされる可能性が高いです。特に、それぞれの方法が記憶のどの段階(符号化、貯蔵、検索)に作用するのかを理解しているか問われるでしょう。
関連知識
記憶の多重貯蔵モデル(感覚記憶、短期記憶、長期記憶)、記憶の符号化・貯蔵・想起プロセス、精緻化リハーサル、チャンキング、外部記憶補助具(手帳、メモ、スマートフォン)、エラーレスラーニング、ポジティブフィードバック。