顔面と上下肢に感覚脱失を呈する脳卒中片麻痺の患者に対する生活指導で最も適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
顔面に感覚脱失がある場合、通常のカミソリを使用すると皮膚を傷つけても気づきにくく、出血や感染のリスクが高まります。電動シェーバーは刃が皮膚に直接触れにくいため、外傷のリスクを大幅に軽減でき、これは感覚脱失を持つ患者さんの安全を確保するための最も適切な生活指導となります。
選択肢ごとの解説
- 1. 片麻痺の患者さんにとって、両手で車椅子を駆動することは身体的に困難です。一般的には、健側の手と足を使って操作するか、電動車椅子の利用を検討します。正しくは:「車椅子は健側の上肢と下肢を使い操作するか、電動車椅子の使用を検討するよう促す。」選びやすい理由:麻痺側も使うべきというリハビリの考え方から、両手駆動も視野に入れるべきだと誤解するかもしれませんが、物理的な運動麻痺があるため不可能です。混同注意:感覚脱失と運動麻痺による機能制限の違いが混同されやすいです。
- 2. 感覚脱失がある足では、スリッパが脱げやすく、つまずきや転倒のリスクが非常に高まります。また、足部の感覚がないため、皮膚の損傷や異物混入にも気づきにくいです。正しくは:「屋内では、足にしっかりとフィットし、滑りにくい靴や室内履きの着用を推奨する。」選びやすい理由:一般的な生活習慣としてスリッパを使う人が多いため、問題ないと判断しがちですが、感覚脱失がある場合は危険です。混同注意:健常な人の生活習慣と、感覚脱失がある患者さんのリスク管理が混同されやすいです。
- 3. 正解。顔面に感覚脱失がある場合、通常のカミソリでは皮膚を誤って切っても気づきにくく、出血や感染のリスクが高まります。電動シェーバーは刃が皮膚に直接触れにくいため、外傷のリスクを大幅に軽減でき、安全な髭剃りの方法として適切です。
- 4. 麻痺側の手を全く使わないように指導すると、「学習性不使用」を招き、残存機能の回復や維持の機会を奪ってしまいます。安全に十分配慮しながら、可能な範囲で麻痺手を使用するよう促すことが重要です。正しくは:「麻痺側の手は、安全に注意しながら、日常生活動作で可能な限り使うよう促す。」選びやすい理由:感覚がないことによる危険を回避しようとして、使用を制限する方が安全だと考えがちですが、過度な制限は機能回復を妨げます。混同注意:危険回避と機能回復のバランス、学習性不使用の概念が混同されやすいです。
- 5. 感覚脱失がある麻痺側の手で熱い湯呑を持つと、熱さを感じにくいため火傷のリスクが高まります。また、把持力が不安定な場合が多く、落として怪我をする危険性もあります。正しくは:「湯呑は健側で持つか、麻痺側でも安全に扱えるよう、熱が伝わりにくい二重構造のカップや把持しやすい取っ手付きの容器の使用を検討する。」選びやすい理由:麻痺側の手も積極的に使うべきだというリハビリの原則から、あえて麻痺側で持たせようとする考えが浮かぶかもしれませんが、感覚脱失という危険因子があるため不適切です。混同注意:麻痺側の使用促進と、感覚脱失による具体的な安全上のリスク評価が混同されやすいです。
国試ポイント
脳卒中片麻痺における感覚障害が日常生活動作(ADL)に与える影響と、それに対する具体的な安全管理・生活指導の知識が問われています。特に、感覚障害がある部位では、熱さ、痛み、接触などの感覚が鈍くなるため、火傷、切創、褥瘡などのリスクが高まることを理解し、それらを予防するための具体的な工夫を選び出す能力が重要です。
混同注意
運動麻痺と感覚麻痺による機能制限の違い、リハビリテーションの原則(麻痺側使用の促進)と安全確保の優先順位、一般的な生活習慣と障害に応じた特別な配慮の必要性が混同されやすい点です。
次に同じ論点が出たら
次に同じ論点が出題される場合、感覚脱失がある部位での熱傷(入浴時の湯温確認、暖房器具の使用)、褥瘡(体位変換、皮膚観察)、転倒(履物選択、歩行補助具、環境整備)、外傷(調理時の包丁使用、入浴時の身体洗浄)など、具体的なADL場面でのリスク管理に関する選択肢から、最も安全で適切な方法を選べるかが問われるでしょう。また、視覚障害や高次脳機能障害(半側空間無視、失行など)を伴う場合の生活指導も関連する可能性があります。
関連知識
脳卒中片麻痺の症状(運動麻痺、感覚障害、高次脳機能障害など)、感覚障害の種類とその評価(表在感覚、深部感覚)、感覚障害がある場合の日常生活動作(ADL)指導の原則、リスク管理(転倒予防、火傷・外傷予防、褥瘡予防など)、学習性不使用(Learned Non-use)の概念。