28歳の男性。営業職。上司からのハラスメントでうつ状態になり、退職して1か月の入院治療を受けた。退院後、就労準備を目的とした外来作業療法が指示された。導入時評価では、無気力ながらも対人関係は良好で、高い作業能力が認められるが、就労に対し強い不安を訴えた。この時点の外来作業療法で優先すべきなのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第61回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
この患者は、うつ状態での入院治療後であり、精神的な安定と再発防止が最も重要です。特に「就労に対し強い不安を訴えた」という点から、その不安を軽減し、今後のストレス対処能力を高めるための再発防止プランの策定が優先されます。これにより、安心して社会復帰へのステップを踏み出す基盤が築かれます。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。患者は退院したばかりで、無気力感がありつつも就労に対する強い不安を抱えています。この段階では、ストレス要因への対処法や再発のリスクを管理するための具体的なプランを患者と共に作成することが最も重要です。これにより、不安の軽減と安定した生活基盤の確立を目指します。
- 2. 社会生活技能訓練(SST)は、対人関係スキルや日常生活能力の向上を目指すものですが、この患者は「対人関係は良好で、高い作業能力が認められる」とされており、直ちに優先すべき課題ではありません。まずは就労への不安の解消と再発予防が先です。正しくは:患者の対人関係スキルや社会生活技能に明らかな課題がある場合に導入を検討する。選びやすい理由:就労を目標としているため、社会生活技能の向上が必要だと考えてしまう。混同注意:患者の現在の状態やニーズと、一般的な社会復帰に必要なスキル訓練を混同する。
- 3. 就労移行支援事業所への紹介は、就労準備がある程度整い、具体的な就職活動に進む段階で検討されます。この患者は、高い能力があるにもかかわらず「就労に対し強い不安を訴えた」状態であり、まずはその不安に対処し、安定した心身の状態を確保することが優先されます。正しくは:患者の就労への不安が軽減され、具体的な就職活動に進む意欲が高まった段階で紹介を検討する。選びやすい理由:「就労準備を目的とした外来作業療法」という設問の文言から、具体的な就労支援機関への紹介を急ぐべきだと考えてしまう。混同注意:作業療法の初期段階における目標設定と、具体的な社会資源の活用時期を混同する。
- 4. 認知リハビリテーションは、記憶や注意、問題解決などの認知機能の障害がある場合に実施されます。この患者は「高い作業能力が認められる」とされており、認知機能に明らかな問題が示唆されていないため、現時点での優先度は低いと考えられます。正しくは:患者の認知機能に具体的な障害が確認された場合に実施を検討する。選びやすい理由:うつ病患者の中には認知機能の低下が見られることがあるため、一般論として必要だと考えてしまう。混同注意:うつ病における一般的な症状と、個別の患者の具体的な評価結果を混同する。
- 5. 単純な軽作業プログラムは、活動性の向上や集中力の回復を目的として行われることがありますが、この患者は「高い作業能力が認められる」とされており、能力そのものに問題はありません。また、「強い不安」があるため、単純作業だけでは根本的な問題解決には繋がりません。まずは不安への対処が優先されます。正しくは:患者の活動性や集中力が著しく低下している場合や、具体的な作業能力の低下がある場合に導入を検討する。選びやすい理由:無気力な状態なので、まずは簡単な作業から始めると良いと考えてしまう。混同注意:患者の主訴(就労への強い不安)と、一般的な活動性低下に対する介入を混同する。
国試ポイント
精神疾患患者の就労支援において、初期段階での介入の優先順位を問う問題です。特に、患者の現在の状態(症状、能力、主訴)と、それに対する最適な作業療法プログラムの選択が重要となります。うつ病からの回復過程においては、まず精神的な安定と再発予防が優先されることを理解しているかが問われます。
混同注意
単に「就労準備」という言葉に引きずられ、具体的な就労支援や作業プログラムを急いで選択してしまうと誤答につながります。患者の精神状態と不安の軽減が最優先である点を冷静に判断する必要があります。
次に同じ論点が出たら
今後同様の状況で問題が出た場合、患者の「現在の精神状態(不安、意欲、症状)」「具体的な能力(対人関係、作業遂行能力)」「主訴」「目的(就労準備)」の4つの要素を総合的に判断し、その時点での最も優先度の高い介入を選択できるかを確認します。
関連知識
うつ病の治療段階と作業療法の目標設定、ストレスマネジメント、疾病教育、社会資源の活用時期。精神科作業療法における評価の重要性と、評価結果に基づいた個別性の高い介入計画の立案。