小学3年生の男児。知能検査では全般的な知的発達に遅れは認めない。1年生のころから読み書きに強い困難を抱えている。文章を読む際に流暢に正しく読むことが難しく、音読が極端に遅い。漢字の書き取りも苦手で、黒板の文字の書き写しに時間がかかる。保護者は「家では普通に会話もでき、計算などは問題ない」と話している。この患児の障害で最も考えられるのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第61回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
設問の男児は、知能検査で全般的な知的発達の遅れがないにもかかわらず、小学1年生から読み書き(文章を読む流暢さ、音読の速さ、漢字の書き取り、文字の書き写し)に著しい困難を抱えています。一方で、会話や計算には問題がないとされています。これらの特徴は、特定の学習領域のみに困難がある限局性学習症(特に読字障害や書字表出障害)の診断基準に明確に合致します。他の選択肢は、行動障害や愛着障害に関連するものであり、提示された症状とは一致しません。
選択肢ごとの解説
- 1. 素行症は、他者の権利侵害や社会規範・ルール違反が反復・持続的に見られる行動障害で、設問の症状とは異なります。正しくは:他者の権利侵害や社会規範・ルール違反が反復・持続的に見られる行動障害です。選びやすい理由:行動面での問題と誤解されることがあるかもしれませんが、このケースの核心は学習面です。混同注意:ADHD(注意欠如・多動症)の行動面での問題や、ASD(自閉スペクトラム症)の特性に伴う問題と混同する可能性があります。
- 2. 反抗挑発症は、怒りっぽい気分、議論好き・反抗的な行動、悪意に満ちた態度が特徴で、読み書きの困難とは直接関連しません。正しくは:怒りっぽい気分、議論好き・反抗的な行動、悪意に満ちた態度が特徴の行動障害です。選びやすい理由:学習困難からくるフラストレーションが反抗的な態度につながる可能性も考えられますが、直接的な診断ではありません。混同注意:ADHDや発達障害に伴う行動調整の困難と混同する可能性があります。
- 3. 正解。この症例は、知能は正常範囲内であるにもかかわらず、読み書き(音読の流暢性、正確性、漢字の書き取り)に特異的な困難が見られるため、限局性学習症(特に読字障害や書字表出障害)の診断基準に合致します。混同注意:知的発達症(知的障害)と混同されがちですが、知能検査で全般的な知的発達の遅れがない点が鑑別点です。
- 4. 脱抑制型対人交流症は、見知らぬ大人に対して過度に馴れ馴れしい行動を示す愛着の問題であり、学習の困難とは関係がありません。正しくは:見知らぬ大人に対して過度に馴れ馴れしい行動を示す愛着の問題です。選びやすい理由:「対人交流」という言葉から、コミュニケーションの問題を想起させるかもしれませんが、このケースは愛着形成の問題を示していません。混同注意:自閉スペクトラム症の対人関係の質的な偏りや、ADHDの衝動性による対人関係の問題と混同する可能性があります。
- 5. 反応性アタッチメント症は、適切な養育の欠如によって生じる、情緒的に引きこもった行動や、他者への愛着形成の困難を特徴とする障害です。設問の症状とは関連しません。正しくは:適切な養育の欠如によって生じる、情緒的に引きこもった行動や、他者への愛着形成の困難を特徴とする障害です。選びやすい理由:「アタッチメント」という言葉から、心理的な問題全般を想起させるかもしれませんが、このケースは愛着形成の問題を示していません。混同注意:自閉スペクトラム症の対人関係の問題や、抑うつ症状などと混同する可能性があります。
国試ポイント
この問題は、発達障害の中でも特に限局性学習症(旧:限局性学習障害)の主要な特徴と診断基準を理解しているかを問うものです。知能は正常範囲内だが、特定の学習領域(読み、書き、計算のいずれか)に著しい困難があるという点が鑑別のポイントになります。他の行動障害や愛着障害との鑑別も重要です。
混同注意
知的発達症(知的障害)、ADHD(注意欠如・多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)など、他の発達障害と混同しやすいですが、本症例では『知能の遅れがないこと』、『特定の学習領域のみに困難があること』が鑑別点となります。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出た場合、まず『全般的な知的発達の遅れの有無』を確認し、次に『特定の学習領域に限定された困難であるか』を確認することが重要です。もし全般的な遅れがあれば知的発達症、全般的な困難でなければ限局性学習症を疑います。また、不注意や多動性が目立つ場合はADHD、対人関係や反復行動が目立つ場合はASDを考慮します。
関連知識
DSM-5-TRにおける限局性学習症の診断基準、各発達障害(ADHD、ASD、知的発達症、限局性学習症)の主要な特徴と鑑別点。特に限局性学習症は『読字障害』『書字表出障害』『算数障害』の3つのタイプがあること。