27歳の男性。統合失調症。大学卒業後、アルバイト経験はあるが、短期間での離職を繰り返している。最近、主治医の指示で精神科デイケアに通所し、就労に向けて準備を進めることになった。デイケアでは、作業に関する質問ができず、一方的に他患に話すなどの様子が見られた。この患者に行うプログラムで最も適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第61回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
統合失調症の患者が「作業に関する質問ができない」「一方的に他患に話す」という具体的な行動課題は、対人関係やコミュニケーションスキルの不足を示しています。SSTは、これらの社会生活に必要なスキルを学習し、実践するための有効なプログラムであり、患者の就労準備段階における対人関係能力の向上に直接的に寄与するため、最も適切な選択肢となります。
選択肢ごとの解説
- 1. ACTは、重度の精神疾患を持つ方が地域で安定した生活を送るための包括的な支援サービスであり、多職種チームが24時間体制で個別支援を提供します。主に症状が重く、医療機関へのアクセスが困難な方や、入院と退院を繰り返すような方々を対象としており、この患者の具体的な対人コミュニケーション課題に直接アプローチするものではありません。正しくは:重度精神疾患患者の地域生活を支える包括的なアウトリーチ型支援プログラム。選びやすい理由:精神疾患患者への一般的な地域支援プログラムとして知られているため、選びたくなるかもしれませんが、患者の提示された具体的な課題とは直接関連しません。混同注意:他の地域生活支援サービス(例:訪問看護、生活訓練)や、個別援助計画に基づいた支援全般と混同されがちです。
- 2. IPSは、精神疾患を持つ方々が一般企業で就職し、その職場で働き続けることを支援する「支援付き雇用」モデルです。患者は現在、就労に向けた『準備段階』であり、具体的な対人コミュニケーションスキルに課題を抱えています。IPSは直接的な就職活動や就職後の定着支援に特化しており、就労準備段階のスキル不足への介入が主な目的ではありません。正しくは:精神疾患を持つ人の競争雇用への就職および定着を支援するプログラム。選びやすい理由:患者が「就労に向けて準備を進める」という記述があるため、就労支援プログラムとして候補に挙がりやすいですが、提示されている課題と介入のタイミングが異なります。混同注意:就労移行支援や就労継続支援といった、他の就労支援サービスと混同されやすいです。
- 3. NEARは、統合失調症患者の認知機能障害(例:注意、記憶、実行機能など)の改善を目指す認知リハビリテーションプログラムです。患者が示している問題は、認知機能そのものの障害というよりも、その結果としての対人コミュニケーション行動の不適切さであるため、直接的な適応ではありません。正しくは:統合失調症患者の認知機能(注意、記憶、実行機能など)改善に特化した認知リハビリテーションプログラム。選びやすい理由:統合失調症患者のリハビリプログラムの一つとして知識があれば、選択肢として考慮するかもしれませんが、患者の具体的な行動課題とは合致しません。混同注意:他の認知リハビリテーションプログラム(例:CRT: Cognitive Remediation Training)と混同しやすいです。
- 4. 正解。SST(ソーシャルスキルトレーニング)は、社会生活において必要とされる対人関係スキルやコミュニケーションスキルを向上させるための訓練プログラムです。ロールプレイングなどを通じて、具体的な状況で適切な行動を学びます。この患者が「作業に関する質問ができない」「一方的に他患に話す」といった行動は、まさにコミュニケーションや対人関係スキルの不足を示しており、SSTがその改善に最も直接的に適しています。
- 5. TEACCHプログラムは、主に自閉スペクトラム症を持つ方々を対象とした包括的な支援アプローチです。構造化された環境や視覚的な手がかりを用いることで、コミュニケーション能力や社会適応能力を高めることを目的としています。この患者は統合失調症であり、自閉スペクトラム症ではないため、TEACCHプログラムの主要な対象疾患とは異なります。正しくは:自閉スペクトラム症の特性を持つ人々のための、構造化された環境を用いた包括的支援プログラム。選びやすい理由:「コミュニケーション」というキーワードから、このプログラムを連想するかもしれませんが、対象疾患が異なる点で不適切です。混同注意:他のコミュニケーション支援プログラムや発達障害支援の枠組みと混同しやすいです。
国試ポイント
精神疾患を持つ患者の症状や行動特性から、最も適切な治療や支援プログラムを選択できるかが問われます。特に、それぞれのプログラムの目的、対象疾患、介入内容を正確に理解していることが重要です。
混同注意
精神科リハビリテーションに関する様々なプログラム(認知リハビリテーション、作業療法など)と、その具体的な適用場面が混同しやすいです。特に、症状の一部改善を目指すもの、地域生活全体を支えるもの、就労に特化したもの、対人スキルに特化したものなど、目的の違いを明確に把握する必要があります。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出題された場合、まず患者の『具体的な行動課題』や『現在の置かれている状況(例:準備段階か、具体的な就職活動中か)』に注目しましょう。その上で、各プログラムが『何を目的とし、どのような介入を行うか』を照らし合わせることで、適切な選択肢を絞り込むことができます。
関連知識
SSTは、精神疾患だけでなく、発達障害や認知症など、幅広い領域で対人コミュニケーション能力の向上を目指して用いられます。ロールプレイング、モデリング、フィードバックなどの技法が用いられ、具体的な状況下での問題解決能力を高めます。また、統合失調症患者の陰性症状や認知機能障害がソーシャルスキルの低下に影響を与えることも理解しておくべきです。