28歳の男性。適応反応症〈適応障害〉。大学院を修了後、研究職に就職し仕事も順調だった。1か月前に上司が異動し、部署の管理方法が変わったことで仕事がうまくいかなくなった。2週前から仕事のことを考えると不安で落ち着かず、不眠になり精神科を受診した。薬物療法が開始され、3か月の休職、自宅療養を指示された。数週経っても抑うつ気分が改善せず、外来作業療法が処方された。導入時に作業療法士が最優先して聴取するのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第61回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
適応障害は、明確なストレス因子に対して症状が出現する精神疾患です。この事例では、上司の異動と部署の管理方法変更がストレス源と明示されています。作業療法士が介入を開始するにあたっては、まずこのストレス源が具体的にどのような内容で、患者にどのように影響しているかを詳細に把握することが最優先となります。特に「職場の人的環境」は、管理体制変更による人間関係の変化や、そこから生じる具体的な業務上の困難を理解するために不可欠な情報です。
選択肢ごとの解説
- 1. 適応障害は特定のストレス因子に対する反応であり、現在の職場の問題が明確な原因として挙げられています。親との関係は広範な心理社会的情報の一部ではありますが、導入時に最優先で聴取すべき現在のストレス源とは考えにくいです。正しくは:患者の適応障害の直接的な原因が職場環境の変化と明示されているため、優先順位は低いですが、患者の対処能力やサポート体制を理解する上では長期的に重要な情報です。選びやすい理由:ストレス耐性や対処行動の基盤として家族関係が影響することもあり、精神的な問題を持つ患者の背景情報として重要と考える学生は選びやすいでしょう。混同注意:精神疾患全般の包括的な情報収集と、適応障害の直接的な原因探索との優先順位を混同しやすいです。
- 2. 経済的な問題は休職中の患者にとって重要な懸念事項となることが多く、長期的なリハビリテーションにおいては考慮すべきですが、現在の適応障害の直接的な原因(職場の管理方法変更)とは異なるため、最優先の聴取項目ではありません。正しくは:退職を視野に入れる場合や、生活困窮の兆候がある場合には優先度が上がりますが、現時点では直接的な原因究明ではありません。選びやすい理由:休職中の生活に直結する現実的な問題であり、患者の不安を軽減するためにも重要な情報だと感じるため、選択肢として魅力的です。混同注意:患者の抱える「不安」の対象が、現在のストレス源である職場環境なのか、それとも休職に伴う経済的な問題なのか、その優先順位を混同しやすいです。
- 3. 正解。適応障害は特定のストレス因子への反応であり、本ケースでは「上司の異動と部署の管理方法変更」が明確なストレス源として示されています。導入時には、このストレス源の詳細(特に人間関係がどのように変化し、それが患者にどう影響しているか)を聴取し、問題の背景を深く理解することが、今後の介入計画立案に不可欠であるため、最も優先されます。
- 4. 不眠は症状の一つではあるものの、その原因が寝室のレイアウトにあるとは考えにくく、適応障害の直接的なストレス源からは離れています。環境調整は大切ですが、原因究明よりは優先度が低いです。正しくは:不眠に対する環境調整は治療の一環として重要ですが、最優先で聴取すべき情報ではありません。不眠が改善しない場合の具体的な介入検討時に聴取される項目です。選びやすい理由:患者が不眠を訴えているため、睡眠環境の改善が必要だと考えるため、選択肢として魅力的に感じるでしょう。混同注意:症状への直接的な対処と、病気の根本原因へのアプローチの優先順位を混同しやすいです。
- 5. 過去の就労経験は患者の職業観やストレス対処パターンを理解する上で有益な情報ではありますが、現在の「上司異動と管理方法変更」という具体的なストレス因子への反応としての適応障害においては、その直接的な原因究明が最優先されるべきであるため、導入時には優先度が低いです。正しくは:長期的なキャリア支援や自己理解を深める段階で役立つ情報であり、導入時に最優先ではありません。選びやすい理由:患者の職業的な背景を包括的に理解しようとするときに、過去の経験も重要だと考えるため、選択肢として魅力的に感じるでしょう。混同注意:現時点の具体的なストレス因子への対応と、患者の包括的な職業歴の評価の優先順位を混同しやすいです。
国試ポイント
適応障害の診断基準と、その治療原則に関する基本的な知識が問われています。特に、適応障害の治療において「ストレス因子の特定とそれへの対処」が極めて重要である点を理解しているかが試されます。導入期のアセスメントで何に焦点を当てるべきか、優先順位を判断する能力が必要です。
混同注意
他の選択肢も患者の生活や精神状態に影響を与える重要な要素であり、長期的な作業療法評価においてはすべて考慮すべき情報です。しかし、問題文が「最優先」と限定しているため、適応障害の直接的な原因であるストレス因子に最も関連する情報(この場合は職場の人的環境)を選ぶ必要があります。他の選択肢は、症状の原因よりも結果や背景、あるいは一般的な精神科評価項目として重要視されやすい点で混同を招きやすいです。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、以下の点に注目してください。 1. 疾患の特性:適応障害のように特定のストレス因子が原因である疾患の場合、そのストレス因子の具体的な内容を問う選択肢が最優先となります。 2. 問題文中のキーワード:「最優先」「まず」「導入時」などの指示語に注目し、現時点での最も緊急性の高い情報や、介入の方向性を決定づける情報を判断します。 3. ストレス因子の具体性:抽象的な情報よりも、問題文に示された具体的な状況(上司の異動、管理方法の変更など)に直接関連する情報が優先されます。
関連知識
DSM-5の適応障害の診断基準、ストレスマネジメント、職場復帰支援(リワーク)、作業療法の評価項目(COPM、MOHOSTなど)、精神科作業療法の初期評価の目的。