自閉症スペクトラム障害児が母親の手をとり目的の物に持っていく行動はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第59回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
クレーン現象は、自閉スペクトラム症(ASD)の子どもによく見られる非言語的なコミュニケーションの形態です。これは、言葉や指差しといった社会的に適切な方法で要求を伝えることが難しいため、他者の手や身体の一部をまるで道具のように使って、自分の欲しいものやしたいことを間接的に示す行動です。この行動は、共感性の困難や社会的相互作用の障害と関連が深いとされています。
選択肢ごとの解説
- 1. 常同運動は、目的なく繰り返される反復的な行動を指し、例えば体を揺らす、手をひらひらさせるなどの行動が含まれます。これは、特定の要求を伝えるために他者の手を利用するクレーン現象とは異なります。正しくは:クレーン現象は、他者の手や身体の一部を道具のように用いて、自分の要求を間接的に伝える行動です。選びやすい理由:自閉スペクトラム症の特性として、常同的な行動が見られることが多いため、関連付けて選びやすいかもしれません。混同注意:常同運動は目的が不明確な反復行動であるのに対し、クレーン現象は物を手に入れるという明確な目的があります。
- 2. 運動チックは、突発的で、不随意かつ反復性の、目的のない運動です。クレーン現象は、子どもが意図的に保護者の手を利用して何かを達成しようとする行動であり、不随意的なチックとは異なります。正しくは:クレーン現象は、他者の手や身体の一部を道具のように用いて、自分の要求を間接的に伝える行動です。選びやすい理由:自閉スペクトラム症と併存する神経発達症の一つとしてチック症候群が知られているため、混同する可能性があります。混同注意:運動チックは不随意で目的がない行動ですが、クレーン現象は特定の目的を持って他者の手を道具として利用する行為です。
- 3. オウム返し(エコラリア)は、他者の発言を繰り返す言語的な行動を指します。設問の行動は、言葉ではなく身体を使った非言語的なコミュニケーションであるため、オウム返しとは異なります。正しくは:クレーン現象は、他者の手や身体の一部を道具のように用いて、自分の要求を間接的に伝える行動です。選びやすい理由:自閉スペクトラム症の子どもの言語特性としてよく知られているため、関連付けて選びやすい可能性があります。混同注意:オウム返しは言語による模倣ですが、クレーン現象は非言語的な要求伝達行動です。
- 4. 正解。クレーン現象とは、自閉スペクトラム症の子どもに特徴的に見られる行動の一つで、自分の要求(例:物を取ってほしい、ドアを開けてほしい)を直接言葉や指差しで伝える代わりに、保護者の手を取ってその物まで誘導したり、目的の動作をさせたりする行動を指します。これは、他者の手を「道具」のように利用していると解釈されます。
- 5. タイムスリップ現象は、過去の出来事が現在であるかのように強く感じられる心理的な体験を指す言葉であり、自閉スペクトラム症の子どもが物を得るために他者の手を用いる行動とは全く関連がありません。主に記憶の錯覚や解離性体験に関連して用いられることがあります。正しくは:クレーン現象は、他者の手や身体の一部を道具のように用いて、自分の要求を間接的に伝える行動です。選びやすい理由:あまり聞き慣れない用語のため、消去法で選ぶ際に、知識不足から誤って選んでしまう可能性があります。混同注意:「タイムスリップ現象」は自閉スペクトラム症の行動特性ではなく、記憶や認識の障害に関連する現象です。
国試ポイント
この問題は、自閉スペクトラム症(ASD)の診断基準や、それに伴う特徴的な行動様式に関する基本的な知識を問うものです。特に、非言語的コミュニケーションの障害や、発達上の特異な行動に関する用語の理解が重要となります。臨床現場で出会う可能性のある行動であるため、正確な用語の知識が求められます。
混同注意
常同運動、運動チック、オウム返しといった他の自閉スペクトラム症に関連する、あるいは鑑別診断上で考慮される行動と混同しやすいです。それぞれの行動の目的性、随意性、形式(言語的か非言語的か)を区別して理解することが重要です。
次に同じ論点が出たら
次回同じ論点が出題される場合、自閉スペクトラム症の子どもの他の行動特性(例:視線合わせの困難、感覚過敏・鈍麻、反響言語、特定の事柄への強いこだわり)の具体的な例とその名称、あるいはそれらの行動に対する作業療法士の介入方法や支援の考え方が問われる可能性があります。
関連知識
自閉スペクトラム症の診断基準(DSM-5など)、社会的コミュニケーションおよび相互作用の障害、限定された反復的な様式の行動・興味・活動。共同注意の獲得の遅れ、指さしの発達など、非言語的コミュニケーションスキルの発達過程に関する知識も関連します。