Brunnstrom法ステージ上肢Ⅲ、手指Ⅳの片麻痺患者に座位で麻痺側上肢の促通練習を行う。上肢Ⅳを目指した課題として適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第53回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
ブルンストロームステージにおいて、上肢Ⅲは共同運動パターンが随意的に開始できる段階であり、手指Ⅳは共同運動から分離したある程度の巧緻性のある動きが可能になる段階です。ステージ上肢Ⅳを目指すということは、共同運動パターンからの分離運動を促す課題が求められます。選択肢1の「机上の積み木を裏返す」動作は、前腕の回内外運動と手指の協調した動きが必要であり、これは共同運動パターンから分離した運動要素を含むため、上肢Ⅳの改善に適切な課題です。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。ブルンストロームステージ上肢Ⅲは共同運動パターンが強く出現し、随意運動の開始が可能な段階です。手指Ⅳは、共同運動から分離した動き(例:側方つまみ、球形つまみ、指伸展など)がある程度可能な段階を指します。積み木を裏返す動作は、前腕の回内外運動と手指の協調した動きが必要であり、これは共同運動パターンから分離した巧緻性の高い動きを促すため、上肢Ⅳを目指す練習として適切です。特に前腕の回内外は共同運動パターンから分離しにくい運動であり、それを意識した課題は上肢Ⅳの改善に繋がります。
- 2. これは上肢の屈曲共同運動パターンに近い動きであり、上肢Ⅲから上肢Ⅳへの改善を目指すには、共同運動から分離した動きを促す必要があります。特に肩甲骨の挙上・外転、肩関節の屈曲・外転、肘関節の屈曲、前腕の回外、手関節の背屈、手指の屈曲といった屈曲共同運動パターンが優勢なステージⅢの患者にとって、この動作は共同運動を強化する可能性があり、分離運動の促進には繋がりません。正しくは:共同運動パターンに囚われない、より分離した運動要素を含む課題(例:前腕回内外、肘伸展位での手首の運動、指の分離運動など)を選択する必要があります。選びやすい理由:物を掴んで移動させる動作であるため、手指の分離運動が含まれるように感じやすいかもしれませんが、お手玉を非麻痺側大腿に置く動き自体は屈曲共同運動パターンに含まれやすく、分離運動の要素が少ないため不適切です。混同注意:共同運動パターンと分離運動の区別が曖昧な場合、単純な到達動作と混同する可能性があります。
- 3. この動きは、主に肩関節の屈曲と肘関節の屈曲を伴う屈曲共同運動パターンに強く該当します。上肢Ⅲの段階では共同運動パターンが優位であるため、この課題は共同運動を強化する可能性があり、上肢Ⅳで求められる共同運動からの分離を促すことにはなりません。正しくは:共同運動パターンに頼らず、特定の関節で分離した動き(例:肘の伸展を伴う動きや前腕の回内外など)を要求する課題が必要です。選びやすい理由:日常生活動作に近く、目標設定として適切に思えるかもしれませんが、ブルンストロームステージの分類においては、共同運動パターンからいかに逸脱できるかが重要視されます。混同注意:機能的な動作の練習と、ブルンストロームステージにおける運動分離の促進の区別がつきにくい場合、誤って選択しやすいです。
- 4. この動作は、肩関節の屈曲または外転、肘関節の伸展を主体とする伸展共同運動パターンに強く該当します。上肢Ⅲの患者は共同運動パターンが強く出現するため、この課題も共同運動の範囲内の動きであり、上肢Ⅳで目指す共同運動からの分離運動の獲得には繋がりません。正しくは:肘伸展位での動きであっても、共同運動パターンを構成する要素(例:肩の屈曲・内転、前腕回内など)以外の運動要素を促す課題が必要です。例えば、肩甲骨の安定化を保ちつつ、前腕の回内外や手指の細かな動きを取り入れるべきです。選びやすい理由:肘を伸ばす動作が含まれるため、分離運動のように感じられるかもしれませんが、肩の屈曲・外転とセットになっていれば、それは伸展共同運動パターンの一部です。混同注意:単に肘が伸展していることと、共同運動パターンから分離していることの区別がつきにくい場合、誤って選択する可能性があります。
- 5. この動作は、肩関節の外転、肘関節の伸展を主体とする伸展共同運動パターンに強く該当します。上肢Ⅲの患者は共同運動パターンが強く出現するため、この課題も共同運動の範囲内の動きであり、上肢Ⅳで目指す共同運動からの分離運動の獲得には繋がりません。正しくは:肘伸展位を保ちつつ、前腕の回内外や手関節・手指の分離運動を促す課題がより適切です。選びやすい理由:肘を伸ばしたままである点や、横に移動させる点が、一見すると共同運動パターンから外れた動きに見えるかもしれません。混同注意:伸展共同運動の構成要素(肩の外転・内転、肘の伸展、前腕の回内、手関節の掌屈、手指の屈曲)を正確に理解していない場合、分離運動と誤認する可能性があります。
国試ポイント
ブルンストロームステージの各段階(特にⅢ、Ⅳ、Ⅴ)でどのような運動パターンが特徴的で、次のステージへ進むためにはどのような分離運動を促す課題が適切かを理解しているか。共同運動パターン(屈曲共同運動と伸展共同運動)の構成要素を正確に把握し、それから逸脱した運動を判断できるかが問われます。
混同注意
日常生活動作の改善目標と、ブルンストロームステージにおける運動分離の促進という治療目標の混同。共同運動パターン内の動きと、共同運動から分離した動きの区別。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、まず患者の上肢と手指のブルンストロームステージを正確に把握し、そのステージの次の段階で達成すべき運動分離の要素を特定します。その後、各選択肢がその分離運動を促すものか、あるいは共同運動パターンに該当するのかを検討します。特に前腕の回内外運動や肘伸展位での手関節・手指の運動は、共同運動からの分離の重要な指標となるため着目します。
関連知識
ブルンストロームステージの各段階の特徴、屈曲共同運動パターンと伸展共同運動パターンの構成要素、各ステージで促通すべき分離運動の具体的な例。