32歳の男性。通勤途中に突然激しい動悸や息苦しさ、めまいとともに、このまま死んでしまうのではないかという強い不安に襲われた。これらの症状は数分で消失したが、その後もたびたび同様の状況に陥った。また同じような強い不安に襲われるのではないかという恐れから、列車や飛行機の1人での利用ができなくなっている。考えられるのはどれか。2つ選べ。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第54回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2・4番
解説
この男性は、突然の激しい動悸、息苦しさ、めまい、死の恐怖といった身体症状と強い不安を伴うパニック発作を繰り返し経験しています。これはパニック障害の典型的な症状です。さらに、将来の発作に対する強い不安(予期不安)から、公共交通機関など特定の場所や状況を避けるようになっているのは、パニック障害に合併しやすい広場恐怖の症状です。したがって、パニック障害と広場恐怖が最も考えられる病態です。
選択肢ごとの解説
- 1. 適応障害は、明確なストレス因子に対して感情面や行動面で過剰な反応が生じるものですが、パニック発作のような身体症状を伴う突発的な強い不安や、それに基づく回避行動が主症状ではありません。ストレス因が取り除かれると症状は軽快します。正しくは:適応障害は、はっきりとしたストレスの原因に反応して生じる心身の不調や行動の変化を指します。パニック発作とは異なる病態です。選びやすい理由:ストレスが関与しているように見えるため、適応障害と混同する可能性があります。混同注意:特定のストレス源に対する反応としての適応障害と、予測不能なパニック発作およびその予期不安からくる回避行動を混同しやすいです。
- 2. 正解。広場恐怖は、パニック発作やそれに類似した症状が生じた際に助けが得られない状況や逃げ出すことが困難な状況を恐れ、そのような場所や状況を回避する疾患です。公共交通機関や広い場所、閉鎖空間での強い不安と回避行動が特徴であり、本症例の「列車や飛行機の人での利用ができなくなっている」という記述に合致します。
- 3. 社交恐怖(社交不安症)は、他者の注目を浴びる状況や社会的な場面で、恥をかいたり批判されたりすることへの強い恐怖や不安を感じる疾患です。本症例の男性が経験しているのは、他者からの評価への恐怖ではなく、パニック発作とそれに伴う身体症状への恐怖およびその回避行動であるため、該当しません。正しくは:社交恐怖は、人前での行為や他人との交流に対する極度の不安と回避行動が特徴です。選びやすい理由:「人混み」というキーワードから社交恐怖を連想する可能性がありますが、本症例の男性の恐怖の対象は他者の評価ではなく、パニック発作が起きることです。混同注意:特定の場面への恐怖という点で広場恐怖と類似しますが、恐怖の対象が「他者の評価」である社交恐怖と、「パニック発作が起きること」である広場恐怖(パニック障害の合併が多い)を混同しやすいです。
- 4. 正解。パニック障害は、予測不能なパニック発作が繰り返し生じ、それに伴って「また発作が起きるのではないか」という予期不安が生じる精神疾患です。本症例の「突然激しい動悸や息苦しさ、めまいとともに、このまま死んでしまうのではないかという強い不安に襲われた」はパニック発作の典型的な症状であり、「その後もたびたび同様の状況に陥った」「また同じような強い不安に襲われるのではないかという恐れ」は予期不安に該当します。
- 5. 急性ストレス反応は、極めて強いストレスを受けた直後(通常は数時間〜数日以内)に生じる一時的な精神症状や身体症状を指し、その症状は通常1ヶ月以内に消失します。本症例は「その後もたびたび同様の状況に陥った」とあり、症状が反復しているため、急性ストレス反応とは診断されません。正しくは:急性ストレス反応は、特定の強いストレス体験直後に生じる一時的な心身の反応で、通常は短期間で収まります。選びやすい理由:「突然」「強い不安」という表現からストレス反応を連想する可能性がありますが、パニック発作と予期不安、広場恐怖を伴う本症例の経過とは異なります。混同注意:「ストレス」という言葉から、パニック発作をストレス反応の一種と捉えてしまう可能性がありますが、パニック障害は特定のストレス因子に直接起因するのではなく、内因的な側面が強い病態です。
国試ポイント
パニック障害の診断基準(パニック発作の症状、予期不安の有無)と、それに合併しやすい広場恐怖の定義(特定の状況や場所での回避行動)を正確に理解しているかを問う問題です。各不安障害の主要な症状と鑑別点を把握していることが重要になります。
混同注意
適応障害、社交恐怖、急性ストレス反応など、他の不安関連障害と混同しやすいですが、それぞれの疾患の診断基準における主要症状、発症機序、および病態の持続期間や特徴的な行動(回避行動の種類など)に着目して鑑別することが求められます。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出た場合、まず「突然の激しい身体症状を伴う強い不安発作(パニック発作)」の有無を確認し、次に「発作がまた起こるのではないかという恐れ(予期不安)」、そして「特定の場所や状況を避ける行動(回避行動)」の有無とその内容(どのような状況を避けているか)を詳細に検討することで、パニック障害と広場恐怖の診断に至る。
関連知識
パニック発作の身体症状(動悸、発汗、震え、息苦しさ、胸痛、吐き気、めまい、しびれなど)、認知症状(現実感消失、離人感、死への恐怖、気が変になる恐怖)、精神症状(強い不安)。パニック障害と広場恐怖の合併率は高く、広場恐怖はパニック障害の経過中に二次的に生じることが多い。DSM-5における不安障害群の分類と診断基準。