17歳の男子。自閉症。自分なりの特定のやり方にこだわり融通が利かず、臨機応変に振る舞えずに失敗体験を積み重ね、自尊感情が著しく低下している。この常同性に関わる特性を踏まえた上での作業療法上の配慮として、最も重要なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第54回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
自閉スペクトラム症の『常同性』や『融通のなさ』という特性は、予期せぬ変化や予定変更に対して強い抵抗や困難を示すことにつながります。この特性を持つ利用者に対して、予定変更を事前に伝達することは、変化に対する心の準備を促し、パニックや混乱、不安の増大を防ぐ上で極めて重要です。これにより、失敗体験の蓄積を防ぎ、自尊感情を保ちながら作業療法に主体的に取り組むことを支援できます。他の選択肢も自閉スペクトラム症への配慮として有効なものを含みますが、設問が提示する『常同性に関わる特性』と『自尊感情の低下』という文脈において、最も直接的かつ重要な配慮は『予定変更の事前告知』であると判断されます。
選択肢ごとの解説
- 1. 自閉スペクトラム症の人にとって、静かな環境は感覚過敏への配慮として重要ですが、本設問の『常同性』や『融通が利かない』といった特性に直接対応する最も重要な配慮ではありません。この選択肢は、一般的に自閉スペクトラム症への配慮として正しい内容ですが、設問が問うている特定の特性(常同性、融通のなさ)への『最も重要な』配慮とは言えません。正しくは:この配慮は感覚過敏や集中困難がある場合に有効です。選びやすい理由:自閉スペクトラム症全般への配慮として正しいと感じるため、選びやすいです。混同注意:感覚過敏への配慮と、常同性・融通のなさへの配慮を混同する可能性があります。
- 2. 具体的で明確な指示は、自閉スペクトラム症の人が指示を理解しやすくするために非常に重要ですが、これも『常同性』や『融通が利かない』という特性に直接的に対応する『最も重要な』配慮ではありません。情報伝達のスタイルに関する配慮です。正しくは:この配慮はコミュニケーションの課題に対して有効です。選びやすい理由:自閉スペクトラム症の人への一般的なコミュニケーションの配慮として正しいと感じるため、選びやすいです。混同注意:コミュニケーションスタイルの課題への配慮と、予定変更への適応の課題への配慮を混同する可能性があります。
- 3. 視覚的な情報提示は、自閉スペクトラム症の人が情報を処理しやすくするために有効な手段ですが、これも『常同性』や『融通が利かない』という特性に直接的に対応する『最も重要な』配慮ではありません。これは情報理解の補助に関する配慮です。正しくは:この配慮は視覚優位な情報処理特性や聴覚情報処理の困難さがある場合に有効です。選びやすい理由:視覚支援が自閉スペクトラム症に広く用いられるため、正しい選択肢だと感じやすいです。混同注意:情報提示の方法の配慮と、状況変化への適応の配慮を混同する可能性があります。
- 4. 作業を段階的に進めることは、複雑なタスクに取り組む際のハードルを下げ、成功体験を積みやすくするために重要ですが、これも『常同性』や『融通が利かない』という特性に直接的に対応する『最も重要な』配慮ではありません。これは作業遂行における課題への配慮です。正しくは:この配慮は作業の分解や手順化が困難な場合に有効です。選びやすい理由:自閉スペクトラム症の人が作業に取り組む際の一般的な支援として正しいと感じるため、選びやすいです。混同注意:作業遂行能力への配慮と、予定変更への適応の課題への配慮を混同する可能性があります。
- 5. 正解。本設問では、利用者が『自分なりの特定のやり方にこだわり融通が利かず、臨機応変に振る舞えずに失敗体験を積み重ね、自尊感情が著しく低下している』とあります。これは『常同性』や『変化への強い抵抗』という自閉スペクトラム症の核となる特性を示しています。そのため、予定変更がある際に事前に伝えることは、変化に対する心の準備を促し、混乱や不安を軽減し、柔軟性のなさに起因する失敗体験を防ぐ上で最も重要な配慮となります。これにより、自尊感情の低下を防ぎ、安定して作業療法に取り組める環境を提供できます。
国試ポイント
自閉スペクトラム症の核となる特性(常同性、変化への抵抗、社会性の困難、コミュニケーションの困難など)を理解し、それぞれの特性に合わせた具体的な作業療法上の配慮を選択できるか、特に最も重要な配慮を識別できるかが問われます。単に一般的な配慮を知っているだけでなく、提示された個別の状況と問題点を踏まえて、優先順位の高い配慮を選び出す応用力が求められます。
混同注意
自閉スペクトラム症への一般的な配慮(例:静かな環境、具体的な指示、視覚支援、スモールステップ)と、特に『常同性』や『変化への適応困難』といった特定の特性への配慮を混同しやすいです。どの配慮も間違いではないため、設問のキーワードを正確に捉え、『最も重要』なものを判断する練習が必要です。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、『最も重要』という限定表現に注意し、設問文中で強調されている利用者の具体的な困難(今回の場合は『こだわり融通が利かず、臨機応変に振る舞えずに失敗体験を積み重ね、自尊感情が著しく低下している』)に最も直接的に対応する選択肢を慎重に選ぶ必要があります。また、他の選択肢がなぜ『最も重要』ではないのかを説明できるようになることも重要です。
関連知識
自閉スペクトラム症の診断基準(DSM-5など)、感覚統合療法、TEACCHプログラム、構造化、ソーシャルストーリーなど。自閉スペクトラム症の中核症状と二次的症状(例:自尊感情の低下)の関係性。ADHDとの鑑別点や併存疾患について。