32歳の女性。8歳の娘が担任の先生の勧めで1週前に精神科を受診し、注意欠如・多動性障害と診断を受けた。放課後等デイサービスを利用することになり、作業療法士がこの女性と面接したところ「集中力が続かないし、物忘れもひどかったけど、まさか自分の子どもが障害児なんて思っておらずいつも叱っていた。お友達ともうまくいっていない状況が続いており、とても心配していた。これからどうしたら良いでしょうか」と話す。この時の作業療法士の対応で最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第55回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
診断告知後の親は、しばしばショック、悲嘆、罪悪感、不安など様々な複雑な感情を抱きます。この段階で最も重要なのは、作業療法士が親の感情に寄り添い、共感的に傾聴することで、親が安心して感情を表現できる場を提供することです。これにより、信頼関係が構築され、その後の情報提供や具体的な支援へとスムーズに移行することができます。
選択肢ごとの解説
- 1. 母親は自身の対応を後悔しており、自己批判的な感情を抱いている可能性が高いです。この段階で不適切な対応を指摘することは、母親の罪悪感や不安を増大させ、作業療法士との信頼関係を損なうことにつながります。正しくは:母親の自己批判的な感情を理解し、まずは受容的な姿勢で話を聞くべきです。その上で、今後の娘さんとの関わり方について具体的な支援策や情報提供を行うことが建設的です。選びやすい理由:子どもへの適切な関わり方を教えるべきだと感じるかもしれませんが、まずは母親の感情に寄り添うことが先決です。混同注意:『教育的指導』と『心理的支援』の優先順位を混同しやすいです。緊急性が高いのは母親の心理的安定です。
- 2. 情報提供は重要ですが、母親は現状で強い不安や混乱を抱えています。この段階で一方的に専門的な知識を詰め込むと、情報過多となり、かえって混乱を招く可能性があります。また、母親の感情に寄り添うことが先決です。正しくは:まずは母親の感情を受け止め、その後に、母親が知りたいと感じたタイミングや、心理的に落ち着いた状況で、障害特性について分かりやすく段階的に説明する必要があります。選びやすい理由:障害への理解を深めることは支援の第一歩だと考えがちですが、心理的準備ができていない状態では効果的ではありません。混同注意:『情報提供』と『感情受容』のどちらを優先すべきかを混同しやすいです。特に診断直後の混乱期には感情受容が重要です。
- 3. ピアサポートは有効な支援の一つですが、診断直後で母親が感情的に不安定な状態では、まだ適切なタイミングではありません。また、個々の親の感情や状況によって、他者との交流が負担になることもあります。正しくは:母親の不安が一定程度軽減され、自ら情報や共感を求め始めた段階で、ピアサポートの選択肢を提案することが適切です。選びやすい理由:孤立感を解消し、情報交換の場を提供することは良いことだと考えがちですが、タイミングが重要です。混同注意:『有効な支援策』と『支援を提供する適切なタイミング』を混同しやすいです。
- 4. 注意欠如・多動性障害は発達障害の一つであり、完全に「治る」という表現は適切ではありません。症状の軽減や特性との付き合い方を学ぶことは可能ですが、根治するものではないため、このような安易な発言は誤解を招き、後の不信頼感につながります。正しくは:障害の特性を理解し、適切な支援や環境調整を行うことで、本人が生活しやすくなること、社会適応能力を高めることができるといった現実的で希望のある見通しを伝えるべきです。選びやすい理由:母親の不安を和らげたい一心でポジティブな情報を伝えたくなりますが、現実離れした情報は不適切です。混同注意:『希望を与える言葉』と『根拠に基づいた正確な情報』を混同しやすいです。
- 5. 正解。母親は「まさか自分の子どもが障害児なんて思っておらずいつも叱っていた」「とても心配していた。これからどうしたら良いでしょうか」と語っており、診断に対する戸惑い、これまでの対応への罪悪感、今後の育児への強い不安を抱いています。このような状況では、まずその感情を否定せずに傾聴し、共感的に受け止めることが、母親が心理的に安定し、次のステップに進むための信頼関係を築く上で最も重要です。正しくは:この対応は適切です。
国試ポイント
発達障害の診断を受けた子どもとその家族に対する作業療法士の初回面接時の適切な対応(特に心理的支援の優先順位)が問われる問題です。情報提供や具体的な支援の前に、まずは親の感情を受け止めることの重要性を理解しているかが鍵となります。
混同注意
情報提供やピアサポート、改善の見込みを伝えること自体は支援として有効ですが、診断直後の感情が不安定な状態の親に対して、どのタイミングで何を優先すべきかという点で迷いやすいです。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、診断告知直後の親の心理状態を深く理解し、その混乱期に作業療法士として何が最も必要とされている支援か(感情受容が最優先か、情報提供が先か、など)を判断する能力が問われるでしょう。また、障害特性に関する正確な知識と、それを伝えるタイミングの適切性も重要視されます。
関連知識
発達障害児の親への心理的支援、受容と傾聴の重要性、悲嘆のプロセス、告知後の心理状態、家族支援の原則。