60歳の男性。COPDが進行し在宅酸素療法が導入された。酸素流量は労作時2L/分である。入浴動作の指導で正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第56回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
COPD患者の入浴指導においては、動作に伴う酸素消費量の増大や呼吸困難の悪化を防ぐことが最重要課題です。片手での洗髪は、上肢の挙上を最小限に抑え、体幹の安定性を保ちながら動作負荷を軽減できるため、呼吸筋への負担を減らし、安全に入浴を行うための有効な手段です。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。COPD患者の入浴指導では、呼吸苦を軽減し酸素消費量を抑えることが重要です。片手での洗髪は、両手を使うよりも上肢の挙上や動作に伴う運動負荷を軽減でき、呼吸筋への負担を減らすため正しい対応です。
- 2. COPD患者が動作を素早く行うと、急激な酸素消費量の増加と呼吸困難の増悪を招きます。正しくは:動作はゆっくりと、自分のペースに合わせて行うように指導します。必要に応じて動作の途中で休憩を取り入れることも重要です。選びやすい理由:早く終わらせれば楽になる、と短絡的に考えてしまうかもしれませんが、COPD患者にとっては逆効果です。混同注意:健常者における効率的な動作と混同しやすいですが、呼吸器疾患を持つ患者には当てはまりません。
- 3. 浴槽に肩まで深く浸かると、水圧により胸郭が圧迫され、呼吸運動が制限されて呼吸苦が増強する可能性があります。正しくは:浴槽に浸かる際は、胸より下の半身浴程度に留めるか、湯量を少なめにして胸郭への圧迫を避けるように指導します。選びやすい理由:全身が温まってリラックスできる、と一般的に考えられるため、誤って選択しがちです。混同注意:一般的な入浴方法や、水圧がマッサージ効果をもたらすといった認識と混同しやすいです。
- 4. 椅子の座面を低くすると、立ち座りの動作や体を洗う際に前屈姿勢になりやすく、胸郭が圧迫されて呼吸筋への負担が増大し、呼吸困難を誘発する可能性があります。正しくは:洗い場の椅子は、膝や股関節が90度程度に保たれ、立ち座りが楽に行えるよう、座面をやや高めに調整することが適切です。選びやすい理由:低い椅子の方が安定感がある、と考えるかもしれませんが、動作時の負担を考慮すると不適切です。混同注意:安定性を重視するあまり、低い椅子を選びがちですが、COPD患者の呼吸負担軽減には高めの椅子が有効です。
- 5. 在宅酸素療法中のCOPD患者にとって、入浴動作は酸素消費量が増大する活動であり、酸素吸入は継続する必要があります。経鼻カニューレを外すと、酸素飽和度が低下し、呼吸困難やその他の合併症のリスクが高まります。正しくは:入浴中も経鼻カニューレは装着し続け、必要に応じて酸素流量の調整も検討します。シャワーヘッドの工夫などで濡れないように配慮します。選びやすい理由:濡れるのを避けたい、または邪魔になると感じるため、外してもよいと考えてしまうかもしれません。混同注意:酸素を必要とする状況の理解が不足している場合、一時的な中断を許容してしまう可能性があります。
国試ポイント
COPD患者の日常生活活動(ADL)指導、特に酸素消費量が増大する入浴時の注意点が問われています。呼吸困難の増悪因子を理解し、それを避けるための具体的な方法を選択できるかどうかがポイントです。
混同注意
一般的な入浴方法と、疾患を持つ患者の安全を考慮した特別な入浴方法の区別が問われます。特に、『素早い動作』や『肩まで浸かる』、『低い椅子』といった、健常者には問題ない、あるいは推奨される可能性のある選択肢が誤りとなる点が引っ掛けになりやすいです。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、他のADL(更衣、排泄、食事など)におけるCOPD患者への指導内容、あるいは他の呼吸器疾患(間質性肺炎など)患者への入浴指導の違い、さらに具体的な呼吸困難時の対処法などが問われる可能性があります。
関連知識
COPDにおける呼吸リハビリテーションの原則、酸素療法の適応と管理、ADL指導の基礎知識(省エネルギー動作、体位変換、環境整備)、水分摂取や皮膚ケアなどの入浴に伴う一般的な注意点も関連します。