椅子座位でテーブル上にあるコップにゆっくりと手を伸ばしてつかむ作業の図を示す。この時の肩関節と肘関節の運動に関与される筋と収縮様式との組合せで正しいのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第56回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
コップに手を伸ばす動作は、肩関節の屈曲と外転、肘関節の伸展が主な運動となります。肩関節の屈曲の主動筋は三角筋前部線維であり、この動作では筋肉が短縮しながら力を発揮する求心性収縮を行います。したがって、三角筋前部線維と求心性収縮の組み合わせが正しいです。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。コップに手を伸ばす動作では、肩関節は屈曲し、同時に外転する動きを伴います。三角筋前部線維は肩関節の屈曲と内旋に、中部線維は外転に、後部線維は伸展と外旋に作用します。コップへ手を伸ばす動作で肩を前に出す動きは肩関節の屈曲が主であるため、三角筋前部線維が主に作用し、かつ筋肉が短縮する求心性収縮を行います。
- 2. 三角筋後部線維は主に肩関節の伸展と外旋に作用します。正しくは:コップへ手を伸ばす動作(肩関節屈曲・外転)では、三角筋後部線維は伸展作用があるため、メインの作用筋ではありません。もし作用するとしても、伸展方向への動きを制御するために遠心性収縮を起こす可能性はありますが、求心性収縮で主要な動きを生み出すことはありません。選びやすい理由:三角筋は肩の主要な筋肉であり、手を伸ばす動きに広範に関与するイメージから選びやすいかもしれません。混同注意:三角筋の各線維(前部・中部・後部)の作用の違いや、伸展と屈曲の動きを混同しやすいです。
- 3. 上腕二頭筋は主に肘関節の屈曲と前腕の回外に作用します。正しくは:コップに手を伸ばす動作は、一般的に肘関節が伸展する動きを含みます。したがって、上腕二頭筋が求心性収縮をする場面ではありません。むしろ、肘伸展の動きを制御するために遠心性収縮をする可能性はあります。選びやすい理由:上腕二頭筋は日常生活動作で頻繁に使われる筋肉であるため、直感的に選んでしまうことがあります。混同注意:肘関節の屈曲と伸展の動き、およびそれに関わる主動筋・拮抗筋を混同しやすいです。
- 4. 上腕三頭筋は主に肘関節の伸展に作用します。正しくは:コップに手を伸ばす動作では、肘関節は伸展します。上腕三頭筋は肘伸展の主動筋であるため、この局面では求心性収縮を行います。遠心性収縮は、筋肉が伸ばされながら力を出す収縮様式であり、例えば重いものをゆっくり下ろす際などに起こります。選びやすい理由:「ゆっくりと手を伸ばす」という表現から、制御しながら伸ばす=遠心性収縮という誤った連想をしてしまう可能性があります。混同注意:求心性収縮と遠心性収縮の定義、および主動筋の作用を混同しやすいです。また、ゆっくりとした動きが必ずしも遠心性収縮を意味するわけではない点を誤解しやすいです。
- 5. 腕橈骨筋は主に肘関節の屈曲と、前腕を中間位から回内または回外する際に作用します。正しくは:コップに手を伸ばす動作(肘伸展)においては、腕橈骨筋が主動筋として求心性収縮を行うことはありません。肘関節をゆっくり伸ばす局面では、上腕三頭筋が求心性収縮をします。選びやすい理由:腕橈骨筋も肘関節に作用する筋肉であるため、選択肢としてあり得ると思ってしまうかもしれません。混同注意:上腕二頭筋、上腕三頭筋、腕橈骨筋といった肘関節周辺の筋肉のそれぞれの主たる作用を混同しやすいです。
国試ポイント
日常生活動作における基本的な関節運動と、それに関与する主要な筋肉(主動筋)および収縮様式を正確に理解しているかが問われます。特に、『ゆっくりと』という修飾語に惑わされず、主たる運動方向と筋肉の作用を見極める能力が必要です。
混同注意
各関節の主動筋と拮抗筋の混同、および求心性・遠心性・等尺性収縮の定義の誤解。特に、「ゆっくりと」という表現が与えられた際に、安易に遠心性収縮と判断してしまう間違いが多い。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出題された場合、まず動作の主要な関節運動(方向)を特定し、次にその運動の主動筋は何か、最後にその運動で主動筋がどのような収縮様式をとるかを順に判断する。
関連知識
肩関節の屈曲・伸展・外転・内転の主動筋、肘関節の屈曲・伸展の主動筋、そして各筋肉の収縮様式の定義と具体例(例:重力に抗して持ち上げるのが求心性、重力に逆らってゆっくり下ろすのが遠心性)。