67歳の女性。認知症。2年前ごろから身だしなみに気を遣わずに出かけるようになった。次第に同じ食事メニューを繰り返し作る、日常会話で相手の言葉をオウム返しにする、買い物をしても代金を払わず、とがめられても気にしないといったことが多くなったため、家族に付き添われて精神科を受診し入院した。作業療法が開始された。この患者にみられる特徴はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第53回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
前頭側頭型認知症の患者は、時間や状況に合わせた行動を組織化する能力が低下し、特定の刺激や環境に反応して反復的な行動や活動パターンを示す「時刻表的活動パターン」が現れることがあります。これは、プランニングや抑制機能の障害によるものです。
選択肢ごとの解説
- 1. 転倒しやすい症状は、レビー小体型認知症(DLB)や進行性核上性麻痺などで多く見られる症状であり、前頭側頭型認知症の主要な初期症状ではありません。正しくは:転倒しやすいのは、レビー小体型認知症や進行性核上性麻痺の典型的な症状です。選びやすい理由:高齢者全般に転倒リスクがあるため、認知症患者にも見られる症状として選択しやすい可能性があります。混同注意:レビー小体型認知症やパーキンソン病の運動症状。
- 2. 情動失禁は、脳血管性認知症や多発性硬化症などで見られる症状であり、感情コントロールが困難になる状態を指しますが、本症例の前頭側頭型認知症の典型的な症状とは異なります。前頭側頭型認知症ではむしろ感情鈍麻が見られることが多いです。正しくは:情動失禁は、脳血管性認知症や多発性硬化症などでより頻繁に見られます。前頭側頭型認知症では感情鈍麻が見られやすいです。選びやすい理由:認知症患者では感情の変化が見られることがあり、情動失禁もその一つと誤解されやすいためです。混同注意:感情のコントロール障害全般、特に脳血管性認知症。
- 3. 手続き記憶(自転車に乗るなど、無意識に行われる技能記憶)は、前頭側頭型認知症では比較的保たれることが多いです。アルツハイマー型認知症の方がエピソード記憶の障害が顕著です。正しくは:手続き記憶は、前頭側頭型認知症では比較的保たれます。エピソード記憶の障害が顕著なのはアルツハイマー型認知症です。選びやすい理由:認知症=記憶障害という一般的な認識から、手続き記憶も損なわれると推測しやすいためです。混同注意:エピソード記憶や意味記憶といった陳述記憶の障害。アルツハイマー型認知症の記憶障害。
- 4. 正解。「同じ献立の食事を何度も作る」「会話中に相手の言葉を繰り返す(エコラリア)」「店で品物を取っても支払いをせず、注意されても気にする様子がない(脱抑制、感情鈍麻)」といった行動は、前頭側頭型認知症に特徴的な常同行動や脱抑制を示しており、これらは時刻表的活動パターンの一部として解釈できます。選びやすい理由:症例の行動がまさにこの症状を説明しているため、直接的に合致すると判断できます。混同注意:他の認知症の行動・心理症状(BPSD)。ただし、FTDの行動症状はBPSDの中でも特に常同性や脱抑制が目立ちます。
- 5. 「部屋にヘビがいる」といった言動は、幻覚や妄想を指し、レビー小体型認知症やアルツハイマー型認知症の後期に見られることが多い症状です。前頭側頭型認知症では、幻覚や妄想はあまり典型的ではありません。正しくは:幻覚や妄想は、レビー小体型認知症やアルツハイマー型認知症の後期に多く見られます。選びやすい理由:認知症の症状として幻覚や妄想が一般的に知られているため、選択肢として選びやすい可能性があります。混同注意:レビー小体型認知症の幻視、アルツハイマー型認知症の妄想症状。
国試ポイント
前頭側頭型認知症(FTD)の中核症状と周辺症状を理解しているか、また他の認知症型との鑑別点について問われています。
混同注意
他の認知症型(アルツハイマー型、レビー小体型など)の症状との混同。特にアルツハイマー型認知症は記憶障害が主ですが、FTDは行動変容が初期から顕著です。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出た場合、初期からの人格変化、脱抑制(万引きなど)、常同行動(同じ献立、相手の言葉の繰り返し)、感情鈍麻といった行動面の変化に注目して判断します。
関連知識
前頭側頭型認知症の病型には、行動型前頭側頭型認知症(bvFTD)と意味性認知症(SD)などがあり、本症例はbvFTDの特徴を強く示しています。bvFTDでは、初期から人格変化、脱抑制、常同行動が目立ちます。手続き記憶は比較的保たれることが多いです。