22歳の女性。幼少期から聞き分けの良い子だと両親に評価されてきた。完全主義であり、社交的ではないものの仲の良い友人はいた。中学生の時に自己主張をして仲間はずれにされ、一時的に保健室登校になったことがある。その後は優秀な成績で高校、大学を卒業したが、就職してからは過剰適応によるストレスで過食傾向になった。体重増加を同僚に指摘されてから食事を制限し、身長は170 cmだが体重を45 kg未満に抑えることにこだわるようになった。この患者への外来での作業療法士の関わりとして最も適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第55回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
この患者は完璧主義であり、過去に失敗や自己主張によって孤立した経験があることから、失敗への恐れや過剰適応によるストレスを抱えています。作業療法では、安心して様々な作業活動に挑戦し、失敗を恐れずに取り組める環境を提供することが重要です。失敗しても許容される、再挑戦できるというメッセージは、患者の自己肯定感を高め、適応的な対処能力を育む上で最も適切な介入となります。
選択肢ごとの解説
- 1. 摂食障害の背景に家族関係が影響することはありますが、初回の関わりや初期段階でいきなり幼少期の母子関係のようなデリケートな領域に深く触れるのは、患者の心理的抵抗が強く、関係構築の妨げとなる可能性があります。まずは現在のストレス要因や摂食行動、作業遂行上の問題に焦点を当て、信頼関係を築くことが優先されます。正しくは:まずは現在の生活状況やストレス要因、摂食行動に関する具体的な困りごとから話を始め、患者が安全だと感じられる話題から徐々に信頼関係を構築する。選びやすい理由:摂食障害の背景には生育歴や家族関係が深く関わることが多いため、重要性を感じて選びたくなる。混同注意:心理的背景の理解の重要性と、介入のタイミングや深さの適切性。
- 2. 作業療法の目的は、患者が治療に主体的に参加するために、初回からある程度明確に伝える必要があります。半年間もかけずに、患者が理解できる言葉で、現在の課題と作業療法の関連性を初期段階で共有することが重要です。ただし、一度に全てを説明するのではなく、その都度理解度に合わせて補足説明を繰り返すことは適切です。正しくは:作業療法の目的は、初回から患者に分かりやすい言葉で簡潔に伝え、必要に応じて繰り返し説明や補足を行う。選びやすい理由:患者の状況を考慮して焦らずに関わるという姿勢は理解できるが、目的共有は治療の初期段階から不可欠である。混同注意:患者に寄り添う姿勢と、治療の透明性・方向性の明確化の必要性。
- 3. この患者はすでに「体重を45kg未満に抑えることにこだわる」状態であり、体重への執着が問題の本質です。体重測定の結果をグラフ化することは、その執着をさらに強化し、摂食障害の症状を悪化させる可能性が高いです。作業療法士は、体重や外見への固執から注意をそらし、自己肯定感や自己効力感を高める作業活動への参加を促すべきです。正しくは:体重や外見ではなく、興味のある活動や達成感を感じられる作業に焦点を当て、自己肯定感を育む支援を行う。選びやすい理由:客観的なデータを記録・管理することは一般的によい支援に思えるが、摂食障害患者の場合、その客観的データへの固執自体が問題であるため不適切。混同注意:客観的データを用いた支援の有効性と、摂食障害における特定のデータの取り扱いへの配慮。
- 4. 正解。患者は「完璧主義」の傾向があり、過去に「自己主張をして仲間はずれにされた」経験から、失敗や他者からの評価を過度に恐れる可能性があります。また「過剰適応によるストレス」を抱えていることから、失敗を恐れて新しい作業に取り組めなかったり、過度に自分を追い込んだりする危険性があります。作業療法において、安心して様々な活動に挑戦し、たとえ失敗してもそれが学びとなり、再挑戦できるという安全な環境を提供することは、自己肯定感を育み、適応的な行動パターンを獲得する上で極めて重要です_。正しくは:この選択肢は正しいので修正の必要はありません。
- 5. 患者が作成した作品の背景にある深層心理を分析し、それを一方的に患者に伝えることは、患者を分析の対象と見なし、患者の主体性や自己理解のプロセスを阻害する可能性があります。また、患者が受け入れがたい内容であった場合、治療関係を損ねる恐れもあります。分析は作業療法士が行いつつも、患者自身が作品を通して自己を省察し、気づきを得られるような関わりが望ましいです。正しくは:患者自身が作品を通して自己を省察し、気づきを得られるよう、作品について患者の感じたことや考えを引き出すような対話を行う。選びやすい理由:作業活動を通して患者の心理状態を深く理解しようとする姿勢は良いが、それを分析して一方的に伝えるという方法が不適切。混同注意:患者の作品から得られる情報への理解と、それを患者にフィードバックする方法の適切性。
国試ポイント
摂食障害や完璧主義傾向を持つ患者への作業療法士の基本的な関わり方、特に信頼関係構築、自己肯定感の向上、心理的安全性確保の重要性が問われています。摂食障害患者への不適切な介入(体重への固執を強化するなど)を見抜く知識も必要です。
混同注意
患者の背景情報を深掘りすること(幼少期の母子体験)や、客観的データを活用すること(体重のグラフ化)は一見すると良い関わりに思えるが、本ケースでは患者の心理的特性や病態を悪化させる可能性があり、不適切である点。
次に同じ論点が出たら
同様の事例が出題された場合、患者の性格特性(例:完璧主義、自己肯定感の低さ)や過去の経験(例:失敗体験、対人関係の課題)から、どのような心理的サポートが必要かを判断できるか。特に、症状そのもの(例:体重)に直接介入するのではなく、その背景にある心理的要因や行動パターンへの介入が適切であるかを判断する視点が重要になります。
関連知識
摂食障害の病態と心理的特徴(完璧主義、自己評価の低さ、コントロール欲求など)。作業療法における心理的アプローチの原則(共感、傾聴、支持、リフレーミング)。安全な治療環境の提供、スモールステップでの成功体験の積み重ねの重要性。