48歳の男性。脳梗塞後の右片麻痺。左利き。発症から5か月経過。Brunnstrom法ステージは上肢、下肢ともにⅢ。関節可動域制限は認めず、座位バランスは良好である。短下肢装具とT字杖で歩行は自立している。この患者に対する自助具で最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第58回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
この利用者(48歳左利き男性、右片麻痺、BrunnstromステージⅢ)は右手の機能が不十分であるため、左手で操作できる自助具が必要です。選択肢4の卓上爪切りは、土台に固定されており、左手でテコを操作することで右手の爪切りが容易に行えます。これにより、脳梗塞による右片麻痺のため困難な手指の細かい操作を要する爪切りを、健側である左手を使って安全かつ自立して行うことが可能になります。
選択肢ごとの解説
- 1. 選択肢1は足洗いブラシで、足を乗せて擦るタイプです。本症例は右片麻痺ですが、座位バランスは良好で、足の関節可動域制限もなく、足の衛生管理において特に困難を示す記述はありません。上肢の機能不全を補うものではありません。正しくは:この利用者には上肢の機能障害を補う自助具が必要です。選びやすい理由:一見すると入浴時の衛生管理に役立つように見えるかもしれませんが、本症例の主たる問題は右片麻痺による上肢機能の低下であり、足の衛生に関する具体的な問題は提示されていません。混同注意:全身の清潔ケアに関する自助具と、上肢機能障害に特化した自助具。
- 2. 選択肢2は柄付きコームです。右上肢のBrunnstromステージⅢは随意運動が可能であるものの、肩や肘の共同運動が主体で、細かい手の動きやリーチ動作には制限がある可能性がありますが、左手は健側であり、髪をとかす動作は左手で行うか、健側の肩関節や肘関節の運動範囲を考慮すれば既存のコームでも対応可能な場合が多いです。また、この自助具が最も優先されるとは言えません。正しくは:この利用者にとってより緊急性が高く、自立を助ける自助具を選択すべきです。選びやすい理由:右片麻痺による上肢機能低下のため、リーチ動作が必要な整髪動作に困難が生じると誤解しやすいです。しかし、この利用者(左利き)は左手でコームを使うことで整髪は可能です。混同注意:一般的に上肢機能が低下した患者に用いられる自助具全般と、本症例の左利きという特性を考慮した最適な自助具。
- 3. 選択肢3はボタンエイドです。右片麻痺の患者がボタンをかける際に有用な自助具ですが、本症例の「最も適切な」自助具を選ぶ問題において、ボタンエイドが最も優先されるとは限りません。特に左利きであるため、左手でボタンをかけることは比較的容易な場合もあります。正しくは:この利用者にとってより自立度向上に貢献する、左手で確実に操作できる自助具が適切です。選びやすい理由:片麻痺患者のADLで更衣動作、特にボタン掛けに困難が生じることが多いため、選びやすい選択肢です。混同注意:一般的な片麻痺患者の自助具と、本症例の左利きという個別性を考慮した最適な自助具。
- 4. 正解。選択肢4は卓上爪切りです。土台に固定されており、片手(健側の左手)でテコを操作することで、麻痺側の右手や健側の左手の爪切りも安全かつ容易に行えます。脳梗塞による右片麻痺のため右手の細かい操作が困難な利用者にとって、左手だけで爪切りが自立できることは衛生的にも、QOL向上の点からも非常に重要です。爪切りは危険を伴うため、安定して片手で操作できるこの自助具は「最も適切」と言えます。選びやすい理由:片手で安全に操作できる点が明確であるため。混同注意:一般的な爪切りと、片手で操作可能な卓上爪切りの違い。
- 5. 選択肢5はソックスエイドです。右片麻痺による下肢の運動制限がありますが、本症例は短下肢装具とT字杖を使用して歩行自立しており、BrunnstromステージもⅢであることから、左手でソックスエイドを操作して靴下を履く動作は不可能ではありません。しかし、足関節の可動域制限はないため、装具を装着しない状態であれば、ある程度の体幹バランスがあれば自立して靴下を履ける可能性もあります。また、卓上爪切りと比較して、QOL向上や安全性の観点から「最も適切」とは言い切れません。正しくは:上肢の麻痺に起因する手指の巧緻性低下を補う自助具、特に安全性を確保し自立を促す卓上爪切りがより適切です。選びやすい理由:右片麻痺のため下肢の装具装着や靴下を履く動作に困難があると考えられ、選びやすいです。混同注意:下肢の麻痺によるADL困難を補う自助具と、上肢の麻痺によるADL困難を補う自助具。
国試ポイント
片麻痺患者の残存機能(特に利き手と麻痺側)を評価し、ADLの自立を支援する適切な自助具を選択できるか。
混同注意
麻痺側でない方の手で操作する自助具と、麻痺側でも操作可能な自助具、または両手を用いる自助具を混同しやすい。本症例は右片麻痺で左利きのため、左手で操作できる自助具が最も適切です。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が出た場合、患者の利き手、麻痺の部位と程度(特にBrunnstromステージの手指の機能)、ADL上どの動作に最も困っているか(今回は利き手での爪切り)を詳細に確認し、その制約を補う自助具を選択します。
関連知識
片麻痺患者のADL支援には、食事(自助食器、ユニバーサルカフ)、更衣(ボタンエイド、ファスナーエイド)、整容(柄付きブラシ、プッシュ式歯磨き粉)など、様々な自助具があります。患者の麻痺の程度、利き手、生活習慣を総合的に判断し、最も効果的な自助具を選ぶことが重要です。また、BrunnstromステージⅢは共同運動パターンが出現し随意運動は可能であるものの、個別の動きはまだ難しく、手指の細かい操作は困難であることが多いです。