向精神薬内服中の精神疾患患者に錐体外路症状、無月経、体重増加、起立性低血圧が同時にみられた。最も疑われる原因薬剤はどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第55回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
この患者さんにみられる錐体外路症状、無月経、体重増加、起立性低血圧は、抗精神病薬、特にドパミンD2受容体遮断作用やα1受容体遮断作用、プロラクチン分泌促進作用を持つ薬剤に特徴的な副作用の組み合わせです。錐体外路症状はドパミンD2受容体遮断、無月経は高プロラクチン血症(ドパミンD2受容体遮断によるプロラクチン上昇)、体重増加は代謝系への影響、起立性低血圧はα1受容体遮断によって引き起こされます。
選択肢ごとの解説
- 1. 抗酒薬はアルコール依存症の治療に用いられ、ジスルフィラム-アルコール反応による悪心、嘔吐、動悸などの症状が主な副作用です。錐体外路症状や内分泌系の副作用(無月経、体重増加)は通常引き起こしません。正しくは:錐体外路症状、無月経、体重増加、起立性低血圧は抗精神病薬の主な副作用です。選びやすい理由:精神疾患患者に用いられる薬なので、薬の種類を混同する可能性があります。混同注意:他の精神科領域で用いられる薬剤と混同しやすいです。
- 2. 抗うつ薬の主な副作用には、消化器症状(悪心、嘔吐)、口渇、便秘、性機能障害、眠気、不眠、セロトニン症候群などがあります。錐体外路症状は稀ですが起こりうるものもあります。無月経や顕著な体重増加は一般的ではありません。起立性低血圧は特に三環系抗うつ薬で見られますが、他の症状との組み合わせは典型的ではありません。正しくは:この症状群は抗精神病薬に特徴的なものです。選びやすい理由:起立性低血圧は抗うつ薬でも見られるため、選択肢として魅力的です。また、抗うつ薬にも体重増加や性機能障害の報告があるため、一部の症状に引きずられる可能性があります。混同注意:抗うつ薬の副作用である起立性低血圧や体重増加と、抗精神病薬の副作用を混同することがあります。
- 3. 抗不安薬(特にベンゾジアゼピン系)の主な副作用は、鎮静、眠気、ふらつき、運動失調、依存性などです。錐体外路症状、無月経、体重増加、起立性低血圧が同時に起こることは通常ありません。正しくは:抗不安薬は、これらの症状を引き起こすことは稀です。この症状群は抗精神病薬に特徴的です。選びやすい理由:精神疾患患者に広く使われる薬であり、精神科領域の薬という点で混同しやすいです。混同注意:抗不安薬の鎮静作用によるふらつきと、錐体外路症状の運動障害を混同する可能性があります。
- 4. 正解。抗精神病薬、特に定型抗精神病薬や一部の非定型抗精神病薬は、ドパミンD2受容体遮断作用により錐体外路症状(パーキンソニズム、アカシジア、ジスキネジアなど)を引き起こします。また、プロラクチン分泌促進作用による高プロラクチン血症が原因で無月経や乳汁分泌が見られます。食欲亢進や代謝系の変化により体重増加もよく起こる副作用です。さらに、α1受容体遮断作用により起立性低血圧も頻繁に認められます。これらすべての症状が同時に見られるのは、抗精神病薬の副作用として非常に典型的です。
- 5. 抗てんかん薬の副作用は薬剤の種類によって多岐にわたりますが、一般的には鎮静、眠気、ふらつき、消化器症状、薬疹、肝機能障害などが挙げられます。この問題で示された錐体外路症状、無月経、体重増加、起立性低血圧がすべて同時に起こることは、抗てんかん薬では典型的ではありません。特に高プロラクチン血症による無月経は稀です。正しくは:抗精神病薬がこれらの副作用を同時に引き起こす典型的な薬剤です。選びやすい理由:一部の抗てんかん薬は気分安定薬としても使用されるため、精神疾患患者に処方される可能性があります。また、一部の抗てんかん薬(バルプロ酸など)は体重増加の副作用があります。混同注意:気分安定薬としての抗てんかん薬の適用と、その副作用を抗精神病薬の副作用と混同する可能性があります。
国試ポイント
精神科領域の薬剤、特に向精神薬の副作用に関する知識が問われています。複数の副作用をまとめて提示し、どの薬剤に特徴的なものかを識別する能力が必要です。各薬剤の作用機序とそれに関連する副作用を正確に理解しているかが鍵となります。
混同注意
各向精神薬が持つ個々の副作用(例:抗うつ薬の起立性低血圧、抗てんかん薬の体重増加)と、抗精神病薬に特徴的な副作用の"組み合わせ"を混同しやすい。特に、多剤併用が前提となる精神科治療においては、複数の薬剤の副作用が複雑に絡み合うため、各薬剤に特有の症状群を把握することが重要です。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出題された場合、選択肢に複数の精神科薬が含まれることを想定し、各薬剤の代表的な副作用を一覧で確認し、症状の"組み合わせ"に注目して判断する。特に、錐体外路症状や高プロラクチン血症による内分泌系の症状は抗精神病薬に非常に特異的であるため、これらが含まれる場合は優先的に抗精神病薬を疑う。
関連知識
抗精神病薬の分類(定型/非定型)、各薬理作用(ドパミンD2受容体遮断、セロトニン5-HT2A受容体遮断、α1受容体遮断、ヒスタミンH1受容体遮断、ムスカリンM1受容体遮断など)とそれに対応する副作用(錐体外路症状、高プロラクチン血症、鎮静、体重増加、起立性低血圧、口渇、便秘、尿閉など)。また、各副作用に対する対策(抗パーキンソン病薬の併用など)も関連知識として重要です。