60歳の女性。右中大脳動脈閉塞による脳梗塞。左片麻痺や感覚障害は重度で、車椅子座位では頸部右回旋がみられる。また、食事時にはしばしば左側の見落としがみられる。机上での模写検査の結果を図に示す。結果の解釈として最も適切なのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
図の模写検査では、中央の図形は描けているものの、左側の図形が完全に欠落していることから、左半側空間無視(半側無視)が示唆されます。また、問題文には「食事時にはしばしば左側の見落としがみられる」とあり、これは日常場面での半側無視の徴候です。選択肢2の「左方探索」は、左側の対象物を積極的に探しに行こうとする行動であり、半側無視の存在を示唆する観察所見の一つです。
選択肢ごとの解説
- 1. 本症例では記憶障害を示す具体的な所見はありません。模写検査の結果は空間認知の障害を示しており、記憶障害とは異なります。正しくは:記憶障害を示す場合は、例えば物品呼称検査や遅延再生検査などの結果が異常となる。選びやすい理由:脳梗塞は広範囲な機能障害を引き起こす可能性があるため、記憶障害も疑いたくなるかもしれませんが、問題文の所見からは直接的に記憶障害を示唆する情報はありません。混同注意:失語症や認知症による記憶障害。
- 2. 正解。模写検査で左側の図形が描けないこと、「食事時にはしばしば左側の見落としがみられる」という記載は、左半側空間無視の典型的な症状です。左方探索は、左半側空間無視を克服しようとする、あるいはその存在を示す行動パターンの一つです。患者が意識的に左側を見ようと努力している可能性もあります。選びやすい理由:「探索」という言葉から、半側無視とは逆の「積極的に見ている」という印象を受けるかもしれないが、これは半側無視の症状と合わせて考える必要がある。混同注意:半側空間無視そのものではなく、半側空間無視の結果として生じる行動の一つであること。
- 3. 理解力の低下を示す所見はありません。模写検査は理解力よりも視空間認知能力を評価するものであり、理解力自体に問題があるとは断定できません。正しくは:理解力の低下を示す場合は、複雑な指示に従えない、文章読解が困難などの所見がみられる。選びやすい理由:脳梗塞による高次脳機能障害の一つとして理解力低下も考えられるが、問題文の模写検査や食事時の見落としは理解力低下の直接的な証拠ではないため。混同注意:失語症や認知症による理解力低下。
- 4. 「食事時にはしばしば左側の見落としがみられる」という記載と、模写検査で左側の図形が描けていないことは、左側への選択的注意が著しく低下していることを示します。選択的注意は保たれていません。正しくは:選択的注意は保たれていない。左側への注意が低下している。選びやすい理由:「選択的注意」という専門用語に惑わされやすいが、左側の情報に対する注意が選択的に欠如しているのが半側空間無視である。混同注意:全般的な注意力の低下と、特定の空間への注意の偏り。
- 5. 模写検査の結果から左半側空間無視であることは明らかですが、「重度」であるかどうかは、この模写検査の結果だけでは断定できません。問題文の「食事時にはしばしば左側の見落としがみられる」は半側無視を示唆しますが、重度と判断するにはより詳細な検査や日常生活での多角的な観察が必要です。模写検査では左側の図形が完全に欠落しているものの、その程度を「重度」と表現するには慎重な判断が求められます。選択肢2の方がより直接的な解釈であるため、5は不適切と判断されます。正しくは:左半側空間無視であることは確かであるが、この情報だけでは「重度」と断定できない。選びやすい理由:図を見ると左側が全く描けていないため、重度と判断したくなるかもしれません。しかし、検査結果の解釈において、安易に「重度」という修飾語を用いるのは注意が必要です。混同注意:半側空間無視であることと、その重症度の評価。
国試ポイント
半側空間無視の症状と評価方法、および日常生活への影響を理解すること。
混同注意
半側空間無視は半盲と混同されやすいですが、半盲は視野の物理的な欠損であり、半側空間無視は注意の偏りによる空間認知の障害です。半側空間無視では視野の欠損がないにもかかわらず、その方向の刺激を認識できないか、認識が困難になります。
次に同じ論点が出たら
半側空間無視の評価として、模写検査、線分二等分検査、抹消検査の結果が示された場合、図の描画の欠損、線分の二等分点の偏り、対象物の見落としの程度から判断する。また、食事時の見落とし、着替えの片側だけを行うなどの日常生活での症状も重要な判断材料となる。
関連知識
半側空間無視は右大脳半球損傷、特に右頭頂葉損傷で頻繁にみられ、左側への注意が著しく低下します。評価には、線分二等分検査、抹消検査、模写検査などが用いられます。リハビリテーションでは、視覚探索訓練やプリズム適応療法などが行われます。