7歳の男児。幼児期から落ち着きがなく、他の子供から遊具を取り上げる、列に並べない、座って待てないことが多かった。小学校入学後も、周囲の生徒の文房具を勝手に使う、課題に集中せず席を離れるなどが頻繁にみられていた。自宅でも落ち着きがなく、母親が注意すると興奮する状況であった。この男児について作業療法士が担当教員から相談を受けることになった。担当教員への助言内容として適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第52回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
ADHDの特性を持つ子どもに対しては、望ましい行動を具体的に示し、それが実現した際にすぐに肯定的なフィードバック(褒めるなど)を与えることが行動変容を促す上で非常に有効です。即時的な強化によって、行動と報酬の関連性を理解しやすくなり、その行動を繰り返す動機付けとなります。
選択肢ごとの解説
- 1. ADHDの特性を持つ子どもに対して、強い注意や叱責は、自尊心の低下や反発、二次的な問題行動の誘発につながりやすいです。根本的な行動改善には繋がりません。正しくは:ポジティブな声かけや、望ましい行動への報酬を用いるべきです。注意する際は、穏やかで簡潔に、具体的な行動に焦点を当てて行います。選びやすい理由:すぐに問題行動を止めさせたいという気持ちから、強い注意が効果的だと考えてしまいがちです。混同注意:通常のしつけと混同し、問題行動を減らすために厳しく接することが必要だと誤解しやすいです。
- 2. 教室の中央は、刺激が多く、周囲の動きが視界に入りやすいため、ADHDの特性を持つ子どもにとっては集中を阻害する要因となります。むしろ、刺激の少ない場所が望ましいです。正しくは:教卓の近くや窓際・出入り口から離れた、刺激が少なく先生の目が行き届きやすい場所に席を配置することが有効です。選びやすい理由:中央に置くことで全体に目が届きやすくなる、あるいは先生から見えやすいと考えがちです。混同注意:『注目されやすい場所に置く=ケアしやすい』と混同する可能性があります。
- 3. 正解。ADHDの特性を持つ子どもは、即時的なフィードバックによって行動変容が促されやすいです。望ましい行動をタイムリーに強化することで、その行動の定着を図ることができます。正しくは:この選択肢は正しいです。選びやすい理由:特になし。行動療法の基本原則であり、適切です。
- 4. 苦手なことに対し、時間をかけて完璧を目指させることは、子どもの負担を増やし、成功体験を阻害し、学習意欲を低下させる可能性があります。まずは成功体験を積ませることが重要です(!)。正しくは:苦手な活動は、スモールステップで目標を設定し、達成可能な範囲から取り組ませるべきです。また、得意なことや興味のあることから伸ばしていく視点も重要です。選びやすい理由:努力させること自体は良いことだと捉えられがちですが、ADHDの特性を考慮しない完璧主義は逆効果です。混同注意:『努力することの重要性』と『成功体験の積み重ね』のバランスを誤解しやすいです。
- 5. ADHDの特性を持つ子どもは、注意持続や短期記憶に課題があるため、口頭での詳細な説明だけでは理解や定着が難しいことが多いです。視覚的な情報や具体的な指示がより効果的です。正しくは:ルールは、具体的かつ簡潔に伝え、視覚的な情報(絵カード、チェックリストなど)を併用して提示するべきです。また、行動を通して学ぶ機会を増やすことも重要です。選びやすい理由:理解が不足しているから詳細に説明すれば良い、と安易に考えがちです。混同注意:定型発達の子どもへの説明方法と混同し、ADHDの特性を考慮しない指導法を選択しやすいです。
国試ポイント
ADHD(注意欠如・多動症)を持つ子どもへの行動支援の基本原則と、環境調整の重要性について問う問題です。特に、行動療法における正の強化の考え方と、発達障害の特性に応じた具体的な対応策の知識が求められます。不適切な対応が二次的な問題を引き起こすリスクも理解しておく必要があります。
混同注意
ADHDの特性と、単なる『わがまま』や『しつけ不足』と混同しないことが重要です。また、一般的なしつけや教育方法が、必ずしもADHDの子どもに有効とは限らない点を理解しているか問われます。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、ADHDだけでなく、ASD(自閉スペクトラム症)など他の発達障害を持つ子どもへの支援方法や、思春期以降のADHDへの対応、ペアレントトレーニングの内容などにも着目して学習を進めるべきです。また、事例問題として、具体的な場面設定での応用力が問われる可能性もあります。
関連知識
行動療法(オペラント条件づけ、正の強化、負の強化、罰)、ADHDの診断基準、ADHDの特性に応じた環境調整(物理的環境、人的環境)、視覚的構造化、ソーシャルスキルトレーニング(SST)。