80歳の男性。要介護2。妻と2人暮らし。上肢機能は保たれているが、下肢の支持性の低下がある。認知機能は保たれている。尿意はあり、日中は洋式トイレでズボンの上げ下ろしの介助を受けて排尿している。便失禁はないが、夜間の居室での排尿方法を検討している。「妻を起こさずに自分で排尿したい」との希望がある。排泄用具の写真(別冊No. 5 ①~⑤)を別に示す。選択する排泄用具として適切なのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第53回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
80歳男性は夜間、妻を起こさずに自分一人で排尿を済ませたいと希望している。下肢支持力は低下しているが上肢運動機能と認知機能は問題なく、尿意もある。自動吸引式集尿器(手持ち型)は、寝たままでも上肢を使い自分で排尿でき、尿を自動吸引して処理してくれるため、他者の介助なしに夜間の排尿を完結できる。これにより、妻を起こす心配がなく、本人の希望が叶えられる。
選択肢ごとの解説
- 1. 間欠式バルーンカテーテルは、導尿が必要な場合や、残尿が多い場合などに用いられる医療処置であり、自力で排尿可能で尿意がある本症例には不適切である。また、手持ち型ではなく、常時留置または間欠的に挿入するものである。正しくは:この男性は尿意があり自力排尿が可能であるため、カテーテルではなく、排尿動作を補助する用具を選択すべきである。選びやすい理由:医療処置として排泄に関する用具であるため、選択肢として考慮されやすいが、あくまで医療管理が必要な状態に用いられる。混同注意:カテーテルと尿器、自動集尿器などの簡易的な排泄補助具を混同しやすい。カテーテルは医療行為を伴うことが多い。
- 2. 差し込み式便器は、ベッド上で仰臥位や半座位で排泄する際に使用するが、男性は下肢の支持力低下があるものの、昼間は洋式トイレを使用しており、夜間も「妻を起こさずに自分ひとりで排尿を済ませたい」という希望がある。差し込み式便器は妻の介助が必要になる可能性が高く、また、寝たきりの方や体動が困難な方に適しているため、本症例にはふさわしくない。正しくは:差し込み式便器は、介助なしで自力排尿を完結したいという本人の希望に合わないため、より自立支援に繋がる用具を選択すべきである。選びやすい理由:ベッド上で使用する排泄用具であるため、夜間の排泄方法として連想されやすい。しかし、自力での操作性や介助の必要性を考慮すると不適切である。混同注意:他のベッドサイドで使用する排泄用具(例えば、男性用尿器や自動吸引式集尿器など)と混同しやすい。差し込み便器は女性や体動困難者に適していることが多い。
- 3. 自動排泄処理装置(おむつ型)は、排泄物を自動で吸引・処理する装置であり、尿意や便意の有無に関わらず、寝たきりの方や自力での排泄が困難な方に適している。本症例は尿意があり、認知機能も問題ないため、おむつ型の使用は自尊心を傷つける可能性や、残存機能の活用を妨げる可能性があるため不適切である。また、本人はおむつを希望していない。正しくは:尿意があり、認知機能が問題ないため、おむつ型の装置ではなく、残存機能(上肢の運動機能)を活かせる排泄用具を選択すべきである。選びやすい理由:自動で排泄物を処理してくれるため、介助者の負担軽減や夜間の排泄対策として連想されやすい。しかし、本人のQOLや自立支援の観点からは不適切である。混同注意:自動吸引式集尿器と混同しやすいが、こちらは身体に装着するおむつ型であり、利用者の残存機能を活かすという点で大きく異なる。
- 4. 正解。自動吸引式集尿器(手持ち型)は、上肢の運動機能が維持されている男性が、寝たままでも自分で操作して排尿できる。尿を自動で吸引・貯留してくれるため、こぼす心配が少なく、妻を起こすことなく一人で排尿を完結できる。80歳男性は上肢の運動機能が維持され、認知機能も問題なく、尿意もあるため、この用具が本人の希望と身体状況に最も適している。選びやすい理由:本人の残存機能と希望に合致するため、選びやすい選択肢である。混同注意:類似の自動排泄処理装置(おむつ型)や、シンプルな男性用尿器と混同しやすいが、本品は自力で操作可能であり、かつ自動吸引機能によりこぼれにくく、介助不要という点で優れている。
- 5. ポータブルトイレは、居室内に設置し、移動して使用する排泄用具である。本症例は下肢の支持力低下があるため、夜間、覚醒してベッドからポータブルトイレへ移動する際に転倒のリスクがある。また、ズボンの上げ下ろしに妻の介助を受けている状況で、夜間に一人で安全に移動し、排泄を完結することは困難であり、本人の「妻を起こさずに自分ひとりで排尿を済ませたい」という希望に反する。正しくは:下肢の支持力低下があり、夜間の移動は転倒リスクを伴うため、ベッドサイドで臥位のまま利用できる用具が適切である。選びやすい理由:居室内に設置できるため、夜間の排泄用具として連想されやすい。しかし、移動やズボンの上げ下ろしに介助が必要な点を見落としやすい。混同注意:据え置き型の洋式トイレと混同しやすい。ポータブルトイレは移動可能な点が特徴だが、移動に伴うリスクも考慮が必要。
国試ポイント
高齢者の身体機能(上肢・下肢・認知機能)、排泄状況(尿意・昼間の排泄方法、便失禁の有無)、本人の希望を総合的に判断し、適切な排泄用具を選択できるか。
混同注意
様々な排泄用具の機能や適用状況を混同しやすい。特に、身体のどの部位の機能が残存しているかに応じた用具選択が重要。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出た際は、利用者の身体機能(特に残存機能)、認知機能、排泄状況(尿意の有無、失禁の有無)、そして本人の希望を細かく確認し、それらに最も合致する用具がどれかという視点で判断する。
関連知識
排泄用具の種類(ポータブルトイレ、差し込み便器、尿器、自動排泄処理装置、集尿器、おむつ、カテーテル等)とそれぞれの適応。福祉用具貸与の対象品目。排泄ケアにおける自立支援の視点。