成人のパーソナリティ障害への治療介入で正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第54回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
パーソナリティ障害の治療は主に精神療法が中心となりますが、併存する抑うつ、不安、衝動性、感情の不安定さといった症状に対しては、対症療法として薬物療法が有効な場合があります。特に境界性パーソナリティ障害では、気分安定薬や抗精神病薬が症状緩和に用いられることが知られています。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。パーソナリティ障害の主な治療は精神療法ですが、併存する抑うつ、不安、衝動性などの症状に対しては、薬物療法が対症療法として有効な場合が多く、QOLの向上に寄与します。特に境界性パーソナリティ障害では、気分安定薬や抗精神病薬が衝動性や感情の不安定さに用いられることがあります。
- 2. パーソナリティ障害の治療では、患者を取り巻く環境を理解し、支持的な環境を整えるために家族との連携が非常に重要です。正しくは:患者の病態理解や治療への協力を得るため、家族との連携は積極的に行うべきです。家族支援や心理教育も有効です。選びやすい理由:パーソナリティ障害の患者は対人関係に問題を抱えることが多く、家族関係も複雑な場合があるため、関わりを避けた方が良いと考えるかもしれませんが、実際には家族の理解と協力が不可欠です。混同注意:患者の自立を尊重するあまり、家族の関与を排除しようとする考え方と混同しやすいです。しかし、パーソナリティ障害においては、家族は重要な治療資源となり得ます。
- 3. パーソナリティ障害の診断は複雑であり、スティグマを伴う可能性があるため、診断の確定を急がず、告知のタイミングや方法も患者の受容度を見極めながら慎重に行う必要があります。告知が患者の混乱や不信感を招くこともあります。正しくは:診断は慎重に進め、患者の準備が整い次第、病名や病状について丁寧に説明し、理解を促すことが重要です。選びやすい理由:他の精神疾患と同様に、早期診断・早期告知が有効であると誤解しやすいですが、パーソナリティ障害の場合は患者の特性を考慮した柔軟な対応が求められます。混同注意:他の一般的な疾患における「早期診断・早期治療の原則」と混同しやすいです。パーソナリティ障害の告知は、患者の自己認識や治療関係に大きな影響を与えるため、特別な配慮が必要です。
- 4. 秩序を乱す行動や不適切な行動に対しては、治療関係の枠組み内で明確な限界設定(リミットセッティング)を行い、理由を説明しながら一貫した対応を取ることが不可欠です。放置すると、患者の行動がエスカレートしたり、治療者への不信感につながったりする可能性があります。正しくは:秩序を乱す行動には、治療の枠組みを明確にし、その行動がなぜ問題であるかを具体的に指摘し、代替行動を促すなど、一貫した態度で対応すべきです。選びやすい理由:患者の感情を刺激しないように配慮しようとする考え方や、受容的な態度を重視しすぎるあまり、問題行動を放置してしまう選択肢として選びやすいかもしれません。混同注意:患者の感情そのものを受け入れる「受容」と、不適切な行動を容認する「黙認」を混同しやすいです。受容は感情に対して行うものであり、行動には適切な介入が必要です。
- 5. 電気けいれん療法(ECT)は重度のうつ病や精神病症状に用いられる治療法であり、パーソナリティ障害の自傷行為に対する第一選択ではありません。自傷行為に対しては、精神療法(特に弁証法的行動療法:DBTなど)や、衝動性・気分変動に対する薬物療法が優先されます。ECTは極めて限定的な状況(重度の併存精神疾患など)で考慮されることがあります。正しくは:自傷行為が頻繁な場合、まずは精神療法(例:弁証法的行動療法)や薬物療法(衝動性や感情の不安定さを対象としたもの)を検討します。ECTは、重度の精神病症状や難治性の気分障害が併存し、他の治療に抵抗性を示す場合にのみ慎重に検討されるべきです。選びやすい理由:自傷行為が重篤な問題であるため、強力な治療法が必要だと感じ、ECTが有効であると誤解しやすいです。特に、重度な精神疾患でECTが用いられるイメージがあるため、緊急性が高い状況で選択肢として魅力的に映るかもしれません。混同注意:ECTが「重篤な精神症状」に対する治療法であるという認識と、パーソナリティ障害における自傷行為の「重篤さ」を混同しやすいです。自傷行為は症状の一部であり、根本治療には専門的な精神療法が中心となります。
国試ポイント
パーソナリティ障害の治療介入に関する基本的な知識、特に薬物療法の位置づけ、家族連携の重要性、診断告知の慎重さ、問題行動への対応、および自傷行為への専門的アプローチについて問われています。単一の治療法が全てを解決するのではなく、多角的なアプローチが求められる疾患であるという理解が重要です。
混同注意
パーソナリティ障害の治療が「精神療法が主である」という点から、薬物療法を完全に否定してしまう誤解や、一般的な精神疾患の治療原則(早期診断・告知など)をそのままパーソナリティ障害に当てはめてしまう混同が起こりやすいです。
次に同じ論点が出たら
次に同じ論点が出た場合、パーソナリティ障害の各類型に特化した治療法の詳細や、具体的なリミットセッティングの方法、家族への心理教育の内容などが問われる可能性があります。また、治療抵抗性のケースや危機介入(自傷・他害リスク)への対応についても深掘りされるかもしれません。
関連知識
弁証法的行動療法(DBT)、精神力動的精神療法、認知行動療法(CBT)、スキーマ療法など、パーソナリティ障害に特化した精神療法の種類とそれぞれの特徴。また、境界性パーソナリティ障害、反社会性パーソナリティ障害などの各パーソナリティ障害の特性と推奨される治療アプローチについても関連知識として押さえておく必要があります。