30歳の男性。頸髄損傷完全麻痺(第6頸髄まで機能残存)。上腕三頭筋の筋力検査を行う場面を図に示す。代償運動が出現しないように作業療法士が最も抑制すべき運動はどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第55回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
第6頸髄まで機能が残存する頸髄損傷完全麻痺では、上腕三頭筋(主にC7支配)は機能しないか著しく弱く、肘関節を伸展させる力がほとんどありません。この場合、肩関節を外旋させて前腕の重みを利用し、肘を伸ばす代償運動がよく見られます。上腕三頭筋の筋力を正しく評価するには、作業療法士はこの肩関節外旋を最も抑制する必要があります(公式正答4)。
選択肢ごとの解説
- 1. 体幹屈曲は、図の座位での上腕三頭筋の検査で最も問題になる代償運動ではありません。正しくは:体幹の安定は、肘関節伸展動作を行う上での土台として重要ですが、代償動作として直接的に肘関節伸展を補う動きとは異なります。選びやすい理由:体幹の安定はあらゆる動作の基本であり、筋力検査でも重要であるため、制御すべきと考えて選びやすいです。混同注意:一般的な姿勢保持の重要性と、特定の筋力検査における代償動作の区別。
- 2. 肩関節屈曲は、第6頸髄機能残存の患者が肘伸展を代償するときの主な運動ではありません。正しくは:肩関節は肘関節伸展位を保持するために、中立位で固定することが望ましいです。選びやすい理由:肩関節の動きは上肢機能に大きく関わるため、代償動作として選びやすいですが、この検査では直接的な代償とはなりません。混同注意:肩関節周囲の他の筋(三角筋など)の作用と、上腕三頭筋の検査における代償の区別。
- 3. 肩関節外転は、肘伸展の代償運動として最も抑制すべき運動ではありません。正しくは:肩関節は肘関節伸展位を保持するために、中立位で固定することが望ましいです。選びやすい理由:肩関節の動きは多様であり、肘関節との協調性も高いため、代償動作として選択肢に含めやすいです。混同注意:肩関節の一般的な運動と、上腕三頭筋の筋力検査における特定の代償動作の区別。
- 4. 正解。第6頸髄まで機能残存では上腕三頭筋が働かないため、肩関節外旋と前腕の重みで肘を伸ばす代償運動が出やすく、これを最も抑制します。選びやすい理由:一見、肘関節の動きと直接関係なさそうに見えるため、代償動作として見落としがちですが、詳細に観察すると、外旋によって肘伸展を偽装できる可能性があります。混同注意:肘関節伸展と直接関連しない動きであるため、代償動作と認識しにくい。
- 5. 前腕回内は、肘伸展の代償運動として最も抑制すべき運動ではありません。正しくは:前腕の回内は肘関節伸展の代償動作ではないため、特に制御する必要はありません。選びやすい理由:前腕の動きは肘関節に近い部位であるため、代償動作として選びやすいですが、伸展とは機能的に異なります。混同注意:前腕の回内・回外と肘関節の屈曲・伸展という、異なる関節運動の混同。
国試ポイント
筋力検査における代償運動の理解と、それを防ぐための適切な固定・制御ポイントの知識。
混同注意
筋力検査において、評価対象筋以外の動きを代償運動と捉えるか、あるいは単に姿勢の不安定性によるものと捉えるかで混同しやすい。本問では、患者が第7頸髄までの完全麻痺であることから、麻痺レベルより上位の筋による代償運動を想定する必要がある。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出題された場合は、まず評価対象となる筋の作用を明確にし、その作用を補助または偽装しうる隣接関節や体幹の動きを代償動作として特定する。
関連知識
各筋の筋力検査における標準的な肢位と、よく見られる代償動作。MMT(徒手筋力検査)における固定の原則。脊髄損傷のレベルと残存機能の関係。