24歳の女性。大学卒業後に事務職として勤務していたが、汚物が付着していないかと気になり、頻繁に手を洗い何度も確認するようになった。確認行為により仕事に支障をきたすようになり退職した。家族は本人の確認行為に応じていた。精神科を受診したところ強迫性障害と診断され、外来での作業療法が処方された。作業療法士から家族へのアドバイスとして最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第57回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
強迫性障害の治療において、家族が患者の強迫行為(本事例では頻繁な確認要求)に巻き込まれることは、症状を悪化させ、治療効果を阻害する大きな要因となります。家族へのアドバイスとしては、患者からの確認要求や強迫行為への同調を避け、断固として応じない姿勢を保つことが極めて重要です。これは、患者が自身の不安と向き合い、強迫行為なしに耐えることを促す『曝露反応妨害法』を間接的にサポートすることにもつながります。
選択肢ごとの解説
- 1. 患者を常に監視することは、自律性を阻害し、症状への過度な注目を促し、家族関係に緊張をもたらす可能性があり、症状の改善にはつながりません。むしろ病識を低下させたり、不信感を抱かせたりするリスクがあります。正しくは:監視ではなく、温かく見守り、適切な距離でサポートするよう伝えます。特に、確認行為への介入は専門家に任せるように促します。選びやすい理由:症状の悪化を防ぎたいという家族の思いと重なるかもしれませんが、これは適切な介入ではありません。混同注意:『介入』と『監視』を混同しやすいです。必要なのは建設的な介入であり、監視ではありません。
- 2. 強迫性障害の症状が安定しない段階での性急な再就職は、精神的な負担を増大させ、症状を悪化させるリスクがあります。まずは病状の安定と治療への取り組みが優先されます。正しくは:症状が安定し、本人が自信を持って社会活動に戻れる準備ができた段階で、専門家と相談しながら再就職のサポートを検討するよう伝えます。焦りは禁物です。選びやすい理由:社会復帰が最終目標であるため、一見正しい行動に思えるかもしれませんが、タイミングが重要です。混同注意:『最終目標』と『現在の介入目標』を混同しやすいです。治療初期には症状の軽減と安定が優先されます。
- 3. 患者さんの汚染への強迫観念に対応して徹底的に消毒することは、患者さんの強迫観念を強化し、症状を悪化させる要因となります。これは強迫行為への巻き込みであり、治療の妨げになります。正しくは:消毒行為を促すのではなく、強迫観念に基づく行動を助長しないよう、適切な距離をとるように伝えます。選びやすい理由:患者さんの不安を軽減したいという思いから、一時的に症状に合わせてしまいがちですが、長期的には逆効果です。混同注意:『清潔保持』と『強迫観念に基づく過剰な消毒』を混同しやすいです。通常の清潔さと、強迫性障害が原因の過剰な行動は異なります。
- 4. 強迫性障害の原因を家族だけで深く掘り下げて話し合うことは、患者さんに過度な心理的負担をかけ、症状を悪化させる可能性があります。原因の探求は専門家(医師やカウンセラー)が行うべき領域です。家族の役割はサポートです。正しくは:原因の探求は専門家に任せ、家族は患者さんの話に耳を傾け、共感的な態度で接し、治療への協力を促す役割を果たすよう伝えます。選びやすい理由:病気の理解を深めることは重要ですが、原因の追及はデリケートな問題であり、専門知識が必要です。家族の協力姿勢と混同しやすいです。混同注意:『病気への理解を深める』ことと、『病気の原因を特定し解決しようとすること』を混同しやすいです。後者は専門家の役割です。
- 5. 正解。強迫性障害の患者が家族に確認を求める行為(強迫行為の一部)に家族が応じることは、患者の強迫観念を強化し、症状のサイクルを維持してしまうため、治療においては避けるべきです。家族が介入することで、患者は確認行為に費やす時間が増え、症状が悪化する傾向があります。家族が強迫行為に巻き込まれないことが、患者の自律的な症状対処能力を高める上で非常に重要です。この介入は、『家族の巻き込み』を減らすための重要な原則であり、曝露反応妨害法の一部としても機能します。
国試ポイント
強迫性障害の治療における家族の役割、特に『家族の巻き込み』を避けることの重要性が問われています。実際の臨床場面で作業療法士が家族にどのようなアドバイスをするべきかを理解しているかを確認する問題です。
混同注意
家族が患者の不安を和らげたいという善意からの行動が、結果的に病状を悪化させてしまうという点がポイントです。一時的な安心と、長期的な病状改善のための介入の違いを理解する必要があります。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、強迫性障害における『家族の巻き込み(Family Accommodation)』の概念と、それをいかに避けるべきかという原則を問う問題が予想されます。また、他の精神疾患における家族支援との違いも意識する必要があります。
関連知識
強迫性障害の治療法である曝露反応妨害法、認知行動療法、薬物療法。家族支援の原則、家族教育の重要性。