43歳の女性。アルコール依存症。高校卒業後、就職。20代から職場での緊張感で晩酌をする習慣があった。40歳ころから酒量が増え、二日酔いのまま出勤するようになった。上司に勤務態度を注意されたことで無断欠勤が目立つようになり、最近、泥酔状態で保護されて精神科病院に入院となった。離脱症状が落ち着いた後、作業療法が処方された。この時点での作業療法評価で最も重要度が高いのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第57回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
アルコール依存症患者は、長期の飲酒による栄養障害、睡眠障害、運動不足などから身体活動性が低下していることが多く、入院前の生活状況も乱れがちです。離脱症状が落ち着いたばかりの段階では、まず心身の回復に努める必要があり、基本的な身体能力(基礎体力)の評価は、ADLの自立度や安全な活動の可否を判断する上で最も優先されます。これが安定して初めて、他の心理的・社会的な評価に進むことができます。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。アルコール依存症の患者は、長期にわたる飲酒によって栄養状態の悪化、睡眠障害、運動不足が生じやすく、心身の活動性が低下していることが多いです。また、泥酔状態で保護されたという情報から、入院前の生活習慣が著しく乱れていたことが示唆されます。そのため、離脱症状が落ち着いたばかりのこの時点では、まず日常生活活動(ADL)を支えるための基礎的な体力や身体機能の回復状況を評価し、その上で安全に活動を遂行できるかどうかを確認することが最も重要です。選びやすい理由:他の選択肢も重要ですが、基礎体力がなければそれらを評価することも、介入することも困難であるため、初期段階では最も優先されます。混同注意:離脱症状が落ち着いたばかりの段階では、心理的側面よりも身体的側面の評価が先行することが多いです。
- 2. 対人関係技能の評価も重要ですが、入院直後で離脱症状が落ち着いたばかりの段階では、まず身体的な安定性や基本的な活動能力を確認することが優先されます。対人関係技能の評価は、その後の社会生活への適応を考える上で必要ですが、現状では次段階以降の課題となります。正しくは:離脱症状が落ち着き、基本的なADLが安定した後に、病棟内での他者との関わりの中で評価を深めます。選びやすい理由:アルコール依存症は対人関係の問題を抱えやすい疾患であるため、重要項目だと感じやすいかもしれません。混同注意:急性期後の心理社会的評価と混同しやすいですが、初期段階では身体的評価が優先されます。
- 3. 断酒への意志は回復過程において非常に重要な要素ですが、これは作業療法士が直接評価し、指導するよりも、まずは医師や看護師、精神科ソーシャルワーカーなど多職種で連携して患者の動機付けを支援し、本人が自覚していくプロセスが重要です。作業療法士は、断酒を支えるための具体的な生活習慣やストレス対処法を提案する役割を担いますが、その前提としてまず身体的な安定が必要です。正しくは:断酒への意欲は、患者さんの病識や治療への動機付けの段階で、医師や心理士、看護師などが評価・介入を主導します。作業療法士は、断酒継続のための具体的な生活習慣の獲得や、飲酒以外の対処行動の練習を通じて間接的に支援します。選びやすい理由:アルコール依存症の中核的な問題であるため、最も重要に思われがちです。混同注意:病識や治療への動機付けの評価と混同しやすいですが、作業療法の初期評価としては身体機能が優先されます。
- 4. 職場復帰への意欲は、その後の社会復帰を目指す上で重要な項目ですが、入院直後で離脱症状が落ち着いたばかりの段階では、まだ時期尚早です。まずは心身の安定を図り、基本的な生活リズムを確立することが先決であり、その後、段階的に社会復帰に向けた準備を進める中で評価されます。正しくは:心身が安定し、日常生活が自立できるようになった後、職場復帰を見据えた訓練や環境調整の一環として評価・介入します。選びやすい理由:現職に就いていたため、復職への意識が高いと考えるかもしれませんが、まずは病状の安定が優先されます。混同注意:社会復帰に向けた評価と混同しやすいですが、初期段階では基本的な身体機能の回復が最優先されます。
- 5. 問題解決能力は、生活上の困難に対処し、再発予防を考える上で非常に重要な要素ですが、離脱症状が落ち着いたばかりの段階では、認知機能の低下や思考能力の不安定さが見られることがあります。まずは基礎的な身体機能が安定し、集中力や判断力が回復してから、より複雑な思考を要する問題解決能力の評価に進むのが適切です。正しくは:心身が安定し、認知機能が回復した後、具体的な生活課題やストレス要因に対する対処能力として評価・介入します。選びやすい理由:アルコール依存症の原因や再発予防のために重要なスキルであるため、初期から評価すべきだと考えやすいです。混同注意:認知機能の評価やストレス対処能力の評価と混同しやすいですが、急性期後の初期段階では身体的側面が優先されます。
国試ポイント
精神科リハビリテーション、特にアルコール依存症の急性期後の作業療法評価における優先順位を問う問題です。身体的安定を最優先とする初期段階の評価の重要性を理解しているかどうかがポイントになります。多岐にわたる重要な評価項目の中から、病期や状況に応じて最も適切なものを選び出す判断力が試されます。
混同注意
アルコール依存症は精神疾患であるため、心理面や社会面の問題解決が重要だと考えがちですが、身体的な離脱症状や栄養状態の悪化がある場合は、まず身体の安定と基礎的な体力回復が先行するという点が混同しやすいポイントです。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、患者の病期(急性期、回復期、維持期など)、病態(離脱症状の有無、身体合併症の程度など)、および作業療法の介入目標(身体機能回復、生活習慣改善、社会復帰準備など)を考慮し、どの段階で何が最も優先されるかを判断する視点を持つことが重要です。
関連知識
アルコール依存症の病態生理(栄養障害、肝機能障害、神経障害など)、離脱症状と回復過程、作業療法の評価項目(ADL、IADL、認知機能、精神機能、社会適応能力、余暇活動、職業遂行能力など)、多職種連携の役割。