17歳の女子。半年前からダイエットを始め、最近、極端な食事制限をするようになった。身長は156 cmで体重は46 kgから32 kgに減少した。学校で嘔吐して倒れて、その後歩行困難となったため救急外来を受診した。精神科を紹介されて入院となり、精神科作業療法が処方された。導入時の作業療法で最も適切な活動種目はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第59回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
設問の患者は重度の低栄養状態(BMI 13.1)であり、嘔吐や歩行困難といった身体症状を呈しています。精神科に入院したばかりの導入期であるため、身体的負担が少なく、精神的に安心感を得られ、かつ達成感を感じやすい活動を選択することが重要です。スタンプを用いた革小物の制作は、比較的短時間で完成可能であり、技術的な難易度も高くないため、失敗への不安が少なく、成功体験を通じて自己効力感を高めやすい活動です。また、摂食障害患者に多く見られる完璧主義傾向にも、比較的融通が利く(多少のずれが味になるなど)活動であり、自己表現の機会にもなります。他の選択肢は、身体的負担が大きい、摂食障害の症状と直接的に関連して不安を高める、または完璧主義を助長するリスクがあるため、導入期の活動としては不適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 摂食障害の患者さんにとって、食べ物に直接触れる調理活動は、強い不安感や罪悪感、さらには症状の悪化につながる可能性があり、導入期には非常に不適切です。正しくは:治療が進み、食べ物に対する抵抗感が減少してから、専門職の支援のもとで段階的に導入を検討します。選びやすい理由:日常生活に直結する活動であり、食生活の改善を目指すうえで最終的には目標となる活動であるため、一見すると適切に思えるかもしれません。混同注意:摂食障害の回復期における食行動の再構築を目的とした活動と、導入期の活動が混同されやすいです。
- 2. 重度の低栄養状態にあり、嘔吐や歩行困難といった身体症状を呈しているため、屋外でのスポーツのような身体的負担の大きい活動は、身体状態をさらに悪化させるリスクが高く、導入期には不適切です。正しくは:身体状態が安定し、医師の許可が得られ、かつ患者自身の意欲が確認されてから、無理のない範囲で導入を検討します。選びやすい理由:精神的なストレス軽減や体力向上に役立つ活動であるため、広い意味での健康増進につながると考えがちです。混同注意:精神疾患全般に対する運動療法の効果と、重度の身体合併症を伴う摂食障害患者の導入期の活動が混同されやすいです。
- 3. 摂食障害の患者さんは完璧主義傾向が強く、失敗を極度に恐れることが多いです。競争を伴う集団活動では、自己評価の低下や過度なストレスを感じやすく、導入期の心理的に不安定な状態には適していません。正しくは:治療が進み、自己肯定感が高まり、他者との関わりに自信を持てるようになってから、協調性を促す活動として導入を検討します。選びやすい理由:集団での交流は社会性の向上に役立つと考えるかもしれませんが、導入期にはハードルが高いです。混同注意:一般的な精神科リハビリテーションにおける集団活動の利点と、摂食障害患者の特性や導入期のニーズが混同されやすいです。
- 4. 陶芸は集中力と根気を要し、完成までに時間がかかる活動です。特に花瓶のような複雑な形状の製作は、完璧主義傾向の強い患者さんにとって、失敗への恐れや、理想とのギャップから過度なストレスを生じさせやすい可能性があります。導入期には達成感が得にくいことも課題です。正しくは:より単純な形状の陶芸作品や、完成までの工程が少ない活動から始め、段階的に難易度を上げていくことが望ましいです。選びやすい理由:創造的な活動は自己表現の機会となり、達成感も得やすいと考えるかもしれませんが、難易度が高いと逆効果になりえます。混同注意:芸術療法としての陶芸の可能性と、導入期の摂食障害患者の身体的・精神的な状態に対する配慮が混同されやすいです。
- 5. 正解。この活動は、比較的短時間で完成させやすく、技術的な難易度が低いため、失敗への不安が少なく達成感を得やすいという利点があります。また、身体的な負担も少なく、集中力を保ちやすいこと、自己表現の機会となることからも、重度の低栄養状態にある導入期の摂食障害患者さんにとって、自己肯定感を高め、治療への意欲を引き出すのに適した活動と言えます。
国試ポイント
精神疾患、特に摂食障害患者の病態と特性(低栄養、身体合併症、完璧主義、身体イメージの歪みなど)を理解し、その上で導入期の作業療法において、患者の身体的・精神的状態に配慮した適切な活動を選択できるかが問われています。身体負担の軽減、安心感の提供、達成感の促進、自己肯定感の向上といった視点から活動を評価する能力が求められます。
混同注意
摂食障害の治療段階(導入期、中期、回復期)に応じた活動選択の基準が混同されやすいです。例えば、回復期においては料理や集団活動なども治療目標となり得ますが、導入期では不適切です。また、一般の精神科作業療法で有効とされる活動(例:スポーツや複雑な創作活動)が、重度の身体合併症を持つ摂食障害患者の導入期には適さないという点が混同されやすいです。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出題された場合、まず『患者の現在の身体状態と精神状態』、次に『治療の段階(導入期、中期、回復期)』、そして『活動が患者の病態特性(例:完璧主義、身体イメージの歪み、食への不安)にどう影響するか』の3点を軸に、各活動の適切性を判断します。特に、身体合併症の有無と重症度、そして精神科治療における作業療法の初期目標を考慮することが重要です。
関連知識
摂食障害(特に神経性やせ症)患者への作業療法の原則: 1. 身体的安定化の優先(低栄養状態への配慮)。2. 安心感と安全な環境の提供。3. 自己肯定感の向上と成功体験の積み重ね。4. 自己表現の促進。5. 完璧主義への対処。6. 身体イメージの歪みへのアプローチ。導入期の活動としては、短時間で完成し、達成感があり、身体的・精神的負担が少ないものが望ましいです(例:簡単な手芸、塗り絵、マンダラ塗り絵、簡単な革細工、貼り絵など)。