13歳の男子。中学校入学後クラスでの様子を心配した担任から母親に連絡があり、母親に伴われて精神科に来院した。幼少期から物音および匂いに敏感であったという。成績は上位。鉄道に強い興味があり、同級生はその知識にはじめは関心を示したが、一度話し始めると一方的に自分の興味のある話を続けるため、次第に孤立した。本人は他の生徒との関係に無頓着である。最も考えられるのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第59回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
事例の男子生徒は、幼少期からの感覚過敏(音、匂い)、特定の対象(鉄道)への強いこだわりと専門的な知識、その知識を一方的に話し続けるというコミュニケーションの特性、そして対人関係における困難(孤立、他者との関係への無頓着さ)を示しています。これらの特徴は、社会的コミュニケーションと相互作用の持続的な欠陥、および限定された反復的な行動、興味、活動という自閉症スペクトラム障害の主要な診断基準と完全に一致します。
選択肢ごとの解説
- 1. うつ病の主要な症状である抑うつ気分、意欲の低下、不眠、食欲不振などは、この事例からは読み取れません。正しくは:気分の落ち込み、興味や喜びの喪失、睡眠や食欲の変化などの症状が継続的に見られる場合に考えられます。選びやすい理由:思春期は精神的な不調を訴えやすい時期であり、学校での孤立がストレス源となりうつ病につながる可能性もあるため、選択肢として考えやすいかもしれません。混同注意:特定の興味への没頭やコミュニケーションの困難さを、気分障害の一症状と誤解する可能性があります。
- 2. 限局性学習障害は、読字、書字、算数などの特定の学習領域に著しい困難がある状態を指します。事例の男子生徒は「成績は上位」とあり、学習面での困難は見られません。正しくは:特定の学習領域において、年齢や知的能力に見合わない著しい困難があり、それによって学業や日常生活に支障がある場合に診断されます。選びやすい理由:「自分の興味のある話を一方的に続ける」などのコミュニケーション特性から、学習面での偏りがあるかのように誤解される可能性もありますが、直接的な関連性はありません。混同注意:発達障害の一つであるため、他の発達障害と混同される可能性がありますが、それぞれの特徴が異なります。
- 3. 行為障害は、他者の権利を侵害したり、社会の規範や規則を繰り返し著しく破ったりする行動パターン(例:暴力、窃盗、破壊行為など)が中心となる疾患です。事例の男子生徒にはそのような行動は見られません。正しくは:他者の基本的な権利の侵害、年齢相応の社会規範や規則に対する反復的で重大な違反行為が持続的に見られる場合に考えられます。選びやすい理由:学校での孤立という状況から、問題行動につながりやすい状態だと誤解する可能性があります。混同注意:発達障害に伴う二次的な行動上の問題と混同されやすいですが、行為障害は反社会的な行動が中核です。
- 4. 正解。事例の男子生徒は、「幼少期から物音および匂いに敏感」(感覚過敏)、「鉄道に強い興味があり、同級生はその知識にはじめは関心を示したが、一度話し始めると一方的に自分の興味のある話を続ける」(限定された興味、一方的な会話)、「次第に孤立した。本人は他の生徒との関係に無頓着である」(対人関係の困難、社会性の相互性の欠如)という特徴を示しており、これらは自閉症スペクトラム障害の診断基準である「社会的コミュニケーションおよび対人相互作用における持続的な欠陥」と「限定された反復的な様式の行動、興味、活動」に合致します。
- 5. 選択性緘黙は、特定の状況や人物に対して一貫して話すことができない状態を指します。事例の男子生徒は「一方的に自分の興味のある話を続ける」とあり、話すことはできますが、その内容や話し方に特性が見られるため、選択性緘黙ではありません。正しくは:特定の社会状況(例:学校)では話せないが、他の状況(例:家)では話せるという特徴が見られる場合に診断されます。選びやすい理由:コミュニケーションの困難さという点で共通性があるように見えるため、混同される可能性があります。混同注意:コミュニケーション障害の一つですが、話せないことと一方的に話し続けることは異なる症状です。
国試ポイント
自閉症スペクトラム障害の診断基準や主要な特性(社会的コミュニケーションの質的障害、限定された反復的な行動や興味、感覚特性など)を理解しているかが問われています。特に、発達段階に応じた症状の現れ方や、他の精神疾患との鑑別点を把握しておくことが重要です。
混同注意
他の発達障害(例:ADHDの不注意や多動衝動性)、不安症(特に社会不安症と対人関係の困難を混同)、また思春期に多い気分障害(うつ病)などと鑑別が必要です。それぞれの疾患の中核症状や診断基準を正確に理解しておくことが、鑑別の鍵となります。
次に同じ論点が出たら
次に同様の事例問題が出た場合、まず「対人関係やコミュニケーションの特性」と「行動や興味の特性(こだわり、反復行動など)」の2つの軸で情報を整理し、それらが自閉症スペクトラム障害の診断基準に合致するかを確認します。特に、幼少期からの持続性があるか、複数の環境で困難が見られるか、といった点にも注目します。
関連知識
自閉症スペクトラム障害の診断はDSM-5またはICD-11に基づきます。中核症状に加え、感覚過敏・鈍麻、運動の不器用さ、睡眠障害などの併存症も多く見られます。作業療法では、感覚統合療法、ソーシャルスキルトレーニング、認知行動療法、生活技能訓練などが用いられ、本人の特性に応じた環境調整や支援計画が重要となります。