38歳の女性。統合失調症。長期入院後、ACTチームによる訪問支援を受けながら一人暮らしを始めた。服薬は自己管理。時折聞こえる幻聴に対処できていたが、部屋は整理整頓できていない。最近、就労希望を受けて、ACTチームの作業療法士が就労支援を担当することになった。作業療法士の対応で最も優先すべきなのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第59回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
統合失調症を持つクライエントの就労支援において、最も基本的なアプローチは、本人の「働きたい」という希望に対して、どのような仕事に就きたいのか、どのような条件を求めているのかを具体的に聞き取ることです。これは、クライエント中心の支援を実践する上で不可欠なステップであり、今後の支援計画(職種選定、訓練内容、就職活動の方向性など)の土台となります。本人のニーズや目標を明確にすることで、意欲の維持や主体的な参加を促すことができます。幻聴への対処や部屋の整理整頓といった生活面の課題も重要ですが、これらは就労支援と並行して取り組むか、就労後の定着支援の中で対応していくことが多く、就労意欲がある段階でまず本人の希望を聞くことが最優先されます。医療連携も重要ですが、服薬自己管理ができている現状では、就労希望の把握より優先されるものではありません。
選択肢ごとの解説
- 1. 本人の状況説明には「時折聞こえる幻聴に対処できていた」とあり、幻聴が現在の生活や就労意欲を大きく阻害している主要な問題とは示されていません。就労支援を開始するにあたり、最も優先すべき事項ではありません。正しくは:幻聴が就労に具体的な影響を与える場合や、悪化の兆候が見られる場合に、本人の困りごとや対処法について確認します。選びやすい理由:統合失調症の主要症状である幻聴の管理は重要であるため、確認が必要だと感じやすいです。混同注意:症状管理の重要性と、クライエントが提示している主訴(就労希望)に対する初期介入の優先順位。
- 2. 正解。就労支援の開始において、クライエント本人の希望や意向を把握することが最も重要です。これはクライエント中心の支援の基本であり、今後の支援計画を立てる上での出発点となります。本人の主体的な参加を促し、適切な目標設定につながります。
- 3. 本人の就労に対する具体的な希望や能力、目標がまだ不明な段階で、特定の就労形態(就労継続支援B型)への見学を一方的に提案するのは時期尚早です。本人の希望によっては、一般就労や就労移行支援なども選択肢に含まれます。正しくは:本人の希望や適性を詳しく聞き取った上で、必要に応じて複数の就労支援機関(就労移行支援、A型、B型など)を紹介し、本人と一緒に見学先を検討します。選びやすい理由:統合失調症患者の就労支援において、就労継続支援B型事業所は一般的な選択肢の一つであるため、具体的な次のステップとして適切だと感じやすいです。混同注意:具体的な支援機関の知識と、クライエント中心の支援における初期段階の優先順位。
- 4. 部屋の整理整頓ができていないことは課題ですが、それを就労支援開始の絶対条件とすることは、本人の就労意欲を低下させ、支援の機会を逃す可能性があります。就労支援と並行して、生活技能訓練などの形で生活面の課題に取り組むのが適切です。正しくは:部屋の整理整頓に関する本人の困りごとや希望を確認し、就労支援と同時に、または生活スキル向上のプログラムと連携して支援を検討します。選びやすい理由:生活面の自立が就労の前提条件であると考えるため、部屋の清掃ができない状態では就労も難しいと感じやすいです。混同注意:生活能力の向上と就労支援の開始の優先順位。生活能力は就労と並行して向上させることが多いです。
- 5. 本人は服薬を自己管理できており、幻聴にも対処できていると記載されています。現時点で、就職活動開始前に「最も優先して」主治医に服薬について相談する必要性は低いと判断されます。必要に応じて医療連携は行いますが、現段階で最優先ではありません。正しくは:就職活動を進める中で、服薬のタイミングや副作用が就労に影響を及ぼす可能性が生じた場合や、職種・労働時間と服薬管理の調整が必要になった場合に、主治医と連携を図ることを提案します。選びやすい理由:精神疾患患者の服薬遵守は非常に重要であり、就労という大きな変化には医療的なサポートが不可欠だと感じるため。混同注意:服薬管理の重要性と、クライエントの現在の状態(自己管理できている)を踏まえた上での医療連携の適切なタイミング。
国試ポイント
この問題は、精神科作業療法における就労支援の初期段階で、作業療法士がクライエント中心の視点に基づいてどのような対応を優先すべきかを問うものです。単に病気の症状や生活課題を解決するだけでなく、クライエントの自己決定権や主体性を尊重し、就労という具体的な目標達成に向けて、本人との目標共有を最優先とする姿勢が求められます。
混同注意
生活スキルの向上(部屋の整理整頓)や症状管理(幻聴への対応、服薬管理)も重要な課題ですが、就労希望があるクライエントに対しては、まずその希望を具体的に聞き取ることが、支援のモチベーション維持とクライエント中心の支援において最も優先されます。これらの課題と就労支援の優先順位を混同しやすいです。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出た場合、まずクライエントの「希望」や「目標」に関する選択肢に注目し、それが支援の出発点となるかどうかを判断します。次に、問題文中の「最も優先すべき」という指示に沿って、症状管理、生活スキル、医療連携などの重要性を比較検討し、クライエントの主体性を尊重したアプローチがどれかを評価します。
関連知識
ACT(Assertive Community Treatment)チームの役割、WRAP(Wellness Recovery Action Plan)、IPS(Individual Placement and Support)型就労支援、就労継続支援A型・B型、就労移行支援、ICF(国際生活機能分類)の個人因子と環境因子の視点。