21歳の男性。交通事故によるびまん性軸索損傷と診断された。意識は清明で運動麻痺はない。新しい物事を覚えるのが困難で記憶の障害が顕著である。この患者に対する適切なアプローチはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第53回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
びまん性軸索損傷後の記憶障害は、新しい情報の保持が困難になるのが特徴です。海馬などの記憶形成に関わる脳領域が障害されている可能性があり、記憶を外部に頼ることで日常生活での困難を軽減できます。外部補助ツールは、情報過多を防ぎ、記憶の定着を助ける効果があります。
選択肢ごとの解説
- 1. 毎日異なる種類の課題を提供すると、患者は新しい情報を記憶することが難しいため、学習効果が得られにくく、混乱や疲労を招く可能性があります。正しくは:毎日同じ、または類似した課題を反復し、記憶の定着を促す、または定着が難しい場合は外部補助ツールの活用を徹底する。選びやすい理由:一般的な学習方法として、多様な課題に取り組むことが良いとされるため、記憶障害の特性を考慮しないと選びやすい。混同注意:健常者や軽度認知機能障害者への学習介入方法。
- 2. 正解。びまん性軸索損傷による記憶障害、特に記銘力障害の患者には、新しい情報を記憶することが困難なため、スマートフォンのリマインダー、メモ帳、日記、手帳などの記憶を外部から補助するツールや手段を活用することが非常に有効です。これにより、日常生活の自立度を高めることができます。選びやすい理由:具体的にイメージしやすく、記憶障害への直接的な対策となるため。混同注意:記憶障害そのものを改善させる治療法と混同せず、あくまで代償手段として理解する。
- 3. 試行錯誤を要する活動や課題は、記憶障害がある患者にとって新たな学習を強いられることになり、失敗体験が増え、意欲の低下や混乱を引き起こす可能性が高いです。特にびまん性軸索損傷では、問題解決能力にも影響が出ることがあります。正しくは:成功体験を積み重ねられるように、簡単な課題から始め、徐々に難易度を上げるか、エラーレスラーニングを導入する。選びやすい理由:問題解決能力を向上させるためのリハビリとして一般的に有効と誤解されやすい。混同注意:遂行機能障害に対するリハビリと混同しやすいが、記憶障害が主症状の場合には適さない。
- 4. 複数の学習タスクを同時に進行させることは、注意機能やワーキングメモリに大きな負担をかけます。記憶障害がある患者は、新しい情報の処理能力が低下しているため、混乱を招き、学習効率を著しく低下させます。正しくは:一度に一つのタスクに集中できるよう、環境を整え、指示も簡潔にする。選びやすい理由:効率的な学習方法と一般的に思われがちだが、記憶障害の患者には逆効果である。混同注意:健常者のマルチタスク能力向上トレーニング。
- 5. 日々のスケジュールを柔軟に変更すると、予測不能な要素が増え、記憶障害の患者は混乱しやすくなります。ルーティン化された予測可能な環境は、患者が安心して過ごし、外部補助ツールを定着させる上で非常に重要です。正しくは:日々のスケジュールを固定し、ルーティン化することで、予測可能性を高め、患者が安心して過ごせる環境を提供する。選びやすい理由:患者のQOL向上や自主性を尊重する観点から、一見すると良い対応に思える。混同注意:患者の自主性を尊重することと、症状特性に合わせた構造化された環境提供の必要性。
国試ポイント
脳損傷後の記憶障害に対するリハビリテーション戦略、特に代償的アプローチの重要性。
混同注意
記憶障害のタイプ(新しい情報が覚えられない記銘力障害か、過去の記憶が思い出せない想起障害か)によって対応が異なる点を混同しやすい。
次に同じ論点が出たら
脳損傷後の症状として記憶障害が挙げられている場合、まずはその記憶障害のタイプ(特に記銘力障害)を判断し、それに対する代償的なアプローチが選択肢にあるかを確認する。
関連知識
脳損傷による高次脳機能障害の種類(注意障害、遂行機能障害、失語など)とそれぞれの対応方法。