80歳の男性。入院リハビリテーション中に胸部不快感を訴えたため心電図を施行した。入院時の心電図(別冊No. 1A)と発作時の心電図(別冊No. 1B)を別に示す。考えられるのはどれか。

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出典:厚生労働省ホームページ(第58回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
80歳男性がリハビリ中に胸の不快感を訴え、発作時の心電図BでII, III, aVF誘導でST上昇が見られます。これは下壁誘導における虚血性変化であり、心筋への血流が不足し心筋が虚血状態に陥っていることを示唆しています。特にST上昇は冠動脈の完全閉塞に近い状態、すなわち急性冠症候群(狭心症や心筋梗塞)を強く疑わせる所見です。
選択肢ごとの解説
- 1. 心電図AとBを比較すると、心電図BではII、III、aVF誘導で明らかなST上昇が見られ、特段の変化ではないため誤りです。正しくは:心電図BではII、III、aVF誘導でST上昇が見られるため、特段の変化ではない。選びやすい理由:一見して判断が難しい場合、慣れていないと軽微な変化に見えてしまう可能性があるため。混同注意:正常な心電図波形、または非特異的T波変化など軽微な心電図異常。
- 2. 心電図AとBの心拍数を比較すると、両者ともに約75拍/分であり、徐脈(通常60拍/分未満)の基準には当てはまらないため誤りです。正しくは:心電図AとBの心拍数は約75拍/分であり、徐脈ではない。選びやすい理由:高齢者のため、徐脈などの不整脈が起こりやすいという一般的な知識から連想してしまう可能性があるため。混同注意:様々な種類の不整脈。
- 3. 正解。入院時の心電図Aと比較して、発作時の心電図BではII, III, aVF誘導でST上昇が認められます。これは心筋の虚血を強く示唆する所見であり、80歳男性がリハビリテーション中に胸の不快感を訴えている臨床症状と合わせて、狭心症、特に急性冠症候群が最も考えられる状態です。選びやすい理由:心電図変化が明確であり、臨床症状と合致するため。混同注意:心筋梗塞(ST上昇型心筋梗塞もST上昇を示すため鑑別が必要だが、本選択肢は狭心症であり、急性冠症候群の包括的な診断として適切)。
- 4. 心電図A、BともにP波が確認でき、R-R間隔も比較的整っているため、心房細動(P波の消失とR-R間隔の不整が特徴)の所見は認められないため誤りです。正しくは:心電図A、BともにP波があり、R-R間隔も整っているため、心房細動ではない。選びやすい理由:高齢者に多い不整脈であるため、胸部症状と関連付けてしまう可能性があるため。混同注意:他の不整脈(心房粗動、上室性頻拍など)。
- 5. 左室肥大の診断には通常、胸部誘導でのQRS波の高電位や軸偏位などの所見が必要ですが、発作時の心電図Bでこれらの特異的な変化は認められません。また、左室肥大は通常慢性的な病態であり、急性の胸部不快感に伴うST上昇とは直接関連が薄いため誤りです。正しくは:左室肥大を示す特異的な心電図変化は認められない。また、左室肥大は急性の胸部不快感の原因として主要ではない。選びやすい理由:高齢者に合併しやすい疾患の一つであるため、考慮してしまう可能性があるため。混同注意:心筋虚血に伴う一過性のST-T変化以外の慢性的な心電図変化。
国試ポイント
虚血性心疾患における心電図変化、特にST上昇が狭心症や心筋梗塞を示唆することを理解しているか。
混同注意
単なるT波の変化やST低下との区別。ST上昇はより重篤な虚血を示し、心筋梗塞の可能性も示唆するため、緊急性が高い。徐脈や心房細動などの不整脈と、虚血性変化であるST上昇を混同しないこと。
次に同じ論点が出たら
胸部症状を訴える患者の心電図を判読する際、ST部分のわずかな変化も見逃さずに、基準線からの上昇または低下を正確に評価する。特に、症状と心電図変化が一致している場合は、緊急性の判断が重要となる。
関連知識
虚血性心疾患の症状(胸痛、放散痛、呼吸困難など)、危険因子(高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、肥満など)、他の検査所見(心筋逸脱酵素の上昇、心エコー所見など)および治療法(ニトログリセリン舌下投与、経皮的冠動脈形成術など)。心電図誘導と虚血部位の関連(下壁誘導での変化は右冠動脈または左冠動脈回旋枝の関与を示唆)。