43歳の女性。多発性硬化症。発症から3年経過。寛解と再燃とを繰り返している。四肢筋力は軽度低下し、表在感覚が軽度鈍麻している。疲労の訴えが多く、入院となった。最近徐々に視覚障害を生じてきた。この患者に対する作業療法で最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第58回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
多発性硬化症の患者は疲労感、筋力低下、感覚障害、視覚障害を呈しており、作業療法では疲労を増悪させず、症状に合わせた活動を提供する必要があります。機織り(選択肢5)は、座って行えるため疲労を軽減しつつ、上肢の協調運動や手指の巧緻性を要求するため、症状に適した活動です。特に視覚障害がある場合でも、手元の作業に集中しやすい利点があります。
選択肢ごとの解説
- 1. 縫い物(手芸)は手指の巧緻性を要しますが、問題文の患者は「手足の筋力はわずかに低下しており、皮膚の感覚もやや鈍くなっている」状態であり、視覚障害も進行しているため、細かい作業である縫い物は、疲労感を増強させたり、視覚負担が大きく困難を伴う可能性が高いです。正しくは:視覚障害が軽度で、疲労感が比較的少ない場合に、手指の巧緻性や集中力を維持する目的で行うことは可能ですが、現状ではより視覚負担の少ない活動が適切です。選びやすい理由:手芸は比較的座って行える活動であり、軽度な運動負荷であると捉えられがちであるため。混同注意:ADL活動へのアプローチとレクリエーション活動の区別。
- 2. 鋸で板を切る(木工)は、上肢の筋力や全身のバランス能力を強く要求される活動です。患者は「手足の筋力はわずかに低下」しており、「強い疲労感を訴える」ため、この活動は身体的負担が大きすぎ、転倒のリスクや疲労の増悪を招く可能性が高いです。正しくは:筋力低下が軽度で、疲労感が少なく、バランス能力が十分な場合に、筋力維持や上肢の協調運動を目的に行うことが考慮されます。選びやすい理由:創造性を刺激する活動として、あるいは筋力維持につながると考えられがちであるため。混同注意:筋力維持を目的とする運動と、症状に合わせた負荷の判断。
- 3. 鍬で土を耕す(畑仕事)は、全身運動であり、特に体幹の安定性や下肢の筋力、持久力を強く要求されます。患者は「手足の筋力はわずかに低下」しており、「強い疲労感を訴える」ため、この活動は身体的負担が極めて大きく、疲労の著しい増悪や転倒のリスクが高いです。正しくは:多発性硬化症患者では、一般的にこのような高負荷の屋外作業は避けるべきです。回復期で症状が安定しており、かつ疲労感が非常に軽度な場合に、短い時間で、かつ見守り下で行うことが検討される場合もありますが、本症例には不適切です。選びやすい理由:自然の中で行う活動であり、精神的なリフレッシュ効果があると考えられがちであるため。混同注意:身体活動の一般的なメリットと、疾患による制限の考慮。
- 4. 木槌で刻印を打つ(金細工)は、正確な視覚と細やかな手指の協調運動、およびある程度の筋力を要します。患者は「視覚に徐々に障害が現れており」、「皮膚の感覚もやや鈍くなっている」ため、細かい作業を正確に行うことが困難であり、安全性の問題も生じる可能性があります。また、疲労感の増強にもつながりやすいです。正しくは:視覚障害が軽度で、手指の感覚や巧緻性が比較的良好な場合に、集中力や手の協調性維持のために検討される活動です。本症例には不適切です。選びやすい理由:座って行える作業であり、集中力を要する活動として適していると誤解されがちであるため。混同注意:趣味活動としての適性と、疾患による身体機能への影響の判断。
- 5. 正解。機織り(機織り)は、座って行える活動であり、疲労を軽減しつつ、上肢の協調運動や手指の巧緻性を要求します。足で踏板を操作するタイプであれば下肢の運動も促せます。患者は「手足の筋力はわずかに低下」していますが、機織りは大きな筋力を必要とせず、「視覚に徐々に障害」があっても、手元での作業は比較的行いやすく、感覚鈍麻に対しても触覚を使いながら進められます。集中力を要し、達成感も得られやすいため、精神的にも良い影響が期待できます。選びやすい理由:多発性硬化症患者の多様な症状に比較的幅広く対応できる活動であるため、適切な選択肢として判断しやすいです。混同注意:疲労管理とADLの維持・向上、趣味活動のバランス。
国試ポイント
多発性硬化症患者の症状(疲労、筋力低下、感覚障害、視覚障害)と、それらに配慮した作業療法の選択基準を理解しているか。
混同注意
多発性硬化症の病態が進行期の患者と誤解し、過度に身体活動を制限する選択肢や、逆に回復期と誤解し、負荷の高い活動を選択してしまう可能性がある。
次に同じ論点が出たら
多発性硬化症の症例問題では、患者の現在の症状(特に疲労の程度、筋力レベル、視覚障害の有無)と病期を詳細に確認し、それに合わせた活動の負荷と内容を判断する。
関連知識
多発性硬化症の病型(再発寛解型、一次進行型、二次進行型など)と、それぞれの病期における作業療法の目標設定。疲労管理、エネルギー温存技術の指導も重要である。