45歳の男性。2週前に下痢症状があった。2日前から両下肢に力が入りにくくなり、病院を受診し、Guillain-Barré症候群と診断された。意識は清明で、言語機能、認知機能に問題はなかった。四肢の腱反射は低下し、感覚障害を認め入院となった。入院後、上下肢筋力が低下し、座位や食事動作が困難となり、水を飲むときにむせるようになった。入院5日目の時点で行わないのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
Guillain-Barré症候群の急性期において、神経の炎症が進行している段階での筋力増強訓練は、神経線維への過度な負荷となり、かえって症状を悪化させる『overwork weakness』を引き起こす可能性があります。この時期は、関節拘縮予防のための関節可動域訓練や、呼吸・嚥下機能の維持、安楽なポジショニングなどが優先され、筋力増強訓練は病態が安定し回復期に入ってから慎重に開始すべきです。
選択肢ごとの解説
- 1. 誤り。むせが見られるため、誤嚥性肺炎の予防や経口摂取維持のために嚥下訓練は重要な介入です。正しくは:嚥下機能の評価に基づき、適切な嚥下訓練を実施します。選びやすい理由:嚥下訓練は専門性が高いため、初期段階では様子見と考えるかもしれませんが、症状があるため優先度は高いです。混同注意:患者の活動能力が低下しているため、リハビリ全般を後回しにしても良いと考えるかもしれません。
- 2. 誤り。Guillain-Barré症候群は呼吸筋麻痺を合併するリスクが高く、筋力低下が進行しているため、呼吸機能の維持・改善のための呼吸訓練は必須です。正しくは:肺活量維持や痰の喀出を促すために、深呼吸訓練や排痰法などを行います。選びやすい理由:呼吸訓練は緊急性が低いと誤解するかもしれませんが、進行性の神経疾患では生命維持に直結します。混同注意:呼吸機能がまだ保たれているように見えても、今後の悪化を予測して介入すべきという判断が難しいかもしれません。
- 3. 正解。Guillain-Barré症候群の急性期では、炎症が進行しており神経の損傷が悪化している段階です。この時期に筋力増強訓練を行うと、神経への過度な負担がかかり、症状を悪化させる(overwork weakness)可能性があります。急性期には関節可動域訓練などで筋の萎縮や拘縮を予防しつつ、回復期まで筋力増強訓練は控えるのが一般的です。正しくは:急性期は筋力増強訓練を避け、炎症が落ち着いて回復期に入ってから段階的に行います。選びやすい理由:筋力低下があるため、筋力をつけたいと考えるのは自然ですが、病態を理解していないと誤った選択をしてしまいます。混同注意:一般的な脱力に対するリハビリ(例:廃用症候群)と、進行性神経疾患の急性期のリハビリの違いを混同しやすいです。
- 4. 誤り。筋力低下により臥床や安静が続くため、関節拘縮や筋短縮の予防は重要です。他動運動を中心に関節可動域訓練は積極的に行うべきです。正しくは:他動的な関節可動域訓練を継続し、拘縮を予防します。選びやすい理由:患者の体力消耗を懸念して、運動全般を控えるべきと考えるかもしれませんが、拘縮予防は重要です。混同注意:筋力増強訓練と混同し、関節運動も病態を悪化させると誤解することがあります。
- 5. 誤り。座位が困難になっているため、適切なポジショニングにより身体の安定性を保ち、褥瘡予防、呼吸機能の維持、活動への準備、心理的な安定を図ることは非常に重要です。正しくは:適切なクッションや装具を用いて、安楽で機能的な座位姿勢を保持します。選びやすい理由:動かせない患者に対して、体位変換やポジショニングは負担が大きいと考えるかもしれませんが、むしろ必要不可欠です。混同注意:活動そのものが困難な患者に対して、どのような介入も控えるべきと考えるかもしれませんが、それは誤りです。
国試ポイント
Guillain-Barré症候群の急性期におけるリハビリテーション禁忌事項、特に『過用による筋力低下(overwork weakness)』の知識と、病期に応じた適切な介入の選択が問われています。
混同注意
一般的な筋力低下や廃用症候群に対するアプローチと、急性期にある進行性の神経筋疾患に対するアプローチの違い。回復期に行うべき訓練と急性期に行うべき訓練の区別。
次に同じ論点が出たら
今後、Guillain-Barré症候群の回復期におけるリハビリテーションの目標や具体的な介入内容、あるいは他の神経疾患(例:多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症)の病期に応じたリハビリテーションの注意点が問われる可能性があります。
関連知識
Guillain-Barré症候群の病態生理(脱髄)、臨床経過(急性進行期、停滞期、回復期)、呼吸筋麻痺のリスク、自律神経障害。overwork weaknessの概念。急性期の嚥下障害・呼吸障害に対するリハビリテーション介入。