18歳の男子。幼少時から一人遊びが多かった。運動や言語の発達に目立った問題はないが、視線が合わないことが多い。急な予定変更や大きな音でパニックになることがあった。中学校や高校では場の空気が読めないことでいじめられた経験があり、現在は自室に引きこもり、ほとんどの時間をインターネットに接続したパソコンでアニメやゲームなどに興じている。心配した親が相談機関を訪れ、作業療法士が対応した。この男子の特徴としてみられやすいのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第56回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
提示された事例は、幼少期からの「一人遊びが多い」「視線が合わない」「急な予定変更や大きな音でパニック」「場の空気が読めないことでいじめられた」「自室に引きこもり、ほとんどの時間をインターネット接続したパソコンでアニメやゲームなどに興じている」といった特徴から、自閉スペクトラム症が強く示唆されます。自閉スペクトラム症の中核的な診断基準の一つに「限定された反復的な行動、興味、活動のパターン」があり、これは「特定の物事への強いこだわり」として現れることが非常に多いです。インターネットでのアニメやゲームへの没頭は、まさにその「こだわり」の具体例として解釈できます。
選択肢ごとの解説
- 1. 手先の器用さは自閉スペクトラム症の中核的な特徴とは直接関連しません。個人差が大きく、器用な人もいればそうでない人もいます。正しくは:手先の器用さは、発達障害の診断基準には含まれません。選びやすい理由:一般的なイメージとして、特定の分野に特化した才能を持つ人がいるという情報から、器用さも関連があるのではと誤解する可能性があります。混同注意:サヴァン症候群など、特定の才能と自閉スペクトラム症を混同することがあります。
- 2. 正解。自閉スペクトラム症の中核的な特徴の一つに、限定された反復的な行動、興味、活動のパターンが挙げられます。これは、特定の物事への強いこだわりや反復行動として現れることが多いです。事例の「アニメやゲームなどに興じている」という行動も、こだわりの現れと解釈できます。選びやすい理由:本文の記載と一致する最も適切な選択肢です。
- 3. 「特定の領域の学習が苦手」は、限局性学習症(学習障害)の特徴であり、自閉スペクトラム症の中核症状ではありません。自閉スペクトラム症では、学習能力にばらつきがあることはありますが、全体的に学習が苦手というわけではありません。事例では「運動や言語の発達に目立った問題はない」とされており、特定の学習困難を示す記述はありません。正しくは:学習障害は自閉スペクトラム症と併存することもありますが、自閉スペクトラム症の中核的な特徴ではありません。選びやすい理由:発達障害全般で学習に困難があるという漠然とした知識から、選択してしまいがちです。混同注意:限局性学習症(学習障害)と自閉スペクトラム症を混同している可能性があります。
- 4. これは選択性緘黙(場面緘黙症)の特徴であり、自閉スペクトラム症の中核症状ではありません。事例では「言語の発達に目立った問題はない」と明確に記載されています。正しくは:言語発達に問題がなく、特定の状況で話せないのは選択性緘黙の特徴です。選びやすい理由:コミュニケーションの困難さを連想させるため、自閉スペクトラム症と結びつけてしまいやすいです。混同注意:選択性緘黙(場面緘黙症)と自閉スペクトラム症を混同している可能性があります。自閉スペクトラム症ではコミュニケーションの質的な困難がありますが、発語そのものの困難とは異なります。
- 5. 自閉スペクトラム症では、非言語的コミュニケーションの困難さが見られます。これには、身振り手振りの使用が少ない、または独特である、適切でないといった特徴が含まれることがあります。身振りを多用することは、必ずしも自閉スペクトラム症の典型的な特徴ではありません。むしろ、言語的コミュニケーションの代替として身振りを使用することはあっても、その質や量に特徴が見られます。正しくは:自閉スペクトラム症では、非言語的コミュニケーション(身振りを含む)の質的な問題が見られます。選びやすい理由:コミュニケーションの困難という共通点から、選択してしまうかもしれません。混同注意:言語発達遅滞や他のコミュニケーション障害と混同している可能性があります。
国試ポイント
この問題は、自閉スペクトラム症(ASD)の主な特徴、特に診断基準である「限定された反復的な行動、興味、活動のパターン」について理解しているかを問うものです。他の発達障害(学習障害や選択性緘黙など)の特徴と混同しないように注意が必要です。事例から複数の特徴を読み取り、最も中心的な特徴を選択する能力が求められます。
混同注意
自閉スペクトラム症の診断基準は、「対人関係の質的な問題」と「限定された反復的な行動、興味、活動のパターン」の2つの領域に大別されます。この問題では特に後者の理解が重要です。限局性学習症(学習障害)、選択性緘黙、注意欠如・多動症(ADHD)など、他の発達障害と症状を混同しやすいです。
次に同じ論点が出たら
今後、同じ論点が出題された場合、自閉スペクトラム症の事例問題では、コミュニケーションの問題と「こだわり」の両方の観点から選択肢を吟味することが重要です。また、他の発達障害(ADHD、学習障害など)の症状が選択肢に含まれていないか、正確に区別できるかがポイントになります。
関連知識
自閉スペクトラム症(ASD)の診断基準(DSM-5またはICD-11)、その中核症状(社会的コミュニケーションおよび相互作用における持続的な欠陥、限定された反復的な行動、興味、活動のパターン)、感覚過敏・鈍麻、併存症(ADHD、不安症、うつ病など)、作業療法におけるアプローチ(感覚統合療法、構造化、ソーシャルスキルトレーニングなど)