20歳の女性。高校卒業後、コンビニエンスストアの仕事についた。2年が経過した頃、人手不足もあり業務に追われる状態が続いた。次第に集中困難、頭が回らない感覚、不眠、動悸や呼吸困難感が現れ始め、休職するに至った。約1か月の自宅療養で呼吸困難感は軽減したが、頭痛、めまいによる歩行のふらつき、不眠が出現し、たえず漠然とした不安に襲われ外に出られなくなった。その様子を心配した家族が本人を連れて精神科を受診し、外来作業療法が導入された。導入時の作業療法で最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第56回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
本症例は、過労やストレスにより心身ともに疲弊し、様々な身体症状と精神症状を呈しています。特に「たえず漠然とした不安に襲われ外に出られなくなった」という記述から、非常に高いストレスレベルにあることが伺えます。導入期の作業療法では、まず患者の心身を安定させ、リラックスを促し、不安を軽減することが最優先されます。全身のストレッチングは、筋緊張の緩和、血行促進、自律神経の調整作用により、心身のリラクゼーション効果を高め、症状の緩和に貢献します。これにより、患者は治療に対する安心感や信頼感を持ちやすくなり、その後の作業療法プログラムへの参加意欲を高める土台となります。他の選択肢は、現在の患者の状態に対して負荷が高すぎたり、時期尚早であったりするため、導入期には不適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。本症例は、心身の過労により様々な身体症状(頭痛、めまい、不眠、動悸、呼吸困難感など)と精神症状(不安、外出困難など)を呈しており、心身ともに緊張状態にあると考えられます。導入期の作業療法では、まず心身のリラックスを促し、症状の緩和を図ることが重要です。全身のストレッチングは、筋の緊張を緩和し、リラクゼーション効果を高め、心身の安定に寄与するため、導入として非常に適切です。正しくは:適切です。選びやすい理由:一見すると症状に直接的な治療ではないように思えるかもしれませんが、心身の緊張を解くことは初期介入として非常に重要です。混同注意:具体的な精神症状や社会生活上の問題への直接介入と混同しがちですが、その前段階として心身の安定が不可欠です。
- 2. 本症例は、めまいによる歩行のふらつきがあり、身体的に不安定な状態です。また、心身の疲弊が著しく、不安も強いことから、高負荷の運動は心身に過度な負担をかけ、症状を悪化させるリスクがあります。導入期には心身の安定を優先すべきであり、高負荷訓練は不適切です。正しくは:心身の負担が少ない、低負荷またはリラクゼーションを目的とした活動から始めるべきです。選びやすい理由:歩行のふらつきがあるため、歩行訓練が必要だと考えてしまうかもしれません。混同注意:身体機能の改善を目的とした訓練と混同しやすいですが、患者の現在の状態を考慮した上で介入強度を判断する必要があります。
- 3. 本症例は休職中で、外出も困難なほど漠然とした不安に襲われている状態です。まだ心身が十分に回復しておらず、日常生活への復帰が最優先されるべき段階です。職業訓練は時期尚早であり、かえって負担となり症状を悪化させる可能性があります。まずは心身の安定と日常生活の再構築が求められます。正しくは:心身が安定し、日常生活が自立して送れるようになった後、職場復帰を見据えた段階で検討されるべきです。選びやすい理由:高校卒業後すぐに仕事についていることから、職業能力の維持や復帰を考えてしまうかもしれません。混同注意:就労支援や職業リハビリテーションの介入時期と混同しやすいですが、現在の患者の状態(急性期に近い)を考慮することが重要です。
- 4. 集中困難や頭が回らない感覚はありますが、これは心身の疲弊や不安からくる一時的な認知機能の低下と考えられます。認知リハビリテーションは高次脳機能障害など、より明確な認知機能障害に対して行われることが多く、導入期においては心身のリラックスと全体的な症状の安定が優先されます。現在の状態で認知機能に特化した訓練を行うのは、負担が大きく適切ではありません。正しくは:心身の安定と不安の軽減を図った上で、必要に応じて段階的に検討されるべきです。特に、疲労やストレスによる認知機能の一時的な低下の場合は、その原因を取り除くことが先決です。選びやすい理由:集中困難や思考力の低下といった症状から、認知機能への介入が必要だと考えてしまうかもしれません。混同注意:うつ病やストレス関連障害による集中力低下と、高次脳機能障害などによる認知機能障害へのアプローチと混同しやすいです。
- 5. 本症例は外出困難なほどの漠然とした不安を抱えており、対人交流や社会参加に対して強い抵抗がある状態と考えられます。接客場面のロールプレイングは、対人スキル向上を目指すものですが、現在の不安が強い時期に行うと、過度なストレスとなり、症状を悪化させる可能性があります。まずは不安の軽減と心身の安定、自信の回復が優先されるべきです。正しくは:心身が安定し、基本的な社会参加が可能になった後、具体的な対人交流の困難さに対して段階的に導入されるべきです。選びやすい理由:コンビニでの仕事だったため、接客スキルが関係していると考えてしまうかもしれません。混同注意:対人関係の問題や社会適応の困難さへの介入と混同しやすいですが、現在の患者の不安レベルを考慮し、段階的な介入が必要です。
国試ポイント
国家試験では、疾患の種類だけでなく、患者の現在の病状(急性期、回復期、慢性期など)や生活背景を深く理解し、その段階に最も適した介入を選択できるかが問われます。特に精神科領域では、患者の心理状態やストレスレベルを考慮した、段階的かつ個別性の高いアプローチが重要です。導入期においては、安心感の提供や心身のリラックスを促す介入の重要性が高く評価されます。
混同注意
心身症やストレス関連障害の初期介入と、精神疾患の活動期・回復期における具体的な機能訓練や社会参加支援を混同しやすい。特に、身体症状があるため身体的なリハビリと捉えがちだが、背景にある精神的なストレス要因を考慮する必要がある。
次に同じ論点が出たら
この患者が心身の安定を取り戻し、不安が軽減された場合、次にどのような介入が適切か(例:軽度な活動、生活リズムの再構築、外出機会の提供、具体的なストレスコーピングスキルの獲得など)を判断できるか。また、具体的な症状が改善した後に、どのように社会復帰支援に繋げていくか。
関連知識
ストレス関連障害、うつ病、適応障害の病態理解と治療原則。自律神経系の機能とリラクゼーション技法。精神科作業療法における介入の段階付け。精神科リハビリテーションの原則。