70歳の女性。独居。身長155 cm、体重52 kg。自宅で転倒。右大腿骨頸部骨折と診断され、右人工骨頭置換術(後方アプローチ)を受けた。術後、回復期リハビリテーション病院を経て自宅退院の見込みである。右股関節の屈曲角度は100度、伸展0度である。左下肢機能には問題を認めない。屋内外は杖歩行自立。現状の家屋環境を図に示す。退院時に向けた環境調整で最も適切なのはどれか。ただし、手すりの高さはすべて適切である。
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出典:厚生労働省ホームページ(第59回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
右人工骨頭置換術(後方アプローチ)後の患者は、股関節の過度な屈曲(90度以上)や内転、内旋で脱臼するリスクが高いため、浴槽内いすを設置することで浴槽への出入り時の股関節屈曲角度を90度以下に保ち、脱臼を予防できるため最も適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。右人工骨頭置換術(後方アプローチ)を受けた患者は、股関節の過度な屈曲を避ける必要がある。浴槽内いすを設置することで、浴槽への出入り時の股関節屈曲を90度以下に保ち、脱臼を予防できる。浴槽の深さが600mmあり、一般的な浴槽よりも深く、特に股関節屈曲制限のある患者にとって、浴槽内いすは非常に有効な環境調整である。選びやすい理由:特になし。正しい選択肢であるため。
- 2. 屋内階段の手すりはすでに設置されているため、追加で壁側に手すりを設置する必要性は低い。また、股関節の脱臼予防に直接寄与するものではない。患者は杖歩行が自立しており、手すりの高さも適切とされているため、現在の環境で安全に昇降できる可能性が高い。正しくは:屋内階段の手すりはすでに設置されており、現状で問題ないと判断されるため、追加の手すり設置の優先順位は低い。選びやすい理由:手すりは転倒予防に有効であるため、一見すると正しい選択肢に見える。しかし、問題文で「手すりの高さは全て適切である」とされており、かつ患者は杖歩行自立しているため、屋内階段の安全性は確保されていると考えられる。混同注意:一般的な転倒予防のための環境調整と、人工股関節置換術後の脱臼予防に特化した環境調整の優先順位。
- 3. 補高便座の設置は、便座の高さが380mmと低い場合に、立ち上がりや座り込み時の股関節屈曲を軽減するために有効である。しかし、この患者は身長155cm、体重52kgであり、標準的な体格である。また、便座の高さ380mmは日本の一般的な便座の高さであり、必ずしも補高が必要とは限らない。便座の高さの調整は、個別性に応じて検討されるべきであり、浴槽内いすの設置の方が脱臼予防の優先度が高い。正しくは:便座の高さ380mmが患者の股関節屈曲に問題があるかを詳細に評価し、必要であれば補高便座を検討するが、浴槽内いすの設置がより優先度が高い。選びやすい理由:人工股関節置換術後の股関節屈曲制限のため、便座の高さ調整も重要な環境調整の一つである。しかし、浴槽内いす設置の方が、浴槽への出入りという比較的大きな動作において股関節の危険肢位を避ける効果が高く、優先度が高い。混同注意:日常生活における股関節屈曲制限への対応全般と、個々の動作における危険肢位の回避の優先順位。
- 4. 玄関の上りかまちが200mmと図に示されており、手すりも設置されているため、現在の環境で安全に出入りできると考えられる。また、患者は屋内および屋外での杖歩行は自立しているため、玄関の上りかまちの段差解消は、脱臼予防の観点からも、転倒リスクの観点からも、優先度は低い。正しくは:玄関にはすでに手すりが設置されており、患者は杖歩行自立しているため、現状で問題ないと判断される。選びやすい理由:段差の解消は高齢者の転倒予防に重要であるため、選択肢として魅力的だが、手すりが設置されており、患者が自立していることから、最も適切な環境調整とは言えない。混同注意:一般的な高齢者の住環境整備と、人工股関節置換術後の脱臼予防という特異的なニーズへの対応。
- 5. 屋外階段の手すりの端部は、転倒予防のために壁や柱まで延長することが望ましいが、図では延長されていない。しかし、患者は屋外での杖歩行が自立しており、手すりの高さは適切とされているため、現状で大きな問題とは言えない。また、人工股関節置換術後の脱臼予防に直接寄与するものではなく、優先度は低い。正しくは:屋外階段の手すりの端部を壁や柱まで延長することで、より安全性を高めることはできるが、脱臼予防の観点からは優先度が低い。選びやすい理由:手すりの設置は転倒予防に有効であり、手すりの適切な設置方法(端部の処理)も重要な知識であるため、選択肢として選びやすい。しかし、患者の状態と最も緊急性の高い脱臼予防の観点からは、優先度が低い。混同注意:一般的な転倒予防のための環境調整と、人工股関節置換術後の脱臼予防に特化した環境調整の優先順位。
国試ポイント
人工股関節置換術後の脱臼肢位と環境調整の知識が問われている。
混同注意
脱臼予防のための動作指導(股関節屈曲90度以下、内転・内旋制限)と、それに伴う具体的な環境整備の区別。
次に同じ論点が出たら
人工股関節置換術後の脱臼リスクを考慮し、患者の日常生活動作において股関節の危険肢位を避けるための環境調整の具体的な方法を評価する。
関連知識
人工股関節置換術後の脱臼肢位は、アプローチ方法(前方、後方)によって異なる。後方アプローチでは、股関節の屈曲、内転、内旋を制限する必要がある。前方アプローチでは、股関節の伸展、外転、外旋を制限する。