80歳の男性。糖尿病で治療中。意識混濁と呂律緩慢のため救急車で搬入された。初診時の心電図〔別冊No.2A〕と頭部MRI拡散強調像〔別冊No.2B〕を別に示す。この疾患の再発予防に使用される最も適した薬剤はどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第59回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
別冊No.2Aの心電図でP波が不規則かつ消失しており、RR間隔も不整であることから心房細動の所見が確認できます。また、別冊No.2Bの頭部MRI拡散強調像では、左前頭葉から側頭葉にかけて皮質梗塞を示す高信号域が認められ、これは心原性脳塞栓症を示唆しています。心房細動は心臓内で血栓を形成しやすく、その血栓が脳に飛んで脳梗塞(脳塞栓症)を引き起こす主要な原因となります。そのため、再発予防には血栓形成を抑制する抗凝固薬が最も適しています。
選択肢ごとの解説
- 1. 硝酸薬は冠動脈拡張作用を持ち、狭心症治療に用いられますが、脳梗塞の再発予防には効果がありません。正しくは:脳梗塞の再発予防には、病態に応じて抗凝固薬や抗血小板薬を使用します。選びやすい理由:循環器系の薬剤であるため、なんとなく関連があるように感じられるかもしれませんが、適応疾患が異なります。混同注意:冠動脈疾患の治療薬
- 2. β遮断薬は心房細動のレートコントロールや心不全治療、高血圧治療に用いられますが、心房細動による脳塞栓症の血栓形成を直接抑制する効果はなく、再発予防薬としては不適切です。正しくは:脳梗塞の再発予防には、病態に応じて抗凝固薬や抗血小板薬を使用します。選びやすい理由:心房細動の治療薬の一つであるため、脳梗塞再発予防にも関連すると誤解される可能性があります。混同注意:心房細動のレートコントロール薬
- 3. 正解。別冊No.2Aの心電図で心房細動が認められ、別冊No.2Bの頭部MRI拡散強調像で皮質梗塞を認めることから、心原性脳塞栓症と診断できます。心房細動は左心房内に血栓を形成しやすく、その血栓が脳に塞栓として飛散することで脳梗塞を引き起こします。抗凝固薬は凝固カスケードを阻害し血栓形成を抑制するため、心房細動による脳塞栓症の再発予防に最も適しています。選びやすい理由:心房細動に合併する脳塞栓症の病態生理を理解していれば、正しい選択です。混同注意:抗血小板薬(アテローム血栓性脳梗塞の再発予防薬)
- 4. ステロイド薬は炎症を抑制する作用がありますが、脳梗塞の再発予防には用いられません。脳浮腫の治療などで一時的に使用されることはありますが、今回の目的とは異なります。正しくは:脳梗塞の再発予防には、病態に応じて抗凝固薬や抗血小板薬を使用します。選びやすい理由:急性期の脳浮腫など、脳の疾患に関連して使用されるイメージから選択しやすいかもしれません。混同注意:脳浮腫治療薬
- 5. 抗てんかん薬はてんかん発作の治療に用いられます。意識混濁や呂律緩慢は脳梗塞の症状であり、てんかん発作が主因ではありません。脳梗塞の再発予防には効果がありません。正しくは:脳梗塞の再発予防には、病態に応じて抗凝固薬や抗血小板薬を使用します。選びやすい理由:意識混濁や脳の疾患に関連する薬剤であるため、誤って選択される可能性があります。混同注意:てんかん治療薬
国試ポイント
心電図の判読による心房細動の診断と、それに伴う心原性脳塞栓症の再発予防に用いる薬剤の選択が重要です。心房細動の心電図所見、MRI拡散強調像における脳梗塞の所見を正しく読み取ることが求められます。
混同注意
抗凝固薬と抗血小板薬の違い。抗凝固薬は主に静脈系の血栓症や心原性脳塞栓症など凝固系の血栓形成を予防し、抗血小板薬は主に動脈硬化を基盤とする血栓症(アテローム血栓性脳梗塞など)を予防します。本症例では心房細動による心原性脳塞栓症であるため、抗凝固薬が選択されます。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た際には、まず心電図で不整脈の有無、特にP波の有無とRR間隔の規則性を確認し、心房細動の診断を確定すること。次に、画像所見で脳梗塞の責任病巣を確認し、病態(心原性かアテローム血栓性かなど)を判断すること。それらに基づいて適切な再発予防薬を選択します。
関連知識
心房細動の診断基準(P波消失、RR間隔不整、不規則なf波)、CHA2DS2-VAScスコアによる脳梗塞リスク評価と抗凝固療法の適応、DOAC(直接経口抗凝固薬)の種類と作用機序、ワルファリンの作用機序とPT-INR管理。